讃岐の製糖の歴史は、高松松平藩5代藩主・松平頼恭公が、延享3(1746)年に、藩医である池田玄丈に「糖業開発を命ずる」ところから始まります。
サトウキビの苗は、幕府による頒布や、平賀源内が古高松に住む久保桑閑を通じて周慶に送るなどにより讃岐にもたらされ、『高松松平家博物図譜 写生画帖 菜蔬 裏18』(写真)に、明確にその姿を確認することができます。また、墨書に「青皮と紅皮の2品種が存在する」「いずれも煮て砂糖を作ることができる」ともあります。
しかし、サトウキビは本来、南西諸島など温暖な地域で栽培される作物であり、冬寒い讃岐の地で搾汁するに十分な大きさまでに成長させるには、並々ならぬ栽培技法の検討が行われたことでしょう。実際、周慶が製出した白下糖を初めて藩に献上した折には、製糖の手法だけではなく、栽培方法も併せて報告がなされています。
その後、文化5(1808)年に白下糖から三盆糖を製出する技術を開発した南野村(東かがわ市相生)の新兵衛が、その技術を独占することなく広く普及したことで、製法が爆発的に広がり、ついに天保11(1840)年に、讃岐における「三盆糖」の製出技術が完成したのです。
「讃岐の三盆糖」は、県土が狭く資源に乏しい讃岐においていかに国力を上げるかという、官民一体となった取り組みの結晶なのですね。
晩秋に収穫されたサトウキビから製出される和三盆には、青果物と同じく旬があります。寒くなると店頭に掲げられる「和三盆の新物入荷」という看板を目にしたら、高松松平藩の先人たちの一世紀にわたる努力に思いをはせていただければと思います。
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん
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