廃棄うどんの活用から生まれた
極上の「県産ブランドウニ」

遊食房屋 営業本部長 細川さん・多度津高校 海洋生産科教諭 大坂さん

Interview

2025.06.19

豊かな水産資源を支える海の藻場。それが衰退・消失する「磯焼け」問題が瀬戸内海でも深刻化しており、一因は海藻を食害するムラサキウニだとされる。可食部が少なく食用に向かないウニだが、香川を中心に中四国10店舗を展開する飲食店グループ「遊食房屋」と県立多度津高校海洋生産科がタッグを組み、駆除したウニを廃棄うどんで育てる『讃岐うどん雲丹』プロジェクトが始動。新たな海洋環境保全のサイクルを生み出そうとしている。

「食に携わりフードロス削減を掲げる企業として、店舗から出る食品廃棄はできるだけ減らしたい」と、遊食房屋事業部営業本部長の細川明宏さん。特に讃岐うどんは、ゆでたてにこだわるため廃棄が出てしまうことに悩み、何とか活用できないかと訪ねたのが多度津高校だった。「県内唯一の水産科がある同校とは、食をテーマに連携したいと以前から思っていました」

多度津高校では、例年海洋生産科3年生の課題研究でオリジナルブランド魚の開発に取り組んでおり、これまでに養殖サツキマス『DCJサーモン』、完全養殖サヨリ『瀬戸のキラメキ』、ブナシメジの使用済み菌床で育てた『健康キノコ真鯛』などの成功例を生み出してきた。駆除したムラサキウニを活用する独自のブランドウニについても、神奈川県の先進事例『キャベツウニ』などを参考に開発を進めていたが、コスト面で産業化が難しく中断した経緯がある。

一般的な海産魚と違って、ウニは飼育水槽のプラスチックまで食べてしまうほどの雑食性。同科教諭の大坂𠮷毅さんは、先行研究データを持つ県外機関から「ウニは好き嫌いが大きい」「デンプン質を好まない」とも言われたが、「物は試しにうどんを与えてみたら、案外食べたんです。しかも、天然ウニよりもアミノ酸の甘みが強くてえぐみが少なく、以前の研究に比べて実入りもいいデータが出ました。」

ベースとなるウニは、香川大学の磯焼け研究の一環で、高校生や漁師が駆除したものを2カ月ほど畜養する。給餌は冷凍保存の廃棄うどんを適宜解凍してウニの水槽に入れるだけだ。エサ代・エサ加工代のコストが掛からないことも産業化を狙う上では大きい。うまみを高めたり、実入りがよくなることを期待し、うどんと一緒に出る昆布やイリコのだし殻を与えたサンプルも育てたが、水産専門家らの試食ではうどんのみを与えたサンプルが圧倒的に人気だった。「一般的なウニに比べて実が白っぽいのも、うどんをイメージさせる個性だと思っています」と細川さん。

『讃岐うどん雲丹』と命名された県産ブランドウニのプロジェクトは、2024年に第33回地球環境大賞奨励賞、第5回かがわ食品ロス削減大賞環境森林部長賞を受賞。今秋以降、遊食房屋の店舗や、多度津町も舞台となる瀬戸内国際芸術祭秋会期会場で、限定的ではあるが一般販売を始める予定だ。

細川さんは「ウニのブランド感はもちろん商品として魅力的ですが、私たちの最大の目標は、産学官連携で持続可能な新しい資源サイクルを地域につくること」と強調する。「磯焼けが改善されれば漁場の回復と水産業の安定につながり、廃棄うどんの活用がうどん業界全体に広がればフードロス削減につながるでしょう」。循環型の仕組みを確立するきっかけとしての『讃岐うどん雲丹』に、大きな期待を寄せている。

戸塚 愛野

株式会社遊食房屋

住所
香川県観音寺市本大町1495-5
代表電話番号
0877-41-9975
設立
2000年11月
社員数
512人(パート・アルバイト含む、2024年4月現在)
事業内容
和食店、焼肉店、うどん店、スパ、エステの経営
創業
1999年10月
店舗
遊食房屋(観音寺総本店、宇多津店、高松南店、国分寺店、四国中央店)
遊食房屋別亭 美味休心(高松木太店、西条店)
江戸小路 鮮 遊食房屋(新居浜店、丸亀店、岡山総社店、岡山倉敷店)
グループ
炭焼 肉の近どう(宇多津店、高松古馬場店、丸亀店、観音寺店)
釜あげうどん岡じま(丸亀店、高松店、多度津店)
イタリアンレストラン「COVO(コーヴォ)」
頭ほぐし専門店「森の眠り」
MEN’S STYLE(メンズスタイル)
SPA JEWEL(スパ・ジュエル)(宇多津店、高松店)
地図
URL
https://www.yusyokubouya.com/
確認日
2024.11.07

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