企業に寄り添い 生産性向上をサポート

かがわ産業支援財団 理事長 寺嶋 賢治さん

Interview

2026.05.07

かがわ産業支援財団の施設「RISTかがわ」に設置された 株式会社ハイレゾのデータセンター=高松市林町

かがわ産業支援財団の施設「RISTかがわ」に設置された
株式会社ハイレゾのデータセンター=高松市林町

ムリ・ムダ減らし、人手不足解消へ

冷凍調理食品、鉄製金網、通信ケーブルに手袋やうちわ……これらは全て、香川が全国一の出荷額を誇る工業製品だ。「ほとんどが中小企業によるものです。香川は様々な分野でものづくりが盛んで、ニッチトップ企業も多い。全企業の中で中小企業が占める割合は全国平均よりも2ポイントほど高く、香川の経済は中小企業の頑張りで成り立っているといっても過言ではありません」。先月、かがわ産業支援財団の理事長に就いた寺嶋賢治さん(60)は力を込める。
販路開拓、人材育成、海外展開、経費の一部を補助する助成金事業など多種多様なやり方で県内の中小企業を支援するかがわ産業支援財団。先月から新たに始めた支援策がある。「生産性向上支援センター」だ。

公募で選ばれた6人のサポーターが文字通り、企業の生産性向上を支援するというもの。「6人は大手企業のOBや中小企業診断士、IT、DX、デジタル化や国際化に長けたプロフェッショナルばかりです。企業の現場を何度も訪ね、状況を確認しながら生産性の向上を目指して一緒に取り組んでいきます」

香川の有効求人倍率は16年連続1倍以上で全国平均を上回って推移。経営者の多くが人手不足に頭を悩ませている。「ITやAIを活用してマンパワーを補ったり、事業自体を見直したり……経験豊富なサポーターが経営ノウハウなどを指導することでムリやムダを減らし、人手不足の解消につなげていきたいと思っています」

エヌビディアとの協定締結を実現

出身は坂出市。地元での就職を希望し、大学卒業後、1988年に香川県庁に入った。今年3月に退職するまでに、環境を皮切りに税務、福祉、農水や土木、交流、政策など「9つある部局全てを経験しました。県庁職員の中でも珍しいことだと思います」

38年の県庁生活の中で忘れられない記憶がある。2020年11月、坂出市の与島沖で、修学旅行中の地元小学生ら62人を乗せた旅客船が座礁し、沈没した。寺嶋さんは当時、危機管理総局で総局長を務めていた。「日没が迫っている時間帯でした。あと30分もすれば辺りが真っ暗になってしまう……とても危険な状況でした」

危機管理総局では速やかに情報を集め、警察や消防、海保などの関係機関のほか、岡山県とも連携して対応に当たった。現場海域では地元の漁協や企業などが子どもたちの救助に尽力してくれた。そして……事故発生から約1時間後の午後5時半頃、「全員を無事救助したという連絡が入りました。もう飛び上がるほどうれしかったのを今でもよく覚えています」
エヌビディアとの連携協定締結式でプレゼンする寺嶋さん

エヌビディアとの連携協定締結式でプレゼンする寺嶋さん

その後、退職までの4年間は商工労働部で部長を務めた。

力を注いだのは企業誘致だ。一昨年には、GPU(AI開発に欠かせない高性能画像処理装置)クラウドサービスを展開する株式会社ハイレゾのデータセンターを、かがわ産業支援財団の施設「RISTかがわ」に誘致。さらに今年2月には、世界最大手の半導体メーカー「エヌビディア」と、GPUデータセンターの誘致や活用などに関する連携協定を結んだ。エヌビディアが日本の自治体と提携するのは初めてのことで、寺嶋さんはエヌビディアとの人間関係を構築し、協定締結式では香川をPRするプレゼンを行った。「私の県庁での最後の仕事になりました。この協定で、県内の企業や教育機関などのAIの底上げにつながればうれしい。今後はかがわ産業支援財団の理事長として側面から支援していきます」

合気道で学んだ“受けること”

“仕事は人”。大切なのは、いかにして人間関係をつくっていくか

“仕事は人”。大切なのは、いかにして人間関係をつくっていくか

かがわ産業支援財団が行う無料の経営相談所「よろず支援拠点」。昨年度は、経営改善や商品開発など約7000件の相談が寄せられた。相談件数は年々増えているが、寺嶋さんは「相談が多いということはビジネスの現場で、ヒト、モノ、カネが動き出しているということ」と分析する。「財団では、設備投資への補助など様々な助成金を出していますが、香川は企業の設備投資率が全国でもトップクラス。これは“意欲的な経営者が多い”ということ。これからもどんどん応援していきたいと思っています」

“仕事は人”。寺嶋さんは何度も繰り返す。

「企業誘致も中小企業支援も同じです。大切なのは、いかにして人間関係をつくっていくか。社会は人と人との関わりで成り立っているんですから」
55歳で始めた合気道

55歳で始めた合気道

5年前、55歳にして合気道を始めた。合気道とは、相手が動き出すのを待ち、相手の力を借りて倒す“受け身”の武道。「昔から早歩きで、せっかちな性格だった」寺嶋さんだが、「先走る気持ちを抑えて“待つこと”“受けること”を学んでいます。心に余裕が生まれ、視野も広がりますね」

今や黒帯の有段者だ。「人との間合いを感じること。これは仕事にもつながります」。職員らには、デスクに向かっているだけではなく、現場にこだわってほしいと話す。

「何に困っているのか、どんな課題に直面しているのか。人の懐、企業の懐に入っていってほしい。これからも人に寄り添い、企業に寄り添い、一緒に汗水を流していこうと思っています」

篠原 正樹

寺嶋 賢治 | てらしま けんじ

略歴
1965年 坂出市出身
1984年 丸亀高校 卒業
1988年 大阪大学法学部 卒業
     香川県庁 入庁
     住宅課長、危機管理課長、
     交流推進課長、政策課長などを歴任
2018年 危機管理総局 次長
2020年 危機管理総局 総局長
2022年 商工労働部 部長
2026年 かがわ産業支援財団 理事長

公益財団法人 かがわ産業支援財団

住所
香川県高松市林町2217-15 香川産業頭脳化センタービル2F
代表電話番号
087-840-0348
設立
1984年
社員数
102人
事業内容
総合相談、助成金活用、販路開拓、人材育成
知的財産活用、海外展開、顕彰事業 他
地図
URL
http://www.kagawa-isf.jp/
確認日
2026.05.07

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