暮らし支える「水」 テクノロジーで守る

フソウメンテック 社長 西堀 直人さん

Interview

2020.04.02

(株)フソウメンテックがメンテナンス業務に  従事している平渕浄水場=多度津町葛原

(株)フソウメンテックがメンテナンス業務に

従事している平渕浄水場=多度津町葛原

IoTで精度も効率もアップ

四国を中心に全国各地で上下水道施設の維持管理や保守点検を行うフソウメンテック。4月1日、「扶桑建設工業」から「フソウメンテック」へと社名を変えた。代々受け継がれてきた会社の看板「社名」を変える。その重責を担ったのが社長の西堀直人さん(54)だ。「正直、OBらから反対する声は多々ありました」。だが、覚悟は揺るがなかった。「過去にとらわれず、生まれ変わらなければならない。これから会社を担っていく人たちのためにも、一歩踏み出しました」

フソウメンテックは元々、上下水道施設の設計・施工を行う親会社「扶桑建設工業(現・フソウ)」の、メンテナンス部門を担当する一部署だった。2015年、親会社が社名を「フソウ」に変え、組織改革したのに伴い、「扶桑建設工業」の社名を引き継ぎ、メンテナンス会社として独立分社。以来、「扶桑建設工業」として事業を続けていた。しかし、「メンテナンスを行う会社なのに『建設工業』……“名”と“実”が伴っていませんでした」。そこで、決意した。

「メンテナンスの総合会社として再出発する」

新社名に盛り込んだのは「メンテナンス」と「テクノロジー」。西堀さんの大きな期待が詰まっている。「これからの時代は、メンテナンスにテクノロジーを融合させなければなりません」

これまで上水道施設では、配水池の水位が下がっていないか、ポンプは正常に作動しているかなど、作業員が365日24時間体制で現場に張り付いたり、出向いたりして運転を管理していた。新社名で生まれ変わった4月以降、IoTを本格的に取り入れる。

施設の様々な機器をインターネットに接続しクラウド上で徹底管理。機器の故障や漏水などのトラブルを、瞬時に正確に見つけ出す。「施設から離れた場所にいても、パソコンやスマートフォンで運転状況を監視できる。作業の効率化にも繋がります」

さらに最先端のテクノロジーがある。安心安全な水を届けるためには配水池の清掃が欠かせない。これまでは一時的に断水し、潜水士が潜ったり、池の水を抜いたりしてやっていたが、新たに水中ロボットを導入。断水の必要もなく、清掃に加え、高感度カメラなどを活用することで配水池内部の状況をより詳しく把握できるようになる。「暮らしを支える『水インフラ』を、テクノロジーを駆使したメンテナンスで守っていきたいと思っています」

新社名は全社員からアイデアを募って決めた。「シンプルで分かりやすくて呼びやすい。とても気に入っています」

難工事の先にあるもの

上下水道施設のメンテナンスの様子

上下水道施設のメンテナンスの様子

モノづくりを志し、多度津工業高校(現・多度津高校)を卒業後、専門学校を経て1989年、フソウメンテックの親会社・現フソウに入った。以来25年余、全国を飛び回り、上下水道施設建設の工事畑を歩んだ。

数々の現場から学んだのが「一歩踏み出すこと」と「仲間のありがたさ」だ。

30代前半で携わった愛媛県の新興住宅地での上水道施設工事。地下数十㍍の井戸を掘っていたが、分厚い岩盤に阻まれ、水脈に全くたどり着けない。「工期もどんどん押し迫り、正直『もう無理だ』と投げ出してしまいそうになっていました」。そこで勇気をくれたのが仲間だった。自社、協力会社関係なく、「力を合わせて、みんなで一緒にこの仕事を仕上げよう」と声をかけあった。仲間に背中を押され、西堀さんも腹をくくった。「赤字になってもいい。もう一歩踏み出そう」。予算オーバーを顧みず、予定していなかった大型の機材を投入。水脈を掘り当てた時の感動は忘れられないと振り返る。「私たちの仕事は一人ではできないし、決して一人ではないんですよね」

難工事を乗り越えた先にはいつも、「水」を待ち望む人たちがいる。「あまり人目に触れる仕事ではありませんが、達成感は計り知れません。『一歩踏み出す勇気を持ち、仲間のことを考えて行動する』。社員たちにもしっかりと伝えていきたいと思っています」

「任せていれば大丈夫」

様々な社会インフラは、高度成長期の「つくる時代」から「メンテナンスの時代」に入ったと言われる。昨年、現フソウメンテックの社長になり、「これまでは『地図に載るような仕事をしたい』と、つくることに邁進してきた。でもこれからは、それを維持管理できる人材を育てるのが私の仕事。社会の流れと私の人生が、まるでストーリーになっているかのようです」と微笑む。

暮らしに欠かせない「水インフラ」に携わる以上、「『フソウメンテックに任せていれば大丈夫』と信頼される会社でなければならない」と西堀さんは繰り返す。グループの理念は「水と共に生きる」。水に関する施設や設備のメンテナンス機能強化が最大の使命だが、「今は様々な分野でメンテナンスの重要度が増している。まずは『水』を軸に足元を固め、将来的には他分野のメンテナンスにも挑戦してみたい」と意欲を見せる。「安全・安心な地域の暮らしづくりに、これからも精一杯貢献していきたいと思っています」
「メンテナンス総合会社として新社名で再出発」  =高松市郷東町のフソウメンテック本社

「メンテナンス総合会社として新社名で再出発」

=高松市郷東町のフソウメンテック本社

篠原 正樹

西堀 直人|にしぼり なおと

略歴
1965年 多度津町生まれ
1979年 多度津工業高校(現多度津高校)土木科 卒業
1989年 愛知工業専門学校測量設計科 卒業
     扶桑建設工業(現フソウ)入社
2016年 管理本部工事管理部 部長
2017年 メンテナンス事業部 部長
2019年 サービス・ソリューション事業本部運営管理部 部長
     扶桑建設工業(現フソウメンテック)代表取締役社長

株式会社フソウメンテック

住所
香川県高松市郷東町792番地105
代表電話番号
087-832-8763
設立
2020年4月1日「扶桑建設工業株式会社」から「フソウメンテック」に社名変更
事業内容
上下水道施設の運転・維持・保守管理
上下水道施設の改修・修繕
上下水道施設の設計・施工 他
資本金
5,000万円(株式会社フソウ100%出資)
地図
URL
http://fusokensetsu.com/
確認日
2020.03.26

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