ガリバー企業に挑む“気概と愚直”

STNet 代表取締役社長 古賀 良隆さん

Interview

2009.01.08

巨額の投資が必要なインフラ事業は、市場の人口密度が決め手だ。将来の有望なコア事業にもなるが、まかり間違えたら禍根を残す。 
「東京や大阪と違って、四国で果たしてお客様を獲得できるだろうか。先行するNTTなどと競争できるだろうか。胃が痛くなりました」
(株)STNet(エスティネット)代表取締役社長 古賀 良隆さんが、親会社の四国電力事業統括部長として手掛けた“ピカラ”は、いま順調に育ってきている。
営業エリアの選択と、CATVとの顧客の共有。この二つが功を奏したのだが・・・「本当の原動力は、親会社に頼らない経営を目指す“気概と愚直さ”だったのかもしれない」。古賀さんはつぶやく。

※(ピカラ)
STNetが敷設・運営する個人向け光通信サービス。

※(CATV)
テレビの有線放送サービス。

ピカラを事業の柱に

1985年通信の自由化で、NTTや日本テレコム、日本高速通信や第2電電の長距離系と、東京電力が出資するTTNet(ティーティーネット)などの地域系通信会社が活動を始めた。
四国電力も(株)四電情報ネットワークサービス(現STNet)を設立して、情報、通信分野の事業を始めた。しかし圧倒的優位な先行企業、NTTなどとの競争で回線単価が安くなる一方だ。そこで2004年、会社の将来を背負う事業としてFTTH“ピカラ”を立ち上げた。
「事業開始後しばらく低調が続きました。『万が一の場合は事業を起案した責任を取ろう』と思っていましたが、冷や汗もかきました。ようやく1年過ぎたころからお客様が増え始めました」
単独ではまだ水面下にあるが、情報事業と法人向け通信事業の好調もあって収支は4期目ぶりに黒字化した。
「大きな設備投資が済みましたし、お客様の評判も良いので、あと2年もすればピカラが事業の大きな柱になると見込んでいます」

※(FTTH)
光ファイバーケーブルによる家庭向けのデータ通信サービス。

CATVと組んで差別化

東京、関西、中国、九州の各電力系会社は、先にFTTHを始めていた。だが人口密度が低い四国の市場は難しい。
「営業エリアを、当初はお客様が集中している4県都の高松、松山、高知、徳島から始めました。そして四国内の多くのCATVと組んで、先行のライバル社と差別化しました」
STNetはインターネットと光電話を、CATVはテレビ映像を顧客に提供する。CATVは光ケーブルの設備投資をしなくて済む。他の電力系会社に先駆けたCATVとの協業だ。

愚直さと自主独立の気概

STNetの仕事は、顧客が成果を安定して生み出せるインフラの提供だ。
「信用より信頼を得ることです。技術力はもちろんですが、お客様に誠実に向き合う熱意が決め手になります」
ブランド力と規模でかなわないNTTなどと競争するには、愚直さしかない。
STNetは、四国電力のシステム開発で培ったERPのノウハウやスキームを活用して、首都圏でも事業を展開している。
2002年、社名の四国情報通信ネットワークを略称のSTNetに変えた。
「新しい分野とエリアを開拓、拡大して、親会社に頼らない会社にするという強い意志、自主独立の気概のあらわれです。当時四電にいた僕は反対でしたが、東京でIBMや大手のソフト会社と一緒に仕事をして、新しい技術やノウハウを学べますから社名変更は良かったと思います」

※(ERP)
企業資源計画。経営資源を、部門を越えて企業全体で最適化する手法・概念。

次世代ネットワークへの対応

IT分野の進化は速い。次世代ネットワークは、データセンターなどを中心に、コンピューターやサーバーも一体で運用する姿へと進化していく。STNetには情報事業も通信事業もデータセンターもあるから、こうしたサービスは得意だ。
「今年はプラットホーム事業本部を立ち上げます。情報と通信とデータセンターの3部門を横断して、効率よく機能させるための本部制です」
じっくりと5年かけて、顧客のハイレベルな要望のすべてに、サービスを提供できる事業にする。
「重要なのは、お客さんの需要に対応できるアプリケーションやコンテンツの開発です。一つの汎用システムを作るのに、時間もコストもかかります」
大手のシステム業者と共同で取り組めば十分やれると古賀さんは見込んでいる。

※(データセンター)
顧客のサーバーを預かり、インターネットへの接続回線や、保守・運用サービスなどを提供する施設。

中期計画をプロパー社員の将来のために

今年は創立25周年、ピカラをはじめて5年目だ。2月に中期計画を発表する。
情報事業と通信事業を、安定的に利益をだせる構造へ変えていく。ピカラを2年後にエース格に育てる。ブランド力を高め事業基盤を盤石にして、通信情報業界の新しい動きに対応する…中期計画の骨子だ。
「ハードの整備と若い社員の教育に力を入れます。新技術を開発している企業に国内留学させてもいいし、大事なプロジェクトマネジャーの育成のために、よその会社でOJTも重要です。親会社からきた僕が社長としてやることは、若いプロパー社員に力をつけて、将来会社のトップになれるようにすることです」
中期計画は、社員を鼓舞するための古賀さんの熱いメッセージだ。それは先行するガリバー企業への“気概と愚直”の挑戦状でもある。

※(プロジェクトマネジャー)
プロジェクト全体の指揮管理を行う責任者。新規プロジェクトの計画立案、資材・要員などの調達、進行方法の確立や納期、品質、進み具合の管理までを包括的に監督し、プロジェクトを円滑に推進させる役割を果たす。

※(OJT)
上司や先輩が仕事を通じて必要な知識・技術・技能・態度などを指導し、習得させることによって、全体的な業務処理能力や力量を育成する教育法
◆エピソード その1

古賀さんは四国電力では珍しい中途入社だ。京都の会社に勤めていた27歳のとき四電の幹部と知り合い誘われた。前の会社では情報システム開発で実績を上げていたが、面接試験でこれ以上の能力は無いから同じ仕事はやりたくないと言ってしまった。企画部に配属されて営業畑を歩んだが、なぜ採用されたか分からない。「ただ社員が全員優秀である必要はないからかもしれません。レベルや経歴の違う多様な人材は企業の資源ですから・・・」

◆エピソード その2

古賀さんは初対面の相手に緊張感を与えない。フレンドリーで人懐っこい。博多出身で、7人兄弟の末っ子だ。酒席で、取締役の営業部長に「お前は九州出身やけんのう・・・」と言われた。2回目の酒席でまた言われて、数日後に本籍を香川に移した。
同期生より5年半遅れて四電に入って、本気で四国の人間になろうとした古賀さんの愚直さだ。その心意気は九州男児だ。

◆エピソード その3

電柱の建て替えは、地主に承諾を得るのが難しい時間の掛かる仕事だ。新居浜へ営業部長として赴任した直後、地域特有の強風で国道の電柱が数本倒れた。予防のため100本以上の電柱を、4カ月で建て替えた。
「数年かかると思いました。とにかくやれるところまでやろうと地元の電力OBにも協力してもらい、一軒ずつ地主さんを訪問して事情を話したらすべてOKでした。愚直に一生懸命お願いしたのが良かった。ありがたかったですね」

古賀 良隆 | こが よしたか

略歴
1946年11月 福岡市生まれ(本籍地 香川県)
1969年 3月 九州大学理学部卒業
1974年10月 四国電力(株)入社
1997年 6月 新居浜支店長
1999年 6月 (株)四国情報通信ネットワーク
      (現STNet) 取締役 営業部マネジャー
2000年 6月  〃 取締役退任
       四国電力(株)支配人 情報システム部長
2005年 6月 常務取締役 情報通信本部長
2007年 6月  〃 取締役退任
      (株)STNet 代表取締役専務取締役
2008年 6月 (株)STNet 代表取締役社長

株式会社 STNet

所在地
高松市春日町1735番地3
設立
1984年
資本金
100億円(四国電力100%出資)
売上高
売上高293億9500万円(2013年3月期)
従業員数
591人(2013年3月現在)
主な事業
•電気通信事業法に基づく電気通信事業
•情報処理システム、通信システムに関するソフトウェアの設計、開発、保守運用、販売
•情報処理サービスおよびデータセンターサービス
URL
http://www.stnet.co.jp/
確認日
2018.01.04

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