“経済のバロメーター” 鉄スクラップに再び命を

光洋産業 社長 香月 一郎さん

Interview

2024.02.01

光洋産業のスクラップヤード=坂出市築港町

光洋産業のスクラップヤード=坂出市築港町

最大の強みは「全部やる」

鉄スクラップの相場は、株価よりも早く動く“経済のバロメーター”とされる。米連邦準備制度理事会(FRB)の元議長グリーンスパン氏は、かつて記者から「もし離れ小島に流され、たった一つの経済指標しか手に入らないとしたら何が欲しいか?」と問われた際、こう答えたという。

「鉄スクラップの価格を知りたいね」

坂出市で鉄のリサイクルや建物の解体などを手掛ける光洋産業。海岸沿いに広がるスクラップヤードには、車や船、建物を解体して生じた鉄くずなどが鉄工所や造船所から次々と運び込まれてくる。「鉄スクラップは、溶かすと再び“新たな鉄”に生まれ変わる。リサイクル材の中でも超優等生です」。社長の香月一郎さん(49)は力を込める。

スクラップは、鉄や銅、アルミなど金属の種類ごとに分類され、それらを溶かす炉のサイズに合わせて、ガスバーナーや切断機械で切り分けられる。そして製鉄メーカーに送られ、再び製品として“生まれ変わる”ことになる。「私たちは、一度役目を終えた鉄くずにもう一度命を吹き込むという、とても価値のある役目を担っていると自負しています」

5ヘクタールを超える広大な敷地を持ち、港は海外を行き来する積載量5000tクラスの船の着岸も可能だ。「大型トラックが25台あるので、スクラップをこちらから取りに行くこともできる。引き取りから出荷まで『全部やる』のが私たちの最大の強みです」

取引先は、四国を中心に民間から官公庁、大手から中小まで数百社、スクラップヤードに日々積み上げられていく鉄くずは年間12万トン超。光洋産業は自慢の“一貫体制”で、四国では業界最大規模の取扱量を誇っている。

「宿命……じゃあ、やってやる!」

1969年に父・正剛さんが創業した。香月さんは姉が2人の長男で、「実はこの業界にあまり興味が持てず……以前はどうすれば家業を継がなくてすむかばかり考えていました」

だが、学生時代に経験した解体工事のアルバイトで、考え方ががらりと変わった。「現場では大きな重機が何台も動いていて圧倒されました。迫力があって、とてもワクワクしたんです」。リーダーがチームをまとめ、作業が効率よく進んでいく。そして、建っていた大きなビルが崩れ、あっという間に更地になっていく。これまで感じたことのない衝撃だった。

「これこそ男の世界。かっこいいなあ」
解体工事の様子

解体工事の様子

悶々としていた気持ちが一気に晴れた瞬間だった。「『これが宿命なのか。じゃあ、やってやろうじゃないか』と吹っ切れましたね」

1999年、25歳で会社に入り、33歳で社長になった。家業の「鉄リサイクル」と、アルバイトで衝撃を受けた「解体」の仕事は若干違う。だが、「技術的に重なる部分や繋がる部分は多いんです。リサイクルと解体、それぞれのスキルをさらに磨いて成長し、取引先の会社や地域に貢献していく。それが一番の目標ですね」。そして、香月さんはこう加える。

「やっぱりこの仕事……男のロマンですよ」

会社に愛着を、仕事に誇りを

笑顔が印象的。周りを元気にするとてもエネルギッシュな人だ。常に心掛けているのは「前向き」で、「へこたれることもありますが、決して後ろは振り返りません」。そう笑顔で話す。

鉄のリサイクルに解体、「社会を支える価値ある仕事」という自信は持っている。だが、悩みもある。業界は人手不足が深刻だ。「最初はとっつきにくいかもしれないが、やってみると、いろいろな資格も取れるしスキルアップもできる。これほど面白い仕事はないと思うんですけどね」
ミーティングのあとが残る会議室のホワイトボード

ミーティングのあとが残る会議室のホワイトボード

香月さんが今、最も力を入れているのが人材育成だ。「会社に愛着を感じ、やりがいや誇りを持ってほしい。この仕事の魅力を伝えていくのは、私の大きな責任だと思っています」

社員を社外の講座に出席させたり、社内でも定期的に集まって会社の将来などについて話し合ったり……。会議室のホワイトボードには、数日前のミーティングで出し合った意見が残っていた。

「街のため、人のため、環境のため」「リサイクルの可能性を追求」「街の資源を未来の資産へつなげる」「仲間と共感し、感謝し合える社員を育てる」「自己成長を目指し、周りから愛される人になる」……
リサイクルの超優等生「鉄スクラップ」で社会を支える

リサイクルの超優等生「鉄スクラップ」で社会を支える

「始めたばかりなので、まだまだこれからです。私自身も経営者としては青二才なので、学ぶことがいっぱい」と謙遜する。

「社員とは『この会社で働いて良かった』と思ってもらえるような関係をつくっていきたい。しんどいことも多いけれど、魅力も大きいこの仕事を通じて、仲間と一緒に成長していきたいですね」

篠原 正樹

香月 一郎 | かつき いちろう

略歴
1974年 坂出市出身
1992年 坂出高校 卒業
     大学卒業後、大手鉄リサイクル会社勤務を経て
1999年 光洋産業株式会社 入社
2007年 代表取締役

光洋産業 株式会社

住所
香川県坂出市築港町2丁目7番12号
代表電話番号
0877-46-5899
設立
1969年11月11日
社員数
44人
事業内容
金属くず商(鉄・非鉄リサイクル、一般鋼材・中古機械の売買)、
解体工事(プラント設備、工場機械などの撤去工事)他
関連会社
光洋テック株式会社
株式会社トーワ・自工
地図
URL
https://www.koyo-recycle.co.jp/
確認日
2024.02.01

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ