四国で環境と経済の架け橋に

四国経済産業局 総務企画部長 水谷 努さん

Interview

2025.04.03

大学では華やかな反面厳しい活動ぶりで知られた応援部に所属。応援活動を通じて「人のために尽くす仕事が自分の道、より多くの人を幸せにしたい」と国家公務員を志し、4年生の冬までの部活一筋の日々から一転、「修行僧のような生活」と振り返るほど猛勉強。「自分を追い込み合格することができたのは、応援部で培った精神力の賜物だと思います」

時代の転換を現場で体験

2000年に省庁再編で環境省となる直前の環境庁に入庁。世界的に環境意識が高まった1990年代を経て、日本国内でも法整備や各省庁の環境関連施策の一元化が進んでおり、環境省の創設は省庁再編の目玉として期待を集めていた。

再編後の環境省では、豊島事件をはじめとする産業廃棄物不法投棄事案に対応する規制強化、今日のレジ袋有料化にもつながる「容器包装リサイクル法」の見直しや、水俣病問題の最高裁判決後の対応など、多くの重要な節目に担当としてかかわる。アスベスト健康被害問題が表面化した時は、水俣病対策の経験も踏まえ「労働問題の域を超えた環境・公害問題として環境省がやらねば」と、半年後の救済法成立に至る初動対応を主導した。「私の役人人生でも、最も密度の濃い一日でした」

その後は日本版グリーンニューディール政策とその柱である家電エコポイント制度など、経済分野にもかかわり始める。「リーマンショック後の経済を活気づけるため、短期間でダイナミックに物事を動かす必要があった時期。家電エコポイントは、環境省が経済政策にかかわり、環境対策を通じて経済活性化を図るシステムの発端ともいえます。社会にとっても省にとっても私にとっても転換点でした」。この動きはやがてカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー、ネイチャーポジティブを掲げる今の経済社会の流れに連なり、水谷さんは在外公館や自治体への出向を経ながらそうした構想の検討に政策の現場でかかわり続けてきた。

外からの目線を 四国で生かしたい

応援部の活動に打ち込んだ大学時代

応援部の活動に打ち込んだ大学時代

一方で、「なぜカーボンニュートラルやSDGsが必要なのか」「どう取り組むのか」を経済界に向けて発信するのは、経済産業省の役割が大きい。昨年7月、自ら希望し、初の地方勤務となる四国経済産業局に総務企画部長として出向。局全体のマネジメントと地方創生などの企画の責任者として、経産省の取り組みを支える役割を担っている。

「経済と環境が以前ほど対立概念ではなくなっても、完全に同調してしまうのも問題です。環境政策の意思決定に長年かかわり、経産省にとっても四国にとっても『外からの目線』を持つのが私の強み。地方経済のためにできることを私なりに打ち出すのが、交流人事の意義と考えています」。四国の重点産業を活かす環境対策や四国遍路などの文化的価値は、「地方創生」をキーワードに経産局と結びつく。こうした四国ならではの魅力にスポットライトを当て、関係省庁や都市部の取り組み・人とマッチングしながら、四国を中心に経済・文化と自然が一体化した新たなサイクルを生み出そうと模索する日々だ。

目下楽しみにしているのは、PRにも尽力してきた4月13日に開幕する大阪・関西万博。「各国の文化や環境分野を含む最新技術にふれる、またとない機会です。いろんな気づきに満ちた空間を、多くの人、特に若い世代に体験してほしいですね」

戸塚 愛野

水谷 努 | みずたに つとむ

略歴
1976年 東京都生まれ
早稲田大学法学部 卒
2000年 環境庁入庁
2010年 外務省 在ジュネーブ国際機関日本政府代表部
2014年 環境省 水・大気環境局放射性物質汚染対策担当参事官室
2015年 横浜市資源循環局
2017年 環境省 地球環境局総務課
2019年 同 環境再生・資源循環局総務課
2021年 原子力規制庁 長官官房総務課
2022年 環境省 環境再生・資源循環局 リサイクル推進室長
2023年 同 自然環境局 国立公園利用推進室長
2024年 四国経済産業局 総務企画部長

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