「ここに来て良かった」 生徒一人一人に寄り添って

学校法人村上学園 理事長
村上学園高等学校 校長
村上 太さん

Interview

2025.08.21

高松市観光町の高松高等予備校

高松市観光町の高松高等予備校

「個別医進コース」で差別化

少子化による18歳人口の減少、多様化する大学入試に、“大学全入時代”……浪人生は減少し、大学受験予備校を取り巻く環境は厳しさを増している。だが、高予備(ルビ:たかよび)の愛称で知られる学校法人村上学園高松高等予備校は、西日本有数の大学受験予備校として、その存在感を見せつけている。

昨年度の大学入試では、国公立大が421人、早慶、上智、MARCH、関関同立などの難関私大が500人以上、さらに高予備の代名詞でもある「医大・医学部」には179人が合格した。「今はYouTubeなどネット上に教材があふれ、自宅で受験勉強する“宅浪”も増えています。でも、やはり教育は『人対人』。手間を惜しまず丁寧に、一人一人をしっかり指導するのが私たちのやり方」と、今年5月に理事長に就任した村上太さん(52)は力強く話す。「今の時代に合うよう教え方などを常に改良しながら、生徒たちをサポートしていきたいと思っています」

とは言え、高予備でも生徒数は減少傾向にある。10年前は約1000人いたが、今年度は600人強。選ばれる予備校になるため、課題や悩みに寄り添った指導、開放感のある教室、気軽に質問できるよう通路を広くした教官室など、“生徒ファースト”を重視するのに加え、昨年4月に始めたのが「個別医進プレップ」だ。「『医学部に進みたいが、今の学力では厳しい』。そんな生徒を対象とした医学部専門のコースです」
「個別医進プレップ」の授業の様子

「個別医進プレップ」の授業の様子

教員1人が生徒3~4人を担当する少人数制で、生徒それぞれの理解度やレベルに合わせた指導を行う。「わからないことをわからないままにしない」「どんな些細なことでも気軽に質問する」ことを徹底。勉強や受験のノウハウだけでなく、「『なぜ医師になりたいのか』『どんな医師になりたいのか』など、“医師になるための意識づくり”にも力を入れています」

生徒19人でスタートした初年度の評判は上々で、今年は30人にまで増員した。「実は定員を大幅に上回る入校希望がありました。経営的には大勢入れたいんですが……少人数制で丁寧な指導をするため、絞らざるを得ませんでした」。村上さんはうれしい悲鳴をあげる。

「案外、向いていた?」

高予備は30年以上、村上さんの父・良一さんが理事長を務めていた。高予備と言えば「受験道場」と呼ばれるほど厳しい直営寮。規則正しい生活に加え、授業の無断欠席ゼロ、門限の厳守、共有スペースでみんなで一緒に勉強する「必須自習」など、勉強する習慣を染み込ませるやり方で合格率がどんどん伸び、高予備は大きく成長した。だが、「本当は継ぐ予定ではなかったんです」と村上さんは苦笑する。
7月に行われた進学相談会。受験生や保護者など約1500人と 全国から106の大学が参加した

7月に行われた進学相談会。受験生や保護者など約1500人と
全国から106の大学が参加した

東京工業大学(現東京科学大学)機械工学科に進み、卒業後は日本電信電話(現NTT)に入社。ソフトウェア開発などを行っていた。「コンピューターに触っていれば幸せでした。そういう世界で生きていければと思っていたんですが……」

スキルを活かして転職しようかと思っていた時、父から「ホームページ制作や個人情報の管理など、高予備のIT関連を手伝ってくれないか」と声がかかり、人生が急展開。33歳で高予備に入り、長年、副理事長として父を支えてきた。「コンピューター好きだったので、人と接するのは苦手だと思っていたんですが……生徒たちと関わるのはとても楽しくて、案外、向いていたのかな?」と笑う。

決して“回り道”じゃない

「勉強は自分の意志でやらないといけない」と村上さんは繰り返す。「他人に言われてやっているのでは絶対に勝ち残れません」

教師から言われたことを言われた通りにやっている生徒。一方、「なぜこうなるのか」「どのように勉強すれば良いのか」と常に考え、試行錯誤しながら取り組んでいる生徒。「その差は明らかです」

しかし、集まってくるのは弱冠18歳前後の若者たちだ。「正しく導くことが私たちに求められています」

高予備の教師は約130人。村上さんが望むのは、生徒本人が「勉強をやらされている」と感じないように机に向かわせ、「自分で考えてやっている」と思わせるような指導だ。「難しいことですが、教師には生徒たちをより良く導いていってほしい。そして、そんな教師を育てていくのが私の役目だと思っています」
教育は「人対人」。手間を惜しまず、一人一人をしっかり見つめる

教育は「人対人」。手間を惜しまず、一人一人をしっかり見つめる

村上さんは高予備の理事長と合わせて、通信制高校・村上学園高等学校の校長も務める。何らかの事情で元々いた高校に通えなくなり、村上学園を頼ってきた生徒も多い。

「村上学園高生も高予備生も、少し“ルート”から外れてしまった生徒かもしれません。でも私は、決して回り道とは思わない」と村上さんは口調を強め、こう続ける。

「ルートから外れていたとしても、人生で考えたらほんの一瞬です。後から振り返った時に『人生の貴重な経験をした』『ここに来て良かった』。そう思ってもらえるよう、生徒たちに寄り添っていきたいと思っています」

篠原 正樹

村上 太 | むらかみ ふとし

略歴
1972年 香川県出身
1991年 高松高校 卒業
1997年 東京工業大学工学部 卒業
     日本電信電話株式会社(現NTT)入社
2005年 高松高等予備校 入職
2017年 村上学園高等学校 校長
2025年 学校法人村上学園 理事長

学校法人村上学園

住所
香川県高松市観光町547-1
代表電話番号
087-834-1015
設立
1962年 開校
高松高等予備校
[本校:1号館]高松市観光町547-1
TEL.087-834-1015/FAX. 087-863-3088
[本校:2号館](個別医進プレップ)高松市観光町545-3
TEL.087-862-1015/FAX. 087-802-5532
[亀井町教室]高松市亀井町8-10
TEL.087-835-1015/FAX. 087-813-2015
村上学園高等学校
丸亀市幸町1-10-16
TEL.0877-43-4777/FAX.0877-25-0284
[高松校]高松市観光町545-3
TEL.087-833-4777/FAX.087-833-4788
沿革
1962年 大学受験校 高松予備校として開校
各種学校として設置認可
1973年 学校法人認可
高松高等予備校に名称変更
2002年 付属診療所なりあい医院 開院
2004年 亀井町教室 開校
2005年 各種学校から専修学校に変更
2012年 丸亀市幸町に通学型通信制高校
村上学園高等学校を開校
2015年 高松高等予備校本校を観光町へ移転
地図
URL
https://takayobi.com/
確認日
2025.08.21

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