収益改善(価格転嫁)と税制支援が不可欠
最低賃金の全国加重平均額1055円から1500円を達成するには42.1%の引き上げが必要となる。 5年後には対応を迫られるが、今回のアンケート調査で6割以上(61.8%)の香川県内の企業が最低賃金の引き上げは「不可能」と回答した。収益改善や生産性向上への投資、税制支援など、多面的な中小企業の支援も問われている。
働く人に賃上げは歓迎される。だが、最低賃金1500円が「不可能」とする企業は61.8%(34社)と6割以上に達した一方で、「すでに時給1500円以上を達成」している企業は3.6%(2社)に留まった。
賃上げを実施した企業も、物価高に伴う収益悪化や業績成長の鈍化から「賃上げ疲れ」が漂い始めている。25年の賃上げは、大企業と中小企業の規模による格差が生じかねず、最低賃金1500円が事業継続と倒産・廃業の分岐点になるかもしれない。
アンケート調査で「(実現は)不可能」と回答した企業にどうすれば実現できるか尋ねると、「低価格で受注する企業の市場からの退場促進」が34.5%(10社)を占めた。
また、助成や税制優遇などの支援が拡充されない場合、「解雇規制の柔軟化」を求める回答も17.2%(5社)あった。最低賃金1500円は、中小企業の事業再生と自立への支援強化がないと実現は難しく、賃上げは両刃の剣になりかねない。
「不可能」の企業が6割以上
規模別では、「不可能」は大企業0.00%(4社中、0社)、中小企業66.7%(51社中、34社)で、大きく差が開いた。
最低賃金1500円に向けて、中小企業から実現にかなり厳しい声が出ている。業績拡大のほか、収益強化が課題で、さらに税制拡充や投資への助成など、政策的なバックアップを求める声も多い。一方、「低価格で受注する企業の市場からの退場促進」など、正当な競争を求める声も上がっている。政策支援や生産性向上の自助努力が遅れると、最低賃金をトリガーにした企業経営の二極化が拡大する可能性もある。

※本調査は2024年12月2~9日にインターネットによるアンケート調査を実施。有効回答55社を集計し、分析した。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
東京商工リサーチ四国地区本部長兼高松支社長 波田 博
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