日本の物流を支える責任。だからこそ徹底した安全意識で取り組む

香川県トラック協会 会長 楠木 寿嗣さん

Interview

2010.04.01

日本国内の貨物輸送量は年間約54億トンに上る。この約90%がトラックによる輸送だということをご存じだろうか。香川県トラック協会には現在、県内の80%にあたる約560の事業者が加盟し、1万1500台の営業用トラックが「物流」を担っている。

「物流」・・・・・・日常的によく聞く言葉だが、農作物から工業部品や製品、それに我々がよく利用する宅配便、そして通販商品。その物流の中身は多種多様だ。これらを確実にそして安全に日本全国に届ける。トラック輸送の担う社会的な役割は大きい。しかし、燃料費の高騰や景気の悪化による貨物そのものの減少。廃業する会社も出てきている。

「厳しい状況の中だからこそ、今、必要なのは安全に荷物をお客様に届けること。そのためにドライバーの交通安全意識の徹底に全身全霊をかけて取り組みたい」。香川県トラック協会の楠木寿嗣会長は話した。

物流を支える業界の現状

1年に約10円、5年間かけてじわじわと上がってきた燃料費が、一昨年の夏、一気に40~50円上がった。運送会社の経営を直撃した。そして次は、景気の悪化。運ぶ荷物が平均で2~3割、多いところでは6割も減ったそうだ。香川県トラック協会に加盟する運送業者もこの5年間で20社ほど減った。国民の生活を支えるライフラインともいえる業界でありながら、その取り巻く環境は厳しい。これは運賃ダンピングを激化させ、運送に携わるドライバーの労働条件の悪化という結果を招く。

トラック協会は、加盟事業者同士の連携と協調を高め、社会的、経済的な地位向上を図るために設立されたものだ。

厳しい状況の中、改めて協会の果たすべき役割が重要になってきている。

驚くほど良くなったトラックの性能

「昔は1人前になるまで3年はかかると言われていましたが、今では免許を取ればその日から東京、大阪まで荷物を運べますよ」。

かつて今ほど道路事情が良くない時代。大型トラックの運転にはセンチ単位の車幅感覚など職人的な技術が必要だった。それが今ではバックモニターやセンサーなど電子制御による安全装置に、エアサスペンションなどトラック自体の性能が飛躍的に向上した。ほとんど普通乗用車の感覚で運転できるそうだ。この事は、若い人がこの仕事を始め易くした。ただ、裏を返せばこの厳しい状況の中で、こうした高性能のトラックでなければ若いドライバーを確保する事ができないという一面もある。

改めて求められる安全への取り組み

ドライバーの労働環境と安全性は向上した。実際、トラックの事故も減ってきているそうだ。しかし、車体が大きいだけに一つの事故が悲惨な結果をもたらす。その原因は、トラックの性能に頼ったドライバーの油断と普通乗用車のような運転のしやすさからくる錯覚だそうだ。

「だからこそ、今、ドライバーの交通安全教育に取り組む必要があるんです」と楠木さんは言う。香川県トラック協会では、加盟事業者に呼び掛けて「一般乗務員初期講習会」や初任運転・事故惹起運転者に対する講習会などを定期的に開いている。ここでは運転シミュレーターなどを使って安全運転の技術と意識を徹底しようというもので、全国でもここまでの取り組みをしているトラック協会はそう多くない。

トラック協会の役割

「スピードは出さない。車間距離は十分に取る。といった呼びかけだけでは事故防止には繋がりません。なぜ事故が起こったのか、原因を知ることが本当の安全運転につながるのです」。

ただ、協会に加盟する会社は大小様々だ。小さな会社では、事故防止のための安全教育といっても物理的に限界がある。そこで楠木さんは将来、協会の中に、事故を分析し原因を調査する専門の担当者を置き、各社に調査結果を説明しながら指導・教育を行う仕組みを作りたいと考えている。より具体的な事例に基づいた事故防止と安全意識の徹底、そしてシミュレーターなどを使った技術講習。これこそが香川県トラック協会の果たすべき役割だという想いだ。

日本の物流の90%以上を支えるトラック輸送。この機能が失われれば国民の生活はその日から成り立たなくなってしまう。それだけ社会的な責任は大きい。だからこそ・・・・・・。

「トラックのドライバーが模範になって交通事故を無くしていきたい。安全運転の徹底のために協会として全身全霊をかけて取り組んでいきたい」と楠木さんは語った。

楠木 寿嗣

一般社団法人 香川県トラック協会

住所
香川県高松市福岡町3-2-3
代表電話番号
087-851-6381
設立
1964年
事業内容
トラック輸送事業
沿革
1964年 8月1日 設立
地図
URL
http://www.kagawa-truck.jp/
確認日
2010.04.01

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