日本半導体 復権への道

著:牧本 次生/筑摩書房

column

2021.12.02

最近、半導体が不足し、自動車メーカーが減産に追い込まれるなどしています。多方面に影響が出ており、新聞やテレビでも半導体のニュースを目にすることが多くなりました。中国とアメリカの関係もあり、双方の綱引きの影響もあるようです。ニュースでは、台湾のTSMCとソニーが合弁で、熊本に8,000億円をかけて2024年までに工場を建設し、量産を始めるとのことです。日本政府はその半額程度の補助金を出します。WTOにレッド補助金やイエロー補助金とみなされはしないのでしょうか。

半導体に関してはアメリカもその大半をTSMCに依存しており、日本より先にTSMCの工場を造るようですし、サムソンもアメリカでの工場の計画を発表しました。かつては日本も世界の半導体シェアの50%を占めていたのが、現在は10%程度だといいます

本書によると半導体の特徴は技術革新のスピードが速く、しかもそれが長年にわたって続いているということで、その驚異的な進化こそが産業や社会に大きな変革をもたらす要因だそうです。半導体がどういうものか私はほとんど知りませんでしたが、本書にはその基礎知識から世界における現況、日本の半導体の盛衰と復権への道が述べられています。

半導体はたかがGNP比1%の産業ということで日本では重きが置かれませんでしたが、一個の半導体チップが欠けただけで、一台200万円の車が作れなくなります。著者がいうところの「半導体は現代文明のエンジン」です。その市場の変遷は家電製品から始まり、パソコン、スマホへと進み将来的には自動運転車を含むロボティクスへと移っていき、日本もそこを目指すべきと著者はいいます。

日本経済新聞によれば半導体業界の投資は急増しており、アメリカのIDCは2023年に生産能力が過剰になると予測し、関係者の脳裏には2017年にピークを迎えた半導体メモリーのDRAMが、2019年に3分の1まで下落したことが頭をよぎるということです。

山下 郁夫

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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