
マルナカのフランチャイズ店を4店舗、38年間も経営していた(株)ミワ商店社長の三輪良平さん(65)は、リスクを覚悟でイオン傘下のマルナカから独立した。
店が繁盛するのは値段の安さだけではない。購買心理はアートに魅了される心の動きに似ている。「わくわくドキドキ」の買い物が楽しめるスーパーマーケットを目指して「ピカソ」を開店した。
ピンチを商売人の才覚で切り抜け、店に新しい役割を与えるチャレンジが始まった。
POSレジ
販売時点・単品ごとに販売情報を収集して分析するレジスターシステム。
独立してもしなくても1億円

フランチャイズの4店舗も、新しいPOSレジにするのに約5千万円、年間のメンテナンス料に1千万円弱、さらにフランチャイズ契約料が要る。
独立すると、マルナカのPOSレジに代わる投資が必要だ。それに、店名の変更で看板の書き換えなどの諸経費もかかる。マルナカに残るにしろ離れるにしろ1億円ほどの投資が必要だ。
生きることは商売をすること
「私にとって商売は生きる証です。呼吸と同じです」。店を売ることは全く考えなかった。去年10月、いつ何が起きるか分からないのが商売の常だと覚悟を決めた。今年2月末、マルナカとの契約を終了。3月、「ピカソ」を開店した。
「マルナカの強さ」を強化
マルナカの経営方針は、「お客さんが喜ぶことならええ・・・・・・」だった。店長に権限を委譲する。だから店ごとにやり方が違っていた。それが、マルナカの強さだった。
フランチャイズ店でありながら、独自に品ぞろえをしてきた三輪さんは、「ピカソで、お客さんの喜びをもっと高めたい」と、自分の決断に自信を深めている。
PB商品にない「こだわり食材」を

毎朝、三輪さんが地元の魚市場で仕入れる仁尾沖でとれた魚
県内の酪農家と契約して飼育したピカソポーク
「PB商品は画一的で、お客さんの選ぶ楽しみは少ない」と見る三輪さんの対抗策は、新鮮で安全な地元産やこだわり食材の品ぞろえだ。
仁尾沖でとれる新鮮な魚、県内の酪農家と契約して飼育した豚肉「ピカソポーク」や庄内半島を望む牛舎で潮風をたっぷり浴びて育った「庄内潮風牛」。
冷凍生地を使わず、フランス産の小麦粉を手でこね上げ、発酵に6時間以上かけて焼くスクラッチ製法のパン・・・・・・。「買う楽しさがいっぱい」の店づくりを目指している。
店名「ピカソ」に300万円
キャッチコピー「ピカッと光るスーパーマーケット」や、店名の「ピカソ」は、ブランディングやネーミングの専門会社(株)TCDのアイデアだ。去年11月初めに依頼して、翌月12月28日に提案された。
「マルナカから独立する事情や、『わくわくドキドキ』、『旬』、『色気』など新しい店のイメージをクリエイターに話したら、面白がって形にしてくれました」
TCDは、「コクヨ」のブランドメッセージや「アシックス」社名を開発した神戸の会社だ。ネットを検索して見つけた。
店名や看板、包装紙、買い物袋、名刺などのデザイン、キャッチコピーまで含めた製作費は300万円。
デザインやことばの付加価値をお金に換算するのは難しいが、アートに影響される心の動きに着想して、「色気」や「旬」に購買心理の居場所を見る三輪さんには価値のある買い物だった。
独立で社員がプライドを持った
イオン傘下のマルナカから独立して、同業者や問屋の見る目が違ってきた。仕事は増えたが、社員はピカソのバイヤーとしてプライドを持って商売し始めた。
商売人を育てる
高校を出て、飲食業をやりたいと大阪の寿司屋の丁稚奉公に入り、以来40年以上を食に携わってきた。伯父で「川福」創業者(故)竹川二矩男さんや「かな泉」の泉川賢さん、マルナカの代表取締役会長だった中山芳彦さん、ミワ商店先代社長の三輪彊(つとむ)さんに商売を仕込まれた。
「今度は私が次の世代に商売を教える番です」。そのためにもピカソを成功させるのだ。
川福、かな泉
さぬきうどんの老舗。両店の暖簾分けで多くの評判うどん店が輩出した。
◆写真撮影 フォトグラファー 太田 亮
三輪 良平 | みわ りょうへい
- 1948年 丸亀市生まれ
1966年 松山商業卒業、大阪の寿司屋へ就職
1973年 ミワ商店入社(三輪眞理子さんと結婚して入婿)
1989年 代表取締役に就任
- 写真
株式会社 ミワ商店
- 所在地
- 三豊市詫間町詫間6784-49
TEL:0875-83-9191 - 店舗
- 「スーパーピカソ多度津店」
仲多度郡多度津町本通2-4-33
TEL:0877-32-3100
「スーパーピカソ詫間店」
三豊市詫間町詫間6781-2
TEL:0875-83-5590
「スーパーピカソ浜田店」
三豊市詫間町詫間松本6813
TEL:0875-83-3848
「スーパーピカソ三野店」
三豊市三野町下高瀬985-8
TEL:0875-73-5670 - 営業時間
- 9:00~22:00
- 定休日
- 無休
- 確認日
- 2018.01.04
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