地域でピカッと光る スーパーを!

ミワ商店 社長 三輪 良平さん

Interview

2013.10.17

2011年11月、マルナカはイオンの子会社になった。小売業界をリードし、規模を拡大する巨大企業のPOSレジに組み込まれると、店の将来を自分では決められない。

マルナカのフランチャイズ店を4店舗、38年間も経営していた(株)ミワ商店社長の三輪良平さん(65)は、リスクを覚悟でイオン傘下のマルナカから独立した。

店が繁盛するのは値段の安さだけではない。購買心理はアートに魅了される心の動きに似ている。「わくわくドキドキ」の買い物が楽しめるスーパーマーケットを目指して「ピカソ」を開店した。

ピンチを商売人の才覚で切り抜け、店に新しい役割を与えるチャレンジが始まった。

POSレジ
販売時点・単品ごとに販売情報を収集して分析するレジスターシステム。

独立してもしなくても1億円

POSレジは、「いつ・どの商品が・どんな価格で・いくつ売れたか」を知るため、スーパーマーケットに欠かせない設備だ。マルナカは親会社イオンのシステムに変えるために、全店で約20億円かけたといわれている。

フランチャイズの4店舗も、新しいPOSレジにするのに約5千万円、年間のメンテナンス料に1千万円弱、さらにフランチャイズ契約料が要る。

独立すると、マルナカのPOSレジに代わる投資が必要だ。それに、店名の変更で看板の書き換えなどの諸経費もかかる。マルナカに残るにしろ離れるにしろ1億円ほどの投資が必要だ。

生きることは商売をすること

2年ほど前からマルナカとイオンの動きを知った。悩んだ。独立店になると発注単位が少なくなるから、納入業者との取引は不利だ。マルナカでも、マルヨシやハローズやゆめタウンでもない、魅力ある店にならないと存続できない。

「私にとって商売は生きる証です。呼吸と同じです」。店を売ることは全く考えなかった。去年10月、いつ何が起きるか分からないのが商売の常だと覚悟を決めた。今年2月末、マルナカとの契約を終了。3月、「ピカソ」を開店した。

「マルナカの強さ」を強化

「最初はどうなることかと思いましたが、ピカソの規模に合う問屋さんもいて順調に商品が入っています。新しい大手問屋さんとの取引も出来ました」

マルナカの経営方針は、「お客さんが喜ぶことならええ・・・・・・」だった。店長に権限を委譲する。だから店ごとにやり方が違っていた。それが、マルナカの強さだった。

フランチャイズ店でありながら、独自に品ぞろえをしてきた三輪さんは、「ピカソで、お客さんの喜びをもっと高めたい」と、自分の決断に自信を深めている。

PB商品にない「こだわり食材」を

毎朝、三輪さんが地元の魚市場で仕入れる仁尾沖でとれた魚 県内の酪農家と契約して飼育したピカソポーク

毎朝、三輪さんが地元の魚市場で仕入れる仁尾沖でとれた魚
県内の酪農家と契約して飼育したピカソポーク

「トップバリュ」はイオンのプライベートブランド(PB)商品だ。PB商品は、「低価格・低品質」から「高価格・有機栽培品」まで多様化しているが、まだ商品の種類が少ない。PB商品シェアの拡大は、大手スーパーの重要な戦略課題だ。

「PB商品は画一的で、お客さんの選ぶ楽しみは少ない」と見る三輪さんの対抗策は、新鮮で安全な地元産やこだわり食材の品ぞろえだ。

仁尾沖でとれる新鮮な魚、県内の酪農家と契約して飼育した豚肉「ピカソポーク」や庄内半島を望む牛舎で潮風をたっぷり浴びて育った「庄内潮風牛」。

冷凍生地を使わず、フランス産の小麦粉を手でこね上げ、発酵に6時間以上かけて焼くスクラッチ製法のパン・・・・・・。「買う楽しさがいっぱい」の店づくりを目指している。

店名「ピカソ」に300万円

「売り物は旬です。旬を店に並べることが出来ればお客さんは買う気になります」。魚は三輪さんが地元の魚市場で毎朝仕入れる。鮮度のいい魚は200円、鮮度がいまいちの魚は100円。ピカソは、鮮度を200円で買うお客さんを重視する。

キャッチコピー「ピカッと光るスーパーマーケット」や、店名の「ピカソ」は、ブランディングやネーミングの専門会社(株)TCDのアイデアだ。去年11月初めに依頼して、翌月12月28日に提案された。

「マルナカから独立する事情や、『わくわくドキドキ』、『旬』、『色気』など新しい店のイメージをクリエイターに話したら、面白がって形にしてくれました」

TCDは、「コクヨ」のブランドメッセージや「アシックス」社名を開発した神戸の会社だ。ネットを検索して見つけた。

店名や看板、包装紙、買い物袋、名刺などのデザイン、キャッチコピーまで含めた製作費は300万円。

デザインやことばの付加価値をお金に換算するのは難しいが、アートに影響される心の動きに着想して、「色気」や「旬」に購買心理の居場所を見る三輪さんには価値のある買い物だった。

独立で社員がプライドを持った

フランチャイズの加盟店は、店の名前から品ぞろえまで、ブランド価値をまるごと提供してもらえるから、安定した経営が期待できた。しかし店の立場は、契約料を払う下請けみたいなものだった。

イオン傘下のマルナカから独立して、同業者や問屋の見る目が違ってきた。仕事は増えたが、社員はピカソのバイヤーとしてプライドを持って商売し始めた。

商売人を育てる

「商売は面白いぞ。ピカソを多くの人に知ってもらおう。色気のある売場で旬の商品を売ろう。家族のために成果を出そう」。三輪さんは社員たちに呼びかける。

高校を出て、飲食業をやりたいと大阪の寿司屋の丁稚奉公に入り、以来40年以上を食に携わってきた。伯父で「川福」創業者(故)竹川二矩男さんや「かな泉」の泉川賢さん、マルナカの代表取締役会長だった中山芳彦さん、ミワ商店先代社長の三輪彊(つとむ)さんに商売を仕込まれた。

「今度は私が次の世代に商売を教える番です」。そのためにもピカソを成功させるのだ。

川福、かな泉
さぬきうどんの老舗。両店の暖簾分けで多くの評判うどん店が輩出した。

◆写真撮影 フォトグラファー 太田 亮

三輪 良平 | みわ りょうへい

1948年 丸亀市生まれ
1966年 松山商業卒業、大阪の寿司屋へ就職
1973年 ミワ商店入社(三輪眞理子さんと結婚して入婿)
1989年 代表取締役に就任
写真
三輪 良平 | みわ りょうへい

株式会社 ミワ商店

所在地
三豊市詫間町詫間6784-49
TEL:0875-83-9191
店舗
「スーパーピカソ多度津店」
仲多度郡多度津町本通2-4-33
TEL:0877-32-3100

「スーパーピカソ詫間店」
三豊市詫間町詫間6781-2
TEL:0875-83-5590

「スーパーピカソ浜田店」
三豊市詫間町詫間松本6813
TEL:0875-83-3848

「スーパーピカソ三野店」
三豊市三野町下高瀬985-8
TEL:0875-73-5670
営業時間
9:00~22:00
定休日
無休
確認日
2018.01.04

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