令和の四国から
新しい時代が始まる予感

西日本高速道路 執行役員・四国支社長 後藤 由成さん

Interview

2024.10.17

モータリゼーション華やかな70年代、日本道路公団の仕事ぶりを聞いて育ち、1989年に自身もその一員に。関西と四国を行き来しながらキャリアを築いて、2022年に四国支社副支社長、今年6月からは支社長として香川へ単身赴任中。「ヒューマンストーリーが好き」という本の虫で、地域の歴史文化をひもとくかたわら、そこに暮らす人々との交流を大切にする日々だ。

景観美と走りやすさを 兼ね備えた4車線化

印象に残っているプロジェクトは、7年がかりで実現した高松自動車道の4車線化。1期線の工事で所長を務めた有水恭一氏は後藤さんの敬愛する大先輩で、「20代の終わりに直属の上司・部下として学ぶ機会があり、粋な人柄に感銘を受けました。それ以来ずっと背中を追いかけてきた」という言葉を象徴するように、2012年からの2期線工事の所長は後藤さんが務めた。

大規模なインフラ建設は環境への影響を指摘されがちだが、「高松道は県全体で盛り上げようとする機運があり、地域のご理解を得られたのは本当に幸運でした。事務所開設の地鎮祭では、神主さんが『4車線化工事の無事も祈っておきました』と。香川県民らしい、さりげない心遣いが印象的」と振り返る。

走りやすさとメンテナンスの効率化の両立を目指し、社員一丸で取り組んだ4車線化によって、交通の流れがスムーズになるとともに、徳島道・高松道が互いにダブルルートとして補完し合う路線が確立した。ドライバーに圧迫感を与えにくいオーバーブリッジや、開放感のある上路橋を積極的に採用するなど景観美を重視した先人たちの精神にならい、高松の市街地に建つ高速道の橋脚は彫刻家・流政之の作品にヒントを得た曲線美も特長。「大都市圏の市街地にある橋脚に比べて、すっきりと威圧感のないデザインになっているはずです」

時代に応じた変化が必要

自宅を構える兵庫と赴任地の香川を結ぶのも、やはり高速道路だ。自身もよく利用するルートであり、SAで楽しそうに過ごす人々の笑顔を見ると「自分の仕事の責任と素晴らしさを実感する」と述懐。とはいえ業務の上で利用者と直に接することは少なく、支社長として大切にしているのは「社員にとって人生最高の職場であること」だという。「従業員満足の延長に、顧客満足もある。私の仕事は生き生きと働ける環境をつくること、もう一つは災害時などの有事を見すえて、日頃から外部と顔の見える関係をしっかり築くことだと思っています」

今年4月、全国拡大に先立って6カ所で行う社会実験の一つとして「香川県通勤パス」がスタートした。通勤などで日常的に高速道路を使う層を対象とし、25年3月までの期間中、指定区間内を1日3回まで割引料金で利用できるサービスだ。県土木部や高松・坂出の商工会議所の協力を得て幅広い広報の展開を実現。さらに業界の働き方改革や人口減少が進む中で高速道路の安心安全を守るには、メンテナンス効率の向上が課題だと指摘し、DX導入など時代に即した省力化に取り組みたい意向だ。

「日本道路公団初代総裁の岸道三は『昭和の文化を高速道路に』を唱えて名神高速をつくりました。私たちも地域の社会課題にしっかり向き合って、未来の人たちに『令和の四国から新しい時代が始まった』と言われるような、良質な構造物を残したいと思っています」と、思いは熱い。
地域の人々との交流も広がる(写真右:金山けいの里・前田宗一さん)

地域の人々との交流も広がる(写真右:金山けいの里・前田宗一さん)

戸塚愛野

後藤 由成 | ごとう よしなり

略歴
1967年兵庫県生まれ
1989年 関西大学工学部卒
   日本道路公団入社
2012年 高松工事事務所長
2015年 阪奈高速事務所長
2017年 本社 経営企画本部 グループ経営戦略課長
2019年 同 保全サービス事業部 危機管理防災担当部長
2020年 四国支社 保全サービス事業部長
2021年 NEXCO東日本 料金システム開発室次長
2022年 四国支社 副支社長

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ