食文化を支える卸売市場流通

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸

column

2016.03.17

高松市中央卸売市場の朝の風景

高松市中央卸売市場の朝の風景

食文化が維持されていくためには、素材が生産されること、使いこなす文化が伝承されることの他に、その素材を生産者から利用者に届ける「流通」の存在を欠かすことは出来ません。これまでの連載の締めくくりとして、流通という観点から讃岐の食を考えてみましょう。

全国に無数の食文化があり、まだまだ現存するもの、中には既に消滅してしまったものもあります。私は食文化の消滅は食材が一般の店舗で手に入らなくなった時、と定義しています。

例えば、郷土野菜「マンバ(高菜)」を使った讃岐を代表する食文化である「マンバのけんちゃん(おせっか)」。香川県にいて「マンバのけんちゃんを食べたい」と思ったら、近所のスーパーに行くとマンバが手に入り、いとも容易に調理することが出来ます。これが健全な食文化であると考えています。

また、早春の食材である葉ゴボウ。葉ゴボウが普通に収穫されるのは早春の時期に限定されるのですが、生産現場では11月から4月にかけて出荷出来るように栽培方法に工夫を凝らしています。その商品は、高松市中央卸売市場をはじめとした県内各所にある卸売市場に出荷され、県内の販売店や飲食店へ売り渡されることにより、私達が欲しい時に手に入れられるという環境が整備されています。

さらに、全国一狭い香川県には全国に誇る物流インフラ(道路舗装率と道路密度)が整備されています(別表)。県内で生産された、特徴的な野菜は県内各所の卸売市場を経由し、スーパーや八百屋を通じて瞬く間に末端実需者のもとへ届けられます。これは、どこの県が真似しようにも出来ない香川県のみに許された特権とも言えましょう。

今日も、高松市中央卸売市場には讃岐の食文化を構成する特徴のある食材が入荷され、早朝のせり終了とともに県内の店舗へ配送され、皆様の食卓に買われていくことを待っているのです。

春夏秋冬そして初夏という5つの旬、旬ごとに移り変わる食材の生産、食材に連なる食文化の存在、食材の供給を支える市場流通。全ての条件を兼ね備えた讃岐の食文化は、今もなお力強く生命力を発しているのです。ややもすれば、その力強さは日本一とも表現しても過言では無いと言えましょう。

葉ゴボウの炊いたん

葉ゴボウのたいたん

葉ゴボウのたいたん

早春を代表する讃岐の食材「葉ゴボウ」。ゴボウの茎(正確には葉柄)を食すという全国でも稀な文化です。下ゆでした葉ゴボウを油揚げと炊き合わせていただきます。

野菜ソムリエ 上級プロ 末原 俊幸さん

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