「予防」と「検査」で がん死者数を“ゼロ”に

Setolabo 代表 岡田 悠輝さん

Interview

2024.02.15

Setolabo衛生検査所。後ろに並んでいるのは、がん、HIVウイルス、結核菌などを調べる「リアルタイムPCR装置」

Setolabo衛生検査所。後ろに並んでいるのは、がん、HIVウイルス、結核菌などを調べる「リアルタイムPCR装置」

“超早期発見”と“超早期治療”

PCR検査の様子

PCR検査の様子

Setolabo(セトラボ)は、高松市と大阪市で、遺伝子検査、血液検査、新型コロナウイルスのPCR検査などを行っている。医師で代表を務める岡田悠輝さん(30)が特に力を入れるのは「予防」と「検査」。「予防医療を通じて、笑顔で健康な社会を作り出す」を企業理念に掲げる。「近い将来、がんを早期に発見し、速やかに病院で治療するという流れを確立したい。がんで亡くなる人を“ゼロ”にしたいと思っています」

大阪市生野区のSetolabo衛生検査所には、遺伝子の配列を解析する機械など最新の検査機器が所狭しと並ぶ。がんの早期発見や効果的な治療を目指し、岡田さんは今、2つの画期的な検査を進めている。

一つ目は、がんの遺伝子パネル検査。がんの病状は人によって違う。どの遺伝子が異常なのかを突き詰めて調べることで「がん患者一人ひとりに合った薬が投与でき、効率の良い治療を行えます」

二つ目は、がんの“超早期発見”“超早期治療”につながる検査。「血液中に含まれる、がん細胞がつくり出す『マイクロRNA』を検出して、がんを見つけるやり方です。がんによって成分が異なるマイクロRNAを遺伝子検査することで、小さながん細胞でも見つけ出すことができます」

この手法は昨年、『がんの超早期発見で、がん死者数を0の県に!』というプランの名称で、香川県ビジネスチャレンジコンペの最優秀賞を受賞。革新的な技術とアイデアに大きな期待が寄せられている。

「経営者」と「医師」の“二刀流”で

医学の道を志したのは中学生の時。広島の実家で一緒に暮らしていた祖父ががんで亡くなったのがきっかけだった。「がんが見つかった時にはすでに全身に転移していました」。日々弱っていく祖父を見て、思った。「もっと早く見つかっていれば、治る可能性もあったのに……」

医学や研究に興味を持ち、香川大学医学部に進んだ。「予防」と「検査」の重要性に気づかされたのは、4年生の時に留学したタイの病院だった。「1人の先生が毎日100人以上の患者を診ているんです。入院患者も多くてベッドも足りず、廊下や、ベッドとベッドの間で寝ていたり。どうしてこんなに患者が多いのか……。『ちゃんとした予防や検査が必要だ』と痛感しました」
遺伝子を解析する最新検査機器「次世代シーケンサー」

遺伝子を解析する最新検査機器「次世代シーケンサー」

香川大学では、「香川のことをもっと知ろう」と地域活性化プロジェクトにも参加。島しょ部など各地を回り、まちおこし活動にも積極的に取り組んだ。また、タイの他にもシンガポール、インドやキューバなどを訪ね、それぞれの国の文化や宗教、国際医療や途上国医療を学んだ。すると……「社会の医療問題に取り組みたい」。そんな思いが次第に膨らんでいった。

2019年、香川大医学部在学中に「合同会社Setolabo」を設立。同じ年に医師免許も取り、「経営者」と「医師」の“二刀流”がスタートした。「クラスメートのほとんどは医者になっています。医学部出身者はそれが王道。私のようなケースは極めて稀ですね」。岡田さんは無邪気に笑う。

“脱毛サロン”で正しい知識を発信

岡田さんは検査所に加え、高松市で「脱毛サロン」を運営している。なぜ脱毛サロンなのか?

「若い人向けの“教育”のためです」

取り組んでいる「予防医療」。大切なのは、精度の高い検査や検診に加え、「医療や健康に対する正しい知識を身につけること」だと岡田さんは力説する。「それを学ぶ格好の場が『脱毛サロン』なんです」

“○年間全身脱毛し放題”、“初回0円から施術開始”、“満足度99%”、“全然痛くない”……
若者客も多い脱毛サロンでは、勘違いしそうな誇大広告や大袈裟な謳い文句をよく目にする。「その表現は真実なのか。全てを鵜呑みにせず、情報をきちんと取捨選択する。脱毛サロンを切り口に、医療に関する正しい知識を発信できればと思っています」

また、さぬき市の海辺に検査所兼研究所の開設を計画中。「開設した際は一部スペースをカフェにして、地元の人に来ていただけるような形にしたいと思っています」
予防医療を通じて、笑顔で健康な社会を作り出したい

予防医療を通じて、笑顔で健康な社会を作り出したい

会社を立ち上げた直後はコロナ禍に見舞われ、毎日1万件を超えるPCR検査に追われた。次第に落ち着き、岡田さんは「今年が第二創業」と決意を新たにする。「がんを見つける『マイクロRNA』の遺伝子検査は、将来的には保険適用まで持っていきたい。時間がかかるかもしれないが、意味のあるものにしないといけません」

まだ30歳になったばかり。若者らしい感性と行動力で、「やりたいことがいっぱいある」と目を輝かせる。「今興味があるのは、生命の根源に関わるような研究や老化のメカニズム。いつまでも人が若々しく生きられるように、ゼロから1を生み出すような研究がしたい。そして、それを研究だけで終わらせず実用化し、社会に還元したいと思っています」

篠原 正樹

岡田 悠輝 | おかだ ゆうき

略歴
1993年 広島市出身
2012年 修道高等学校 卒業
2019年 合同会社Setolabo 設立
     香川大学医学部医学科 卒業

合同会社Setolabo

住所
香川県高松市西内町4番6号
設立
2019年1月30日
社員数
10人(2024年1月)
事業内容
衛生検査業、コンサルタント業 他
支社
Setolabo衛生検査所(高松市、大阪市)、広島支社
地図
URL
https://setolabo.co.jp/
確認日
2024.02.15

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