金融×化学×アートで「海」を「資本」に
~ブルーカーボンによる瀬戸内海創生プロジェクト~

株式会社日本政策投資銀行

Research

2026.03.05

日本政策投資銀行と香川大学が連携協定を締結

(株)日本政策投資銀行(以下、「DBJ」という)と、国立大学法人香川大学は、産学の連携を通じた脱炭素・ネイチャーポジティブ社会の実現を目指し連携協定を締結している。具体的には、海業の復興を目的に①ブルーカーボン技術にかかる新事業調査、②ブルーカーボンが瀬戸内海に与える経済性以外の価値の定量化、③カーボンニュートラル(CN)やネイチャーポジティブをテーマとするリカレント講座実施による協働を図っている。

香川大学における藻場の研究とブルーカーボンの技術

海の中に形成される藻場は「海の森」とも言われ、水生生物保護や産卵場としての生物多様性の保全や、CO2の貯留による地球温暖化抑制等、多様な役割を担っている。しかし、瀬戸内海海域において高度経済成長期の水質汚濁や砂利の採取等により、瀬戸内海の藻場は約3割にまで減少し、これに伴い漁獲量も約30年前の4割弱の水準に落ち込んだ。

香川大学は漁業関係者からの「瀬戸内海で魚が捕れなくなった」という危機の声を聞き、人工的に藻場を造成する技術の研究を開始。これまで15年間の漁業者との協働による実証実験において藻場造成構造物を開発し、継続的に構造物設置によるCO2吸収量や水質への影響、藻場に集まる稚魚等のデータを蓄積している。

DBJにおける環境およびサステナビリティの取組

DBJは経営上の重要な課題の1つに「潜在力を生かした地域創生」を掲げており、地方創生の実現には、「地域資源の活用」と「持続可能であること」が重要であると考える。

四国支店では、脱炭素の実現に向け四国中央市CN協議会の事務局を務め運用しているが、活動を通じてCO2削減のみならず生物多様性の維持に関する情報開示について検討している企業が多いことに気が付いた。そこで、地域の自然資本に向き合っている取組を探求していたところ、香川大学の科学的根拠に裏打ちされた長年の実績を有する藻場造成構造物を活用した瀬戸内海の復興を目指す研究開発に出会い、お声がけをさせていただき連携に至った。

藻場造成による経済性以外の価値の「定量化・見える化」

ブルーカーボンの事業化を推進するには、藻場造成構造物が有する様々な価値を定量化・見える化することが必要である。例えば、藻場はブルーカーボンを吸収し、クレジットとして売買可能であるだけでなく、稚魚の保護・育成や産卵場として機能することで漁業資源の増加が期待される。こうした生態系の豊かさは、観光資源としての魅力を高め、地域の活性化にも繋がり、さらに藻場造成構造物は海岸の防護機能や水質浄化機能を備えており、大学による教育や研究の場としても価値がある。こうした様々な価値を有識者や専門家とともに定量化することに取り組んでおり、来年度には調査レポートを公表予定である。

瀬戸内海の創生を目指して

沿岸域のネイチャーポジティブを機会にした事業化は、世界でも稀な取組である。本取組も含めた海の保全活動等に対する資金の呼び込みを実現するためには、本取組を理解し、賛同して下さる人を増やすことが重要だと考え、2025年11月に香川大学と国立大学法人東京藝術大学、DBJの三者にて連携協定を締結した。香川大学の科学による事象を見える化する力、東京藝大のアートによる本質を見える化する力、DBJの金融による価値を見える化する力を組み合わせることにより、ブルーカーボンの事業化を促進し、豊かで持続可能な海の創生を加速させることを目指している。

DBJは皆様のご理解・ご協力を頂きつつ、瀬戸内海を皮切りに四国全体、更には日本から世界の海の創生に繋がるような取組を生み出して参りたい。

株式会社日本政策投資銀行四国支店 企画調査課 副調査役 藤岡 亜希子

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