天気の不思議を読む力

著:トリスタン・グーリー/エイアンドエフ

column

2024.08.01

連日酷暑の日が続きますので、この夏を乗り切るためには、もう一段階上の体力と気力と辛抱が必要です。天気予報は毎日必ず見ることにしていますが、明日の最高気温は38度などといわれると、ついため息をついたりしてしまいます。そんなこともあって今回は天気の本を紹介することにしました。もっともこの本には、なぜこんなに気温の高い日が続くのかや、エルニーニョ現象とか太平洋高気圧のメカニズムの話などは出てきません。そういった大きな天気の話ではなく、自分の住んでいる場所の天気の読み解き方の方法を書いた本です。

今天気予報の世界では、地球上の計測地はもちろん人工衛星からも送られてくる膨大なデータをスーパーコンピューターが瞬く間に処理して、気温や台風の進路、雨雲の流れや風の動きなどを予測します。その精度はどんどん上がっていると思いますし、私たちが生まれる以前には48時間予報などは不可能だといわれていたようです。ですが出来ないことはまだまだあって著者はこういいます。「世界最高の気象予報士が100人集まり、世界最強のコンピューターを100台借りてきたとしても、明日どこににわか雨が降るか、特定するのは難しい」。つまり自分の頭の上のお天道様のことは自分で考えて予測しなさいということでしょうか。著者はこのことを気象予報士に幾度か尋ねたようですが、返ってくる答えは「あ、それはいわゆる天気ではありません。あなたがおっしゃっているのは微気象です」というものです。著者のいう天気とは地元の丘を散歩するとき遭遇する日差し、風、雨、気温などの変化です。そこでは一本の木を挟んだ両側でさえ天気は違ってくる可能性があります。

もちろん大スケールで起こる天気を解明する「ビッグウェザー」は数え切れないほどの人の命を救ってきました。気象予報士の仕事には敬意を表すべきです。一方で、これは私たち自身の問題でもありますが、著者もいうように「私たちは日常的に遭遇する場面よりはるかに大きな規模で天気を考えることしかできなくなってしまった」のでしょうか。地元に伝わる天気に関する言い伝えやことわざも、もう一度考えてみてもいいかもしれません。この本は私たちが日常生活の中で出合う天気の秘密を解明するための、手がかりやサインを探るためのものです。

宮脇書店 総本店 店長 山下 郁夫

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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