大規模言語モデルは新たな知能か ChatGPTが変えた世界

著:岡野原 大輔/岩波書店

column

2023.08.03

ChatGPTは昨年の11月に登場した最新のAIチャットボットで、わずか2カ月で全世界の利用者が1億人に達したといいます。ツイッターが5年を要したことを考えるとその注目度の高さが分かります。いろんな話を聞いていると、ひょっとするとこれは自動車やパソコンやスマホが登場した時以上に、世界を大きく変えてしまう出来事かもと思ってしまいます。ChatGPTに関する本はすでに入門書から活用法を書いたものなどたくさんの本が出ていますが、今回はあえて大規模言語モデルの専門家が書いた本を選んでみました。もちろん中身は一般向けに分かりやすく書かれた本です。

この人工知能のツールは、みなさんご存じのように企画書や始末書などのビジネス文書、読書感想文からラブレター、さらには小説まで頼めばなんでも書いてくれるといいます。会話や質問をすることもできるし作詞や作曲もできます。すでにそうやって作られた音楽や小説がどのくらい世の中に入り込んでいるのか実態はわかりません。ただし、このようなことは大規模言語モデルの持つ可能性のほんの一部分だということが本書を読むとわかります。大規模言語モデルはChatGPTなどのツールを支える仕組みだということですが、それは人類の知を書き換えてしまうような方向へ進むかも知れません。なにしろこの大規模言語モデルは四六時中ウェブ上で入手可能なデータや本、プログラムコードをもとに疲れ知らずに学習しています。そしてこれは完成形ではないので、これからどういう形に変化あるいは進化していくのか想像もつきません。ChatGPTをはじめマイクロソフトのビングAIやグーグルのバードなどすでにこういったサービスはいくつか登場していますが、特定の人に独占されたり、悪意を持った人や組織に運営されないかとても心配です。

自動車やパソコンあるいはインターネットやスマホが出現して便利になったし生活スタイルも一変しました。一方で失ったものもまた大きいと最近つくづく思います。このAIの出現は自動車やインターネットの出現がかわいく思えてしまうほどの衝撃かもしれません。

山下 郁夫

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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