トマト、ダイコン、ジャガイモなど、1年間を通じて同じ野菜が並びます。この要因として、ハウス栽培の普及や品種改良など、いろいろな理由が挙げられます。でも、それ以上に重要な要素があります。
例えばジャガイモ。春先は鹿児島県をはじめとする温暖な九州の産地からの出荷があり、そこから徐々に北へ移動し、最終的に北海道産が秋から次の春までをピークに出荷されます。このような事例は多くの青果物に見られ、全国の産地が適期適作を基本とし、次の産地へとうまくバトンタッチをすることにより、1年間変わることなく野菜が店頭に並びます。これがいわゆる「産地のリレー」です。
実は、県内産地でも「産地のリレー」があり、その代表的な品目がエンドウマメです。4月中旬、高松市中央卸売市場には、地場のキヌサヤ、スナップエンドウなどのエンドウマメが姿を現します。これらのマメは、讃岐平野ではなく、瀬戸内海に浮かぶ女木島、男木島で生産されたものです。瀬戸内海の島は平野部よりも温暖な瀬戸内海性気候であり、平野部に先駆けて豆類の出荷が始まります。続いて5月の連休が近くなると、平野部のマメの出荷が本格的に始まりますが、5月も後半、気候が夏めいてくるとマメの木(弦)は枯れ始めます。この時期の出荷を支えているのが、高松市塩江町などの涼しい山間部で生産されたマメ類なのです。
日本一狭い香川県ですが、南北に約40キロメートルあり、北は温暖な島嶼部から、平野部、そして南は標高1000メートルの讃岐山脈に連なる高冷地と、3種類の気候帯を使い分けて美味しい青果物が流通する仕組みが組まれているのです。
全国的なレベルだけでなく、県内においてもエリアごとに時期をずらし作物を生産する「産地のリレー」が組まれています。このシステムにより、私たちは美味しい地場産の野菜を長い期間にわたり食べられるのですね。そして、その流通のお手伝いをするのが卸売市場の大きな役割なのです。
【豆知識】スナップエンドウ
ワンポイント
(1)先の方から背の部分の筋を取ります。
(2)続いて付け根の方から腹側の筋を取ります。
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん
- 写真
おすすめ記事
-
2017.05.18
中央卸売市場の働き ~卸売業者と仲卸業者~
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸
-
2017.04.20
卸売市場の役割について
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸
-
2016.03.17
食文化を支える卸売市場流通
野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸
-
2023.08.03
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑰
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.07.06
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑯
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.06.01
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑮
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.05.04
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑭
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.04.06
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑬
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.03.02
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑫
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.02.02
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑪
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸
-
2023.01.05
「讃岐の食文化」の素朴な疑問⑩
野菜ソムリエ上級プロ 末原 俊幸