特色ある企業を盛り上げ
魅力的な地域づくりに貢献したい

四国経済産業局 局長 吉田 健一郎さん

Interview

2025.10.16

大学での研究期間の大半を、地球磁気圏観測衛星からのデータ解析に費やした。研究はおもしろかったし、修了後は専門を活かして研究者の道を歩むものだと漠然と考えていた。ところが、「一つの分野を突き詰めるより、幅広く世の中全体と関われる仕事の方が自分に合っているのでは?」という思いを抱いて国家公務員を意識するようになり、通商産業省(当時)に入省した。

技術系採用だが、振り出しでは産業税制を担当。理系一筋だったため、基本中の基本を学ぶことからのスタートだった。「全く時間が足りなかった」と当時を振り返る。翌年には阪神淡路大震災が発生し、その後の経済対策など、とにかく時間に追われる毎日だった。

基盤となった3年間

機械情報産業局(当時)や資源エネルギー庁などを経験。業種を所管する立場、また企業と直接接する部署が多かったという。特に印象に残るのは、2013年~15年に自動車課次世代技術室長として自動運転の政策に携わった3年間。自動車は好きだったので仕事は楽しかったが、「いくら技術開発を進めても制度や環境に受け入れてもらえなければ公道は走れません。車両の規制や道路の整備・保全は国土交通省、道路交通法は警察庁、自動運転に活用される通信の規制は総務省が所管。全体で連携しない限り着地点はないと強く思いました」。

折しも内閣府にこれらの省庁や自動車メーカーが連携するプロジェクトが立ち上がり、これに参画することとなった。そこからは自分も各省庁や企業の結節点となり、協働での実用化に貢献したいと考えるようになった。例えば、自動運転に対する一般の関心を高め、日本の技術水準の高さをアピールするため、「安倍総理に各社の会長や社長と一緒に一般道で自動運転車両に試乗していただく」デモンストレーションを企画し、「関係者の協力で成功した時は本当にうれしかった」という。相手の立場に立って議論し、同じ目的に向かって力を集結することの大切さを実感。今でもこの3年間の経験は、仕事を進める上での基盤になっている。
2014年9月にデトロイトで開催されたITS世界会議にて

2014年9月にデトロイトで開催されたITS世界会議にて

関係者とともに課題解決に取り組む

香川県へは2003年に香川県商工労働部参事として赴任して以来、今回が2回目。前回は希少糖プロジェクトなどを担当した。地域の技術シーズを活用した挑戦に関われたこと、その後、関係者の継続的な努力により実際に産業化されたことは何よりの喜びと振り返る。

今回の赴任に際し、「特色ある企業、豊かな自然、四国は本当に素晴らしいものを持っている」とその印象を話す。同時に、「人口減少を見据えた経済社会の方向性を見出すことが課題。活力を生み出すのは人です。四国で人が輝き続けるためには魅力的な働き場所が必須。特色ある企業をいかに盛り上げていくかが要だと考えています」と意欲をみせる。

自らの性格を“慎重派”と分析する。「人より前に出て旗を振るよりは、呼びかけながら一緒にコツコツと固めるやり方が性に合っている。皆さんの持つ経産省のイメージと違いますかね(笑)」とも。プライベートでは「落ち着いたら趣味のカメラを持って四国のジオサイトを巡ってみたい」と話す。

吉田 健一郎 | よしだ けんいちろう

略歴
1988年3月 奈良県・東大寺学園高等学校卒業
1992年3月 京都大学工学部電気工学第二学科卒業
1994年3月 京都大学大学院工学研究科電気工学第二専攻修了
1994年4月 通商産業省入省(産業政策局企業行動課)
1999年7月 英国・エディンバラ大学留学
2003年6月 香川県庁に出向(商工労働部参事、次長)
2013年6月 経済産業省製造産業局自動車課ITS・次世代技術室長
2016年6月 資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部省エネルギー課長
2019年7月 内閣府宇宙開発戦略推進事務局参事官
2021年8月 経済産業省地域経済産業グループ地域経済産業政策課長
2022年7月 地域経済産業グループ地域経済産業政策統括調整官
    (併)内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局審議官
    (併)内閣府地方創生推進事務局審議官
2024年7月 公益社団法人2025年日本国際博覧会経営企画室担当局長兼企画局担当局長
2025年6月 四国経済産業局長

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