多角的な視野を生かし
四国の治水を支えたい

水資源機構 関西・吉野川支社 吉野川本部 本部長 津久井 正明さん

Interview

2024.09.05

生粋の東京・下町育ち。大学では土木を専攻し、河川工学の研究室で「降った雨がどのように河川に流れ込むのか」などを研究していた。瀬戸大橋の建設が進む時代の空気も受け、「河川にかかわるスケールの大きい公共事業に従事したい」と、1992年に水資源開発公団(当時)に就職。初めて都心部を離れ、埼玉県・滝沢ダム建設所からキャリアをスタートした。

さまざまな視座でダム事業にかかわる

水資源機構のダム関連事業は、建設前の調査・設計と完成後の維持管理の大きく二つに分かれる。津久井さんの最初の仕事は、滝沢ダム建設に先立つ調査・設計業務だった。河川工学を学んでいてもダムはわからないことばかりで、経験豊富な先輩たちに教えを乞うかたわら、自分なりに猛勉強もした。「ネットもなく、調べものも一苦労の時代です。関連書を探し出して、挿絵がなければ自分なりにイメージして…と苦労した分、身に付くことも多かったのでは」

その後、他ダムでも同様の調査・設計業務を担当したのち、ダム技術センターに2年間出向。それまで発注者側としてかかわっていたダム設計や施工管理業務を、一転して「受注者側」の立場で見ることに。いいものづくりを追求する側、その実現を求められる側、両方のニーズや組織の仕組みを知ったのは、今の仕事の仕方にも影響を与える大きな転機になった。

「経験とともに視野が広がって、仕事が一番楽しい時」だったという栃木県・思川開発建設所での調査・設計業務を経て、最初の赴任地として調査・設計を担当した滝沢ダムに再び戻ったのは37歳の時。ダムは既に完成しており、「何もなかった頃の風景とは大違い。自分が設計にかかわったダムに初めて水を貯める場に立ち会えるのは、めったにないチャンスでした」。ところがさらに後年、所長として赴任した三重県・川上ダムでも初稼働に立ち会う異例のチャンスを得る。「ダム建設数が落ち着いていく中で、まさか2回も初めてダムに水を貯める機会に恵まれるとは。本当に光栄なことだと思っています」と感慨深く振り返る。

四国の課題は「ダム再生」

初めて管理業務を担当したのは、滝沢ダムに続く群馬県最北端の矢木沢ダム・奈良俣ダム。そこから本社ダム事業部、経営企画部、関西・淀川本部と、より広い視野に立って全国のダム建設を統括する業務が一気に増え始める。

今春に四国・吉野川本部の本部長に就任して、約4カ月。南海トラフを視野に入れて昨年度から継続している旧吉野川河口堰の耐震補強事業のほかに、津久井さんが注目するテーマは「ダム再生事業」だ。「気候変動で雨の降り方も大きく変わる中、洪水時に対応できる改築や改良が必要です。建設から半世紀が経つ早明浦ダムは既に工事を進めていますが、他のダムも気候変動や老朽化などへの対応が必要。これまでの経験を踏まえて、もう少し細かい課題を見極めるつもりです」

幼い頃は引っ込み思案だったというが、小学校でスポーツを始めてからは積極的になり、今も体力づくりのランニングは欠かさない。「中学から大学まで打ち込んだバスケットボールのハードな練習生活は、社会人になってからも自分の支え。苦しい時も負けずに『人の役に立つ仕事』への思いを追求していきたい」と語った。
「吉野川フェスティバル」で吉野川管内のスタッフとバーベキュー(7月26日)

「吉野川フェスティバル」で吉野川管内のスタッフとバーベキュー(7月26日)

戸塚 愛野

津久井 正明 | つくい まさあき

略歴
1967年 東京都生まれ
1992年 東京電機大学大学院 卒
    水資源開発公団(当時)入社
2018年 関西・吉野川支社 淀川本部 事業課 課長
2020年 川上ダム建設所 所長
2023年 本社 ダム事業部 ダム管理課 課長
2024年 関西・吉野川支社吉野川本部 本部長

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