切磋琢磨を信条に一生勉強

日本銀行高松支店長 大塚 竜さん

Interview

2023.08.03

東京生まれ、東京育ち。両親は共働きで、学童クラブや近隣の人たちにサポートされながら育った経験を経て「社会に恩返しがしたい」と思うようになり、社会に与える影響の幅広さを鑑みて金融業界を選んだ。今年6月から日本銀行高松支店長として初めて四国の地を踏み、業務区域である香川・徳島の経済発展に貢献しようと奔走している。

国外交渉、組織内人事… 広い視野を育んだキャリア

ゼネラリストを育成する風土のもと、早くから業務企画や法務に携わり、財務省への出向や内部管理も経験して、広い視野から物事に臨む姿勢を身につけてきた。中でも思い出深い仕事の一つに、2011年の秋から冬にかけての欧州債務問題を背景にした、日本と欧米の中央銀行間で行われた通貨スワップ締結がある。円とユーロの交換取引に当たってのレートの決め方、約定の内容などの細かい調整を1カ月で仕上げる実務を担当。クリスマス前でホリデー気分のヨーロッパと、時差もあって夜半までやりとりを続けながら、年末には何とか市場金利に落ち着きをもたらすことができた。「入行15年目だったと思います。あらためて、世の中の役に立った実感がありました」と振り返る。

近年は人材育成やダイバーシティ推進にかかわる人事関連業務を中心に、福利厚生やシステム開発を手掛けた。現代のライフスタイルに合わせた制度づくりと、職員が最大限能力を発揮できる環境の確立に尽力。こうした業務を通じて直面する課題は民間企業と共通する部分も多く、四国に来て地域の経営者と意気投合するきっかけにもなったという。

「マネージャーとして重視しているのは、人の立場に立って考える視点です。海外との交渉時、立場の違いが意見の違いになることを痛感し、それを糸口に解決に導けたこともありました。組織運営も同じで、各人の立場に立って得意な業務を任せていく適切な分配が組織力を高めると思っています」

初の四国赴任は新しい勉強のチャンス

大塚さんにとって、四国が初の地方都市勤務。「50歳を前に、一から学ぶことができるありがたい環境。四国は特定分野で世界シェアを誇る企業が多く、一分野に偏重しない安定感がある土地柄ですね。インバウンドで活気もあり、高いポテンシャルを感じます」

支店長の業務は、地域の経済・金融・行政と連携して地域の状況を把握するとともに、そのミクロ情報を日銀の政策・業務に反映して地域の発展に貢献すること。人事業務の経験から、組織運営のノウハウを生かして支店の環境充実も図りたいという。

「コロナ禍で抑えられていた需要が戻り、これが主に景気を引っ張っているのが現状ですが、所得と支出の好循環を維持して安定的な経済成長を目指すというのが日銀の政策です。支店のある高松は都市機能がコンパクトにまとまっていて多業種と交流しやすく、地域の方々にも温かく迎えていただいて、首都圏では見えないことを学ぶ絶好のチャンス。交流を通じて私自身も切磋琢磨していきたい」と語った。
子どもたちと一緒に趣味のスキーを楽しんだコロナ禍前の思い出

子どもたちと一緒に趣味のスキーを楽しんだコロナ禍前の思い出

戸塚 愛野

大塚 竜 | おおつか りゅう

略歴
1974年 東京都生まれ
1997年 東京大学法学部卒業
    日本銀行入行
2009年 政策委員会室企画役
2010年 国際局企画役
2013年 金融市場局企画役
2015年 財務省へ出向
2017年 総務人事局企画役
2018年 システム情報局
    日銀ネット構築運行課長
2020年 文書局総務課長
2022年 総務人事局総務課長
2023年 高松支店長

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