人をつくり、美しく豊かな環境をつくる

日本興業 社長 山口 芳美さん

Interview

2025.02.06

倉庫をリノベーションしたコミュニケーションルーム「MIRAI」 =さぬき市志度の日本興業本社

倉庫をリノベーションしたコミュニケーションルーム「MIRAI」
=さぬき市志度の日本興業本社

会社の成長は社員の成長があってこそ

さぬき市のコンクリート製品メーカー日本興業。1956年の設立以来初めての女性社長が昨年誕生した。山口芳美さんだ。

「プレッシャーはありますが、『美しく豊かな環境づくりに貢献する』という企業理念に向かって一生懸命やっていきます」

社長就任は「全くの想定外だった」と苦笑する。山口さんは入社以来、総務や人事、労務などを中心にキャリアを重ね、管理部長や総務人事部長などを務めてきた。「人材を求め、育てるのが仕事でしたから。その私がまさか経営者になるとは……」

しかし、だからこそ山口さんには営業や技術系の出身者には無い大きな強みがある。人をよく観察すること、そして育てることだ。「入社以来ずっと、人と深く関わってきました」

社員採用の1次面接から最終面接、入社後の研修や、面談・相談など、グループ会社を含めたほとんど全ての社員の採用や育成に携わり、学びの環境をつくり、その成長していく姿を見守ってきた。「会社の成長は、社員の成長があってこそですから」

社長になってまず取り掛かったのは、やはり“人づくり”だ。社員の成長を後押しするような教育制度や評価制度を拡充。「資格奨励制度」にもメスを入れた。例えば、施工管理技士など資格を持っていれば支給を受けられる「資格免許手当」の対象を「これまでの7つの資格から33に広げました」。資格の難易度に合わせて支給額を見直すと、早速社員のチャレンジ意欲に火がついた。「簿記やカラーコーディネーターの資格を取った営業社員もいます。様々な資格を持つことで視野や可能性がどんどん広がり、仕事へのエンゲージメントや生産性の向上にもつながることを期待しています」

定年の年齢を65歳に引き上げたり、新入社員研修期間を3カ月に設定し、あらゆる部署の業務を経験させるなど、社員をずっと見つめてきた山口さんならではの“人的資本経営”がまずは順調にスタートしている。

環境にやさしいコンクリートを

日本興業は、道路や河川などのインフラを支える「土木資材事業」、公共スペースの空間創造などを手掛ける「景観資材事業」、住宅のガーデン製品などの「エクステリア事業」が大きな3本柱。「1つの会社で3事業を全国展開しているのは、おそらく私たちだけじゃないかと自負しています」

コンクリート業界では今、「エコ」への取り組みが広がっている。コンクリートは材料の一つにセメントが用いられるが、セメントは製造過程で大量のCO2を出す。「そこで力を注いだのがCO2排出量を抑制した環境配慮コンクリートの開発です」
「Necoコンクリート」の適用例 「SSステージ」(張出歩道)

「Necoコンクリート」の適用例
「SSステージ」(張出歩道)

昨年、画期的なコンクリートが誕生した。鉄などをつくる過程で生じる産業副産物(高炉スラグ微粉末)などをセメントの代替材料として活用したもので、「試行錯誤を重ね、強度などはほぼそのままで、CO2の排出量を50%以上削減することに成功しました」

日本興業の頭文字「N」にエコ「eco」を付け、「Neco(ネコ)コンクリート」と命名。道路の側溝や水路、ブロック塀など様々なコンクリート製品で活用の幅を広げている。

「環境への取り組みは私たちの大きな使命です。『2040年までにカーボンニュートラル実現』を目標に全社を挙げて取り組んでいます」

国立競技場、新アリーナ……全国で大活躍

透水機能を持つ舗装材「エコロアクアSAZARE」

透水機能を持つ舗装材「エコロアクアSAZARE」

今月オープンする「あなぶきアリーナ香川」。周辺の道路などには日本興業製の高機能な舗装材が敷き詰められている。「近年のゲリラ豪雨などに対応できるよう、水を浸透させる機能などを持たせています」

4月に開催を控えた世界的イベントの会場づくりでは、円形にデザインされた特別仕様のサークルベンチや、自然由来の骨材でつくった舗装材「エコロアクア SAZARE」が採用され、イベント空間に彩りを添えている。この舗装材も雨による浸水被害を抑制する透水性の機能を備えている。

その他にも、国立競技場、大阪・御堂筋、地元ではサンポートや四国水族館周辺の道路舗装など、日本興業のコンクリート製品は、北は北海道から南は沖縄まで全国各地で活躍中だ。
日本興業グループでは、毎年年始にアクション・キーワードが制定され、全社員に向けて公開される。「今年のアクション・キーワードは『REVOLUTION』。社員一人ひとりが意識と行動を変革することで、2026年の創立70周年を見据え、当社グループの新たな未来を創造してほしいと思います」
「今日を大切に」という気持ちで、一日一日を積み重ねていく

「今日を大切に」という気持ちで、一日一日を積み重ねていく

座右の銘は「今日一日」

「いつも『今日しかない』という気持ちで、一日一日を積み重ねていく。もちろん反省もしながら、今の瞬間を精一杯生きていきたいですね」

社長になっても、社員との“直接対話”を常に心がけている。「以前の部署にいた時と同じように、今でも気軽に悩みや心配事を相談しに来てくれる。それがとてもうれしいんです」。社員との“近い”距離感をこれからも大切にしていきたいと力を込める。

「一日のうち、職場で過ごす時間が大きな割合を占めるので、『社員のやりがい』を提供することが会社の使命です。そのためには、社員の意欲を引き出し、達成感・満足感を持てる職場にしたいですね」

山口 芳美 | やまぐち よしみ

略歴
1957年 松山市出身
1980年 松山商科大学(現松山大学)経済学部 卒業
1983年 日本興業株式会社 入社
     管理部長、総務人事部長などを経て
2007年 執行役員
2012年 取締役執行役員
2020年 取締役常務執行役員
2024年 代表取締役社長

日本興業株式会社

住所
香川県さぬき市志度4614-13
代表電話番号
087-894-8130
設立
1956年8月10日
社員数
414
事業内容
建設用コンクリート製品の製造並びに施工
エクステリア用製品の製造販売
パブリックスペース用製品の製造販売
建設工事(土木工事・ブロック工事)の施工 他
資本金
20億1980万円
沿革
1956年 香川ブロック工業株式会社として設立
1969年 日本興業株式会社に社名変更
1997年 積水樹脂株式会社と業務提携
2004年 ジャスダック証券取引所 上場
2010年 大阪証券取引所JASDAQ 上場
2013年 東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)上場
2022年 東京証券取引所スタンダード市場 上場
地図
URL
https://www.nihon-kogyo.co.jp/
確認日
2025.02.06

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