繋がるヒト・コト・モノ… 駅から始まるまちづくり

JR四国 社長 四之宮 和幸 さん

Interview

2024.10.17

今年3月にオープンした「TAKAMATSU ORNE(高松オルネ)」を背に=高松市浜ノ町

今年3月にオープンした「TAKAMATSU ORNE(高松オルネ)」を背に=高松市浜ノ町

いつ行っても飽きない場所に

今年3月、JR高松駅直結の商業施設「TAKAMATSU ORNE(高松オルネ)」がオープンした。食品、スイーツ、レストランや生活雑貨など約60店舗が集まり、イベントスペースや展示スペースもある。オープン1カ月で100万人以上が来館し、売上も当初の目標を大幅に上回る好発進。「ヒト・コト・モノを繋ぎ、地域の魅力を再発見できる空間にしたい」と、6月に社長に就任した四之宮和幸さん(59)は力を込める。
子どもが楽しめるフォトスポット「高松アンパンマン列車ひろば」 =高松オルネ4F

子どもが楽しめるフォトスポット「高松アンパンマン列車ひろば」
=高松オルネ4F

高松オルネのコンセプトの一つが「四国の人もまだ知らない四国」。食のセレクトショップとフードコートからなる「シコク メグル キッチン&マルシェ」には、愛媛県愛南町産アコヤ貝のアヒージョ、今治市のラム酒入りカステラ「ラムリン」、徳島県三好市池田町のレモンケーキなどなど挙げるときりがないが……いわゆる“ニッチな”商品や、ここでしか手に入らない商品がずらりと並ぶ。

「スタッフ自らが四国中に出かけて行って、今までに見たことのないような商品や、知られていないような商品を集めてきました」と四之宮さんはスタッフの努力を笑顔で讃える。「商品ラインナップが常に変化し、いつ行っても飽きることのない“四国を巡る場所”にしていきたいと思っています」

アリーナ、大学…変わるJR高松駅周辺

国鉄分割民営化の2年後に入社した“JR四国初”の生え抜き社長。だが、「元々『鉄道が好き』というわけではなかったんです」と苦笑する。興味があったのは「まちづくり」。「JRができ、瀬戸大橋ができ、本州が近くなる。『これから四国がどんどん進化していくんじゃないか』という期待感が大きかったです」

高架工事や瀬戸大橋の検査など土木部門を歩んだのち、JR徳島駅直結のホテルとショッピングセンターの運営、JR伊予西条駅に隣接する「四国鉄道文化館」の建設など、駅を中心としたまちづくりに携わってきた。

そして今、JR高松駅周辺の「まち」が大きく変わろうとしている。

J R四国グループの2つのホテルに、新しくできた高松オルネ。来年2月には県立アリーナ、春には徳島文理大学の高松駅キャンパス、3年後には外資系高級ホテルもやってくる。「これからのまちづくりは1社だけではやっていけない。周りの企業や地域と一緒になって、ハードとソフトをセットにエリア全体で取り組む『タウンマネジメント』の考え方が必要です」

高松駅周辺について四之宮さんは改めて、「とても魅力的なまち」だと話す。「瀬戸内海がこんなに近くて、一度目を閉じてからもう一度開いてみると『海外か』と見間違うほど。海と陸の玄関口で、住んでいる私たちが思っている以上にポテンシャルがあります」
先月開業した新JR松山駅

先月開業した新JR松山駅

そして、変わろうとしているのは高松駅だけではない。高架化された新JR松山駅が先月29日に開業。高架下には「JR松山駅だんだん通り」という愛称の商業エリアもできた。またJR坂出駅周辺でも、図書館を核とした複合施設の建設やバスターミナルの移設など、再開発計画が動き出している。

「地方都市には何が必要なのか、どうやって定住人口や交流人口を増やしていくのか……まちづくりはJR四国にとって、とても重要な使命の一つだと考えています」

「公共交通ネットワークの四国モデル」構築へ

人口減少の流れが止まらない。そのスピードを少しでも緩やかにするために必要なのが「公共交通の充実」だと四之宮さんは口調を強める。「四国を訪れる人たちが四国の隅々まで回れる『公共交通ネットワークの四国モデル』を構築したい。増えているインバウンドにも対応できます」

今、力を入れているのが、鉄道とバスなどが連携して便利な輸送体系をつくる「モーダルミックス」。徳島県内を走る牟岐線の阿南駅以南の主要駅で、JRの切符があれば高速バスにも乗れるサービスを一昨年から始めた。また東かがわ市でも、JRの通学定期があれば路線バスに乗れる学生向けのサービスを行っている。高速バスや路線バスと言えば、これまでは競合関係にあるライバルだったが、「これから大切になってくるのは、競争ではなく“協調”です」。さらにタクシー会社とも連携し、電車の到着時間に合わせて降車駅にタクシーを手配する新たなサービスの実証実験も行っている。

「100-1=99」ではない

JR四国は民営化以降、本業の鉄道事業は赤字が続く。
常に先を見て、グループ一丸となって四国の未来に貢献していく

常に先を見て、グループ一丸となって四国の未来に貢献していく

経営を安定させるため四之宮さんは「鉄道にこだわらず、駅ビルやホテル、M&Aなど、様々な分野にどんどんチャレンジしていきたい」と“非鉄道”にも照準を合わせる。

だが、常に事業の根幹にあるのは、やはり「鉄道」だ。「社長として貫き通したいことは何か」を尋ねると、こう返ってきた。「安全の確保です。これだけは絶対に疎かにしない。私たちにとって『100-1=99』ではない。たった1つでも誤ると0点になってしまうんです」。そして、こう続ける。

「まちを元気にするために何ができるのか、公共交通をどう生かしていくのか。目先ではなく常に先を見て、グループ一丸となって四国の未来に貢献していきたいと思っています」

篠原 正樹

四之宮 和幸 | しのみや かずゆき

1964年 愛媛県西条市出身
1983年 愛媛県立西条高校 卒業
1989年 京都大学大学院工学研究科 修了
     四国旅客鉄道株式会社 入社
     高架工事、橋梁、トンネル検査等の土木部門、
     徳島ターミナルビル株式会社出向、
     財務部長、総合企画本部長などを経て
2024年 代表取締役社長

四国旅客鉄道株式会社

住所
香川県高松市浜ノ町8番33号
代表電話番号
087-825-1626(広報室)
設立
1987年4月1日
社員数
1947人(2024年4月)
事業内容
旅客鉄道事業、旅行業、その他関連事業
資本金
35億円
地図
URL
https://www.jr-shikoku.co.jp/
確認日
2024.10.17

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