知らないことに出会うのが楽しい

三井物産四国支社長 神戸七郎さん

Interview

2022.01.20

22歳のころ、国際ジャーナリストである兄の赴任先、インド、バングラデシュ、ミャンマー、ベトナムなどを訪れ、取材に同行したことがある。難民キャンプなどを見て「世界ではこんなことが起こっている」と知った。違う文化や言語に触れ、刺激を受けた。「知らないことに出会うとワクワクする、調べたくなる。それが、世界で仕事ができる商社を選んだ理由の一つかもしれません」

入社後に配属された宇宙航空部では、航空機のリースや、国際宇宙ステーションにある日本実験棟で使用する部品の輸入業務などに携わった。「アポロ13計画に関わったNASAのOBと話ができたのは貴重な経験でした。折り鶴を教えたら『すごい』と感動していました」

ブラジルで海洋油田のプロジェクトに携わった際は、「時間の感覚の違いなどに最初はとまどいましたが、やっぱり人が魅力的で文化も興味深い。今までにない価値観に出会えるのが、仕事のおもしろいところです」

自信をもつが、慢心しない

アメフトの試合で

アメフトの試合で

大学時代、アメリカンフットボールに打ち込んだ経験が、仕事と向き合う際の気持ちの持ち方に影響を与えている。日々のほとんどの時間を費やし、レベルの高い練習を続けても必ず日本一になれるわけではない。「真剣にやっても100点取れないと思い知り社会に出たので、自信を持てるよう準備はしますが、慢心しないよう心掛けています」

信頼関係を築くために大切にしているのは、相手を知ること。製品、財務状況、業界での立ち位置、困っていることなどを理解し、将来の状況を予測しながらかゆいところに手が届く提案をする。「すぐに利益につながらないことも、お客さんに寄り添う。成功体験を一緒に積み重ねることで、さらに関係を深められると思います」

初の地方支社勤務

船舶の祝賀会にて

船舶の祝賀会にて

長く携わっていた船舶関連の部署で、四国の船主と仕事をした経験もある。ただ、地方支社に赴任したのは今回が初めてだ。新しい環境で「地方の現状」に興味をもち、自治体や地元企業を訪問、支社長としてできることを模索している。

「地域に働ける場所があり、望む水準の教育を子どもが受けられないと人は集まらない」。

進学などで大都市に行った優秀な人材が地域に帰ってくるには――。「コロナ禍を経て、地方で働きたい人は増えているはず。そういう人たちに向け、企業の発信力を高める必要があります」。例えば、保険システム、健康診断データ活用といったDX系の商材で、社員の健康づくりに力を入れている企業としてアピールできるようサポートする。CO2排出削減の具体的な提案をし、企業価値を高める。

人が集中する地域との教育格差が生まれないよう、人が少ない地域も高度な教育がオンラインで受けらけれる環境を整えるお手伝いをする。

「せっかく考える機会をいただいた。地域を知り、課題をしっかり理解した上で、時には自治体と企業とつなぐ。これまでの経験を生かし、役に立てることがあると思います」

石川恭子

神戸 七郎 | かんべしちろう

略歴
1967年 東京生まれ
1986年 私立麻布高校 卒業
1992年 京都大学文学部哲学科 卒業
    三井物産株式会社 入社
    宇宙航空部
1996年 中国修行生
1999年 自動車・船舶・宇宙航空本部 船舶海洋部
2009年 アジア・大洋州三井物産(株)
    シンガポール支店 船舶・航空室長
2013年 プロジェクト本部 プロジェクト開発第三部
    海洋エネルギー事業室長
2020年 モビリティ第二本部 輸送機械第三部長
2021年 四国支社長

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