「多角化」と「同期のチームワーク」で事業再生

穴吹エンタープライズ 代表取締役社長 小島 英夫さん

Interview

2009.02.05

ホテル事業を中心に、スポーツ健康増進事業や指定管理者受託事業など、多様な事業を展開する穴吹エンタープライズ(株)は、ホスピタリティ事業の再生が得意だ。
「ホテルと公共施設の基本は同じです。お客様に喜んでいただくこと、それが基本です」。事業の再生には、資源の集中と省力が欠かせない。そして要は人材だ。
「同期で会社に入った人たちが、会社と共に育って事業を支えています」。代表取締役社長 小島英夫さんは、二十数年前を振り返る。

※(指定管理者)
地方公共団体に代わって、公共施設の管理運営業務を行う企業、NPO、ボランティアグループなどをいう。2003年6月の地方自治法の改正によりできた新しい制度。

※(ホスピタリティ事業)
心遣いや思いやりを重視する事業。ホテル・観光・医療・厚生など多種多様な分野を含む。

会社と共に人が育った

親会社のあなぶき興産がホテル事業を計画した時、たまたま同じ世代が集まった。新規事業部が、そのまま穴吹エンタープライズ(株)として独立。第一ホテルチェーンの第一イン高松(現ロイヤルホテルパーク高松アネックス)を1987年に開業した。
「その頃みんな30代でした。総支配人や総料理長は第一ホテルから迎えましたが、3、4年後に僕らが後を継ぎました」。親会社がまいた種は、4部門14 施設を展開する会社に育った。

※(第一ホテル)
1938年、小林一三により創業された日本のビジネスホテルの草分け。2000年5月、拡大政策が裏目に出て経営破綻。阪急ホテルグループと経営統合され、現在は株式会社阪急阪神ホテルズによって運営されている。

格式から「フレンドリー」に

1964年創業の高松国際ホテルは、皇室が泊まるホテルとして格式も高かった。2001年全日空ホテルクレメント高松の開業を目前にして、経営環境が厳しくなる中で事業継承を依頼された。
格式と伝統を誇ったホテルは、待ちの姿勢だった。「まず営業スタッフを強化しました。お客さんのご要望を受け入れようと、宿泊料も大幅に値下げしました」

敷居の高いホテルから、フレンドリーでにぎわいあるホテルへ。「本格的なフランス料理を出していたメーンレストランのぐりる屋島で、バイキングスタイルのランチを始めました」。当初の値段は1200円。毎月テーマを決めてメニューを変えた。敷居の高かったホテルに女性客の行列が出来た。その評判が会社関係の宴会も呼び込んだ。

チャレンジとフィードバック

倉敷美観地区の伝統的建造物で、250年前の蔵屋敷を改装した旅館くらしき。棟方志功や司馬遼太郎が泊まった由緒ある旅館を譲り受けて、2006年から小島さんが社長を兼任した。
「17室あったのを、スイート仕様の5部屋に変えました。まだ収支では苦戦をしています」。シーズンによっては宿泊の40%が外人客だ。英語が堪能で、意欲と能力と魅力のある人材を、親会社から女将として送りこんだ。

「名高い和倉温泉の加賀屋さんで一通りの修業をしてもらいました。厳しい女将の仕事を積み重ねて、旅館くらしきの評判を高めてくれるでしょう」・・・・・・。老舗旅館を継承する。レベルの高い旅館サービスをホテル事業にフィードバックする。それは顧客の満足と感動を追求する、穴吹エンタープライズのチャレンジのひとつだ。

ビジネスチャンス

いま指定管理者事業の受託に力を入れている。サンメッセ香川やアルファあなぶきホール(県民ホール)、さらに今年4月から高松テルサも受託する。
「ホテル事業はハードにお金が掛かります。税金を投入した公共施設を運営できる指定管理者制度は、ビジネスチャンスです。僕らの培ったノウハウをフルに生かせます」。ネックは契約期間だ。3〜5年間ごとに公募があるため、安定的な人材雇用が難しい。

多角化の相乗効果

「業種が違っても事業が増えると相乗効果が出てきます。無駄を省いて忙しいところに人を配置できますから」。多角化が省力と集中を可能にする。シナジー効果で単独では経営の難しい事業も再生できる。
事業が増えるとポストも増えて社員のモチベーションも上がる。「会社と共に育ったみんなのチームワークが、事業の推進力です」。小島さんは繰り返した。

※(シナジー効果)
二つ以上の要素が相互に作用して個別の価値以上の価値を生み出す効果のこと。

小島 英夫

あなぶきエンタープライズ株式会社

住所
香川県高松市古新町9-1
代表電話番号
087-825-0556
設立
1987年7月22日
社員数
640人
事業内容
ホテル・旅館事業 、スポーツ健康増進事業 、サービスエリア事業、指定管理者事業、関連事業
資本金
4000万円
地図
URL
https://www.anabuki-enter.jp/
確認日
2022.12.01

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