将棋で学んだ読みの大切さ

日本政策投資銀行 四国支店長 高柳 聖英さん

Interview

2013.10.17

現代アートの島々へ

着任から約4カ月。瀬戸内国際芸術祭の会場となった、小豆島と直島を訪れた。「穏やかな海景色に癒やされました。秋会期は、豊島にも行ってみたい」

あまり縁のなかった現代アートに親しむことも楽しいが、目的はほかにもある。「お客さんはどのような方々か、受け入れ側はどのように『おもてなし』しておられるのかにも、関心があります」

読書で人情に触れる

妻と2人の娘を東京に残して、単身赴任中だ。時間のあるときは読書をしている。よく読むのは、政治経済に関するものや歴史小説。池波正太郎の「仕掛人・藤枝梅安」や「剣客商売」が特に好きだ。「悪人の良心や善人の悪事など人間の二面性、人情の機微を描いているところが面白いですね。食べ物の描写もリアリティがあって、とってもおいしそうなんですよ」

高松への赴任後、20年以上前に買った本を読み返した。当時とは読み方が変わっていることが興味深かったそう。封をしたまま何回かの引っ越しを経た段ボール箱の中からは、さまざまな本が数十冊出てきた。

その中の一つ、塩野七生の「海の都の物語」はベネチア共和国の盛衰を描いたもの。「周囲に大国が台頭したり、大航海時代が到来したりと、苦戦を余儀なくされる状況で、優れた統治、耐え難きをも耐える冷静な外交、新たな産業の振興などにより、しぶとくベストを尽くす姿勢に強く引きつけられました」

教科書通りにいかない面白さ

「香川で対局できる場所を知りたいですね。将棋を指して思うのは、先を読むことが楽しみでもあり、苦しみでもあるということです」。小学生のころに覚えた将棋は、今でも趣味の一つだ。

東京本社で所属していた同好会では、女流棋士の本田小百合三段の指導を仰いでいた。「つい最近、ご結婚されたとの発表があり、うれしくなりました。心よりお祝い申し上げたいですね」

将棋は、まず「定跡」や「手筋」を理解することが重要だが、それだけでは通用しない。「選択肢は無数にあるが、勝てる手段はひと握り。砂浜で一粒の砂を見つけるようなものだ」という趣旨の、日本将棋連盟の故米長邦雄前会長の言葉がいつも心に浮かぶ。「有益な情報をうまく使い、最後は自分の頭で考える。仕事も同じですかね」

駒のうち、活躍していない「遊び駒」があると勝てない。全ての駒をそれぞれの特性に応じて有効活用することが勝つためのポイントだとか。「これも仕事と似ている気がします。一人ひとりが、個性を生かしながら持てる力を精いっぱい発揮してこそ、組織の能力は最大になると思います」

経済の幅広い分野に携わりたいと、金融機関を志望した。独自の着眼点を持つ企業と関われることが面白い。四国のニッチトップ企業との仕事も楽しみだ。

元・日本政策投資銀行 四国支店長 髙柳 聖英

略歴
1964年10月11日 静岡県生まれ
1987年3月 東京大学法学部 卒業
1987年4月 日本開発銀行 入行
2003年3月 日本政策投資銀行総務部 課長
2005年6月 審査部 課長
2008年10月 株式会社日本政策投資銀行審査部 課長
2010年6月 審査部 次長
2011年5月 企業金融第3部 次長
2012年4月 審査部 担当部長
2013年6月 四国支店長

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