歴史ある町並みを守り、住み継ぐ挑戦

引田町家マッチングプロジェクト

Topic

2025.10.16

瀬戸内の風待ち港として栄えた引田には、江戸から戦前期の町家や、安土桃山期に形成された街路が今も息づいている。旧讃岐街道沿いの町並みや、寺院が並ぶ寺町など、城下町の名残を色濃く残す貴重な景観だ。しかし過疎と高齢化が進む中、空き家は増え続け、不動産市場にも乗らないまま解体される例が少なくない。街並みが失われれば、歴史や暮らしの記憶も途切れてしまう。そんな危機感から、住民有志10人が立ち上げたプロジェクト。空き家の“もらい手”を探し、所有者や近隣住民の思いを調整しながら、次の担い手へつなぐ取り組みだ。

活動の柱は2つ。一つは、老朽化が進んだ空き家を現実的に扱うこと。例えば瓦落下の危険があった旧商店は、ボランティアDIYで仮補修などを行った。最終的に店舗部を解体する選択となったが、奥の建物は活用の可能性を残し、もらい手探しを続けている。もう一つは町並みの価値を学術的に見える化すること。歴史的な町並みの保存や利活用を支援する全国組織「日本ナショナルトラスト」の協力を得て、香川大学と連携し、図面化や古写真収集、住民への聞き取りを進めている。将来的には、「重要伝統的建造物群保存地区」の選定も見据えた取り組みだ。

立ち上げから1年余りで10件のマッチングを実現。瀬戸内国際芸術祭での虫籠窓ライトアップや「引田 町並みミーティング」も行い、小さな成功が新しい仲間を呼び込む契機となっている。

「私たちの代で歴史ある町並みを絶やすわけにはいかない。新しい仲間と一緒に“住み継ぎ”、楽しく暮らせる町にしていきたい」と代表の永峰優一さん。プロジェクトは完全なボランティアで、案内やサイト運営、DIY時の昼食代などの費用は小口の寄付で支えられている。空き家は、移住やセカンドハウス、事業拠点など多様な形で活用できるという。「引田は日常の買い物や公共施設も徒歩圏内。便利で安心して暮らせる」と、その魅力も伝えている。

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