四国から世界へ 宇宙へ
暮らし支える「ものづくり」と「物流」

カトーレック 社長 宇田 昌弘さん

Interview

2025.05.01

2025年3月に竣工したカトーレック高松本社工場=高松市朝日町

2025年3月に竣工したカトーレック高松本社工場=高松市朝日町

「ロケット品質」でグローバルに展開

日本の大型基幹ロケット「H3」。宇宙への輸送力、通信衛星や気象衛星……将来の宇宙産業を担うH3ロケットのメインエンジン制御基板を手掛けているのがカトーレックだ。

カトーレックというと思い浮かぶのが、街を走る大型トラック。「運送会社」というイメージが強い。だが、荷物を運ぶ物流に加え、車載関連機器、スキャナーやプリンターなどの事務機器、エアコンやオーブンレンジ、洗濯機などの家電製品、さらには内視鏡などの医療機器まで、様々な製品を生み出す「電子機器製造受託サービス(EMS)」も事業の大きな柱だ。

EMS事業は、メキシコや中国など世界9カ国12拠点に自社工場を持ち、グローバルに展開中。車を例に挙げると、パワーウィンドウ、メーターパネル、ヘッドライトやカーナビなどあらゆる車載関連機器に、カトーレックが実装したプリント基板が組み込まれている。

「取引先は多種多様で、それぞれのメーカーの製造プロセスの一部を担っている形です。培ってきた技術力で『企業のものづくり』と『世界中の人々の暮らし』を支えるのが私たちの使命」とカトーレック社長の宇田昌弘さん(59)は力を込め、こう続ける。「地元に関わり、世界に関わり、そして宇宙にも関わることができる。とても面白い会社です」

かつてTVドラマなどで人気を博した「下町ロケット」。ロケットエンジン開発に奮闘する下町の工場が掲げた「ロケット品質」をまさに地で行くのがカトーレックだ。

「武器の強化」と「人材育成」

出身は高知県。学生時代から英語が好きで海外志向が強かった。大学卒業後、証券会社に入ったが、高松市に本社があった映像機器メーカー、松下寿電子工業(現PHCホールディングス)が海外展開に力を入れていると知り、25歳の時に転職した。「シンガポールやアメリカに赴任し、電子部品の購買や事業提携などを担当しました」

28年ほど勤務し、ドイツの製薬会社の事業買収をプロジェクトリーダーとして成功させたり、CFO(最高財務責任者)を務めたりした。そんな中、やはり海外で事業を拡大させていたカトーレックから声が掛かった。「会社の将来のために力を貸してほしい」

2019年、53歳でカトーレックに入り、EMS事業本部長などを経て、今年4月、創業家以外では初めてとなる社長に就いた。「オーナー企業を率いるのはプレッシャーもありますが、自然体でいたいと思います。どんな会社であろうと目指すところは同じ。社員のパフォーマンスを最大限に上げることです。生き生きと働ける環境を整え、社員の力を引き出していこうと思っています」
広々としたオフィス=高松本社工場4F

広々としたオフィス=高松本社工場4F

宇田さんには、力を入れたいことが2つある。

1つ目は「武器の強化」。EMS事業も物流事業も、顧客からの要望は多様化、複雑化、高度化している。「お客様にきちんと応えるのは当たり前。今後はさらに先回りした提案力や対応力を身につけ、私たちも高度化していかなければなりません」

2つ目は「人材育成」だ。「お客様の要望に“現場で”応えられる社員になってほしい。『人は現場で育つ』と言うが、気づきを与える研修なども取り入れ、もっともっと成長してほしいと思っています」

その先にいる消費者を思いながら

瀬戸内海が望める社員食堂

瀬戸内海が望める社員食堂

今年3月、高松本社工場が竣工した。1万㎡の広大な敷地に建つ4階建てのエネルギーを省エネ機器と再生可能エネルギーで賄う。「全館LED照明、空調や人感センサーなどの最新設備に太陽光パネルを設置するなど環境に最大限配慮しています」

社員食堂にもこだわった。

広々としたスペース、ふんだんに取り入れた緑、大きな窓の向こうには瀬戸内海が広がる。「食堂をどこに配置するか、建設予定地をドローンで撮影して検討し、食事委託業者の選定にも時間をかけました。社員がほっと一息つく、とても大切な空間ですから」
新本社工場に加え、EMSに並ぶ事業の柱「物流」についても、坂出・番の州に敷地を確保し新たに倉庫を設けるなど、さらなる成長に挑む。「『国内物流』では、高齢化や人口減少が進む中、どうやって地域の物流を支えていくか。『海外物流』ではベトナムやタイなど、これから物流が発展していく国でどうやって事業を伸ばしていくか。常に荷主のその先にいる消費者のことを考えながらやっていこうと思っています」
“cool head, but warm heart”でバランスをしっかりとっていく

“cool head, but warm heart”でバランスをしっかりとっていく

好きな言葉は「cool head, but warm heart」。イギリスの経済学者アルフレッド・マーシャルが遺した「経済学者には冷静な頭脳と温かい心が必要」という教えだ。

「経営にも通ずると思います」

以前、新しく管理職に就いた社員に「これからプレーヤーではなくマネージャーとして、どう仕事を進めていくか」を尋ねた際、「ロジックと数字できちんとやります」と返ってきた。「確かに両方とも大事ですが……“人の心”はロジックと数字だけでは動かない。そこの部分を大切にしてほしいんですよね」

宇田さんは常々、「フェアであること」「人の気持ちを汲むこと」を心に留めてきた。「でも、経営者として厳しい判断を下さねばならない場面も来るでしょう。その時は“cool head, but warm heart”でバランスをしっかりとっていきたいと思っています」

篠原 正樹

宇田 昌弘 | うだ まさひろ

略歴
1966年 高知県香美郡土佐山田町(現香美市)出身
1988年 関西大学社会学部卒業
1991年 松下寿電子工業(現PHCホールディングス)入社
2019年 カトーレック 入社
     常務執行役員 経営企画 担当
2023年  取締役専務執行役員 EMS事業本部本部長
2025年 代表取締役社長

カトーレック株式会社

住所
香川県高松市朝日町4-1-51
住所
本社 東京都江東区枝川2-8-7
TEL.03・5683・7000/FAX.03・5683・7010
高松本社(高松本社工場) 高松市朝日町4-1-51
TEL.087・822・7000/FAX.087・822・9678
創業
1961年11月2日
設立
1967年4月1日
資本金
7600万円
従業員数
カトーレック2270人
国内関連会社490人/海外関連会社5140人
グループ計7900人(2024年3月31日現在)
事業内容
ロジスティクス事業(運送、倉庫、物流加工)
エレクトロニクス事業(電子機器の製造受託サービス)
地図
URL
http://www.katolec.com/
確認日
2025.05.01

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ