JR四国 経営自立は 四国という島とともに

JR四国 代表取締役社長 泉 雅文さん

Interview

2012.09.06

民営化25年を迎えたJR四国は、厳しい経営環境と闘っている。四国全域で高速道路網の整備が進んだため鉄道収入は減少し、財政基盤である経営安定基金の運用利回り益は、低金利のため期待できない。昨年には国の新たな支援措置を受けた。

「四国活性化の礎として、地域とともに生きるしか道はありません。でも、JR他社と比べて所帯が小さいから、社員一人ひとりの存在感は大きい」

2010年、4代目の社長に就任した泉 雅文さん(60)は、新たな輸送体系の構築と高速化で「自立経営の確立」を目指す。

※経営安定基金
JR三島会社(JR四国、JR九州、JR北海道)が発足時に、赤字部分を資産運用収益で埋め合わせる目的で創設された基金。金額は、JR四国2082億円、JR九州3877億円、JR北海道6822億円。

「中期経営計画」 今春スタート

「国鉄を解体する仕事をしながら、敗戦国のような悲哀を味わいました」。1985年、分割民営化の2年前、33歳だった。旧国鉄から運輸省(当時、現・国土交通省)に出向していた。

「国鉄の分割民営化の目的は、鉄道の効率化です。そのために四国に鉄道ネットワークが必要だと判断されて、JR四国が出来ました」

発足当初は150億円あった営業赤字を、効率化を進めて半分まで減らした。しかし17万人だった1日の乗降者数は12万人になった。

ピーク時の91年度と96年度370億円あった運輸収入が、225億円までに減った。人口減少が全国に先駆けて進む四国で、利用者を増やすことには限界がある。

課題は経営安定基金の利回りと、線路に並行して走る高速道路だ。「旧国鉄から経営を引き継いだとき、7.3%の運用利回りを想定して基金を創設しましたが、長引く低金利のため運用益が下がりました。追い打ちをかけたのが、09年から11年までの高速道路利用料の1000円です」

あらゆる取り組みに果敢に挑戦、革新、刷新して、2020年度までにJR四国を再生する「Regeneration(リジェネレーション、革新・刷新・再生の意味)2020」を策定した。

「去年、基金の積み増しで危機を乗り越えましたが、安定的に利益を計上できる自立経営の確立を目指します」

今年4月、第一ステージ「中期経営計画」がスタートした。

基金の積み増し
2011年6月、改正旧国鉄債務処理法により経営安定基金積み増し(無利子貸付方式・20年後に返済)が行われた。

保守の手間減らす設備投資

中期経営計画のポイントは「安全・安定輸送」と「利便性向上」のための設備投資だ。

枕木を木からコンクリートに替えて、25メートルのレールをロングレール(全長200メートル以上に溶接したレール)にする。継ぎ目が少なくなって、高速、安定走行、騒音の低減、乗り心地がよくなる。

通信用のメタルケーブルを光ケーブルにする。「コンクリート枕木も、ロングレールも、光ケーブルも、最初に経費はかかりますが、保守の手間が減ってコスト削減できます」

利用者の「利便性向上」は、新しい特急車両やICカードを導入して実現する。

予讃線150キロ以上で走れたら

「自立経営の確立」を目指して、収益基盤を強化する対策を立てた。「輸送需要に応じた輸送体系の構築」は、効率よく車両を運行することだが、それには都市間輸送の高速化を高めることが欠かせない。

「旅客数が減り続けている中で、新幹線に乗り換えるお客様と特急定期を利用されているお客様だけが増えているのです」

四国の鉄道ルートは岡山で新幹線と接続することを前提に利用されている。

観音寺から高松、宇和島や今治などから松山への長距離通勤通学に、高速道路はあまり使われない。渋滞など予測できないこともある高速道路は目的地までかかる時間が常に不安定になるので、きちんと時刻表通りに動く鉄道が圧倒する。

それでも四国の鉄道は、スピードという一点で高速道路にはかなわない。「鉄道は『大量・高速』が強みですが、予讃線は多度津駅から西は単線です。平均時速80キロ程度のスピードしか出せないから、高速道路を車で走る便利さに負けるのです」

高松駅から松山駅を経て宇和島駅まで、JR四国の幹線である予讃線は平均時速150キロ以上のスピードが出せたら理想的だ。

欠かせぬ地元の熱意と理解

在来線を最高時速160キロで走る路線がある。「成田に乗り入れている京成電鉄と、新幹線の越後湯沢駅で乗り換える、金沢行の北越急行です」。予讃線を高規格路線にすれば最高時速160キロ~200キロでも走れる。問題は財源をどうするかだ。

北海道も東北も北陸も九州も、整備新幹線は、全国新幹線鉄道整備法に基づいて国が決めた計画だ。車両はJR各社の自前だが、鉄道・運輸整備機構が作った新幹線設備を借りて、使用料を払っている。

「新幹線とは言わないけれど、ミニ新幹線やスーパー特急方式、フリーゲージトレインで時速200キロ出せるように、公共事業として設備投資が出来るかが課題なんです」

高速道路より不便な鉄道に、利用者はもう戻らない。地元の熱意と鉄道への理解、支持が育たないと、高速化への挑戦は難しい。

高規格路線
ロングレールでカーブや勾配がゆるく、踏切が無い。高速でも機能するために信号など保安設備装置が強化されている。

鉄道・運輸整備機構
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構。

ミニ新幹線
既存の在来線を改軌した上で新幹線路線と直通運転(新在直通運転という)できるようにした方式。

スーパー特急方式
整備新幹線建設のトータルコスト削減という目的から、路盤やトンネル、高架橋など構造物は 新幹線規格(フル規格)で整備するが、在来線と同じ軌道で建設する。

フリーゲージトレイン
軌間(きかん)可変電車、左右のレールの間隔である軌間に合わせて線路上を走行可能な電車。

地域格差拡大防ぐインフラ

JR四国が運行する全路線を管理する輸送指令室

JR四国が運行する全路線を管理する輸送指令室

JR四国と、JR九州やJR北海道は特殊な会社だ。株式を上場して完全民営化した本州3社(JR東日本、JR東海、JR西日本)とは収益構造が違う。経営安定基金の支援がないと赤字になる。

社員の立場になればJR四国より、寄らば大樹の陰で、JR西日本の四国支社の方が気楽だ。「四国の立場でいえば違います。旧国鉄の四国総局時代も、電化やきめ細かいダイヤ編成を行いましたが、発想の基本は東京でした。JR四国になったから、地元目線で仕事を進めることができるのです」

およそ1万5000キロメートル。保線区員が線路を点検するために1年間に歩く距離だ。「おかげさまで25年。線路の先にある目的地へ。JR四国はお客様にご満足いただけるサービスの提供に努めてまいります」。JR四国の車内の吊り広告だ。

JR四国は、日本国内で広がるいっぽうの地域間格差を防ぐインフラとして、四国という島とともに生きる。

泉 雅文 | いずみ まさふみ

1952年 埼玉県生まれ
1976年 京都大学法学部卒業
    日本国有鉄道入社
1987年 四国旅客鉄道株式会社(JR四国)発足
    総務部人事課長
1990年 財務部会計課長
1992年 旅行業事業部業務課長
1995年 JR西日本に財務部次長として出向
1997年 JR四国に戻り総合企画本部経営企画室長
2000年 財務部長
2002年 取締役財務部長
2004年 常務取締役鉄道事業本部副本部長 兼営業部長
2006年 常務取締役総務部長
2008年 代表取締役専務総務部長
2010年 代表取締役社長
写真
泉 雅文 | いずみ まさふみ

四国旅客鉄道株式会社

所在地
〒760-8580 高松市浜ノ町8-33
TEL:087-825-1626(広報室)
設立
1987年4月1日
資本金
35億円
社員数
2647人(2012年4月)
事業内容
旅客鉄道事業、旅行業、その他関連事業
営業キロ
855.2km
駅数
259駅(臨時駅2駅を含む)
車両数
429両(2012年4月)
確認日
2018.01.04

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