「運送」「倉庫」 二本柱で物流を担う

四国牛乳輸送 社長 来代 啓介さん

Interview

2021.03.18

1月から稼働する坂出物流センター。 1万1000tの保管能力を持ち、 最大-30℃まで温度をコントロールできる=坂出市江尻町

1月から稼働する坂出物流センター。
1万1000tの保管能力を持ち、
最大-30℃まで温度をコントロールできる=坂出市江尻町

“箱”と“足”で相乗効果を

冷凍食品などを保管する巨大な倉庫が坂出市に誕生した。敷地面積約1万㎡、保管能力1万1000tを誇る四国牛乳輸送の物流センター。今年1月に稼働を始めた。「大きな投資なので不安はある。でも、思い切って勝負に出ました」。来代啓介社長(46)は力強く語る。

四国牛乳輸送は、チルド食品や冷凍食品を全国の拠点まで届け、四国では乳製品などの食品をスーパーやコンビニに届ける運送会社。しかし、来代さんは3年ほど前から危機感を抱いていた。「輸送費の価格競争は年々激しくなっている。このまま無理して競い続けても将来は明るくない」

日頃から食品メーカーと付き合う中で、感じることがあった。「メーカーさんは商品をたくさん作りたくても、保管場所がないと製造ラインを止めざるを得ない。倉庫があれば、工場の稼働率をもっと上げられるはず」

そこで決意した。商品ができ上がってから出荷されるまでの間、保管して管理する「倉庫業」への進出だ。これまで一緒に歩んできた食品メーカーと今後も共存していくために、「倉庫を持つことで、お互い『WIN-WIN』になれると思っています」

倉庫業界では「“背の高い棚”を持っているかどうか」が重要になる。一般的な棚の高さは1段で1.5m程だが、四国牛乳輸送では1.9mに設定。保管能力のアップに加え、商品が入った段ボール箱を、より高く積み上げて一度に収納できるため、作業効率が大幅に向上する。また、冷凍倉庫は最大-30℃までの徹底した温度管理が可能で、「香川は元々、全国でも有数の冷凍食品メーカーが多い地域。その強みをできるだけ生かしたいと思っています」。そして、さらに大きな強みがある。「足」だ。

倉庫業とは、顧客から届いた荷物を受け取り、保管・管理する事業。「基本的には預かるだけなので、トラックは必要ありません」。しかし、運送会社の四国牛乳輸送には、そのトラックがある。顧客の元まで荷物を取りにも行けるし、目的の場所まで届けることもできる。「“箱”と“足”を持つ私たちならではのやり方で相乗効果を生み出し、お客様に喜んでもらいたいと思っています」

ドライバーから社長へ

全国を駆ける四国牛乳輸送のトラック

全国を駆ける四国牛乳輸送のトラック

かつては陸上競技の県内トップ選手だった。走り幅跳びが専門で、中学・高校時代には四国1位に。「目標は日本一と、オリンピック出場でした」。しかし、高校2年の時、太ももの筋肉を痛め、競技を断念。「体を使うのが好きだったので」大型自動車の免許を取り、四国牛乳輸送のトラック運転手になった。四国牛乳輸送は1956年に来代さんの祖父が立ち上げた会社で、当時は父が社長だった。「全国を走り回るのは楽しくて、ドライバーをずっと続けるつもりだった。社長を継ぐ気は全くありませんでした」

ドライバー仲間とはよくおしゃべりし、愚痴り合うことも多かった。「仕事がきつい」「もっと給料が上がらないかなあ」……休憩時間のいつもの一コマ。ある時、ふと思った。「頑張っているドライバーの労働環境を変えるには、“中”に入るしかない」

26歳でトラックを降りた。経営を学び、入社10年目の2006年に取締役に、5年前に3代目の社長になった。「社員が快適に働ける環境をつくるのが私の使命だと思っています。ただ、『ドライバーの気持ちが分かり過ぎる』ので、経営とのバランスを取るのが大変です」。来代さんは苦笑する。

日本全国をターゲットに

敷地面積約1万㎡の広大な物流センター。 高松道・坂出ICまでは約4km

敷地面積約1万㎡の広大な物流センター。
高松道・坂出ICまでは約4km

コロナ禍でも、スーパーやコンビニには当たり前のように商品が並んでいる。ECサイトで注文すれば、手元にすぐ商品が届く。「“物流”というのは、縁の下で暮らしを支える大切な仕事。それをもっと世の中の人に分かってほしいし、何とかして物流の社会的な地位を高めたい」と口調を強める。「つらいことも多い仕事なので、社員には『自分たちは本当に社会に貢献しているんだ』という自信と誇りを持ってもらいたいんですよね」

“四国牛乳輸送”という社名は、設立当時、森永乳業専属の配送会社だったため。だが、20年程前から取引先も広がり、様々な食品を扱うようになった。「実態と合わなくなったので、何度か社名を変えようと思ったんですが……業界内で “YONGYU(四牛)”という愛称がすっかり定着し、タイミングを逃してしまいました」と笑顔で話す。「私自身、“YONGYU”に愛着たっぷりなんです」

真新しい物流センターは、高松自動車道の坂出ICから4km程。さらに近い坂出北ICは、今は本州方面のみのハーフICだが、3年後にはフルインター化される。「立地は抜群で、運送業で築き上げたネットワーク網も強力な武器になる」と目を輝かせる。「『運送』と『倉庫』の二本柱で、日本全国をターゲットにした物流拠点を目指したいと思っています」

篠原 正樹

来代 啓介|きただい けいすけ

略歴
1974年 高松市出身
1993年 高松北高校 卒業
1996年 四国牛乳輸送株式会社 入社
2006年 取締役室長
2016年 代表取締役社長

四国牛乳輸送株式会社

住所
香川県高松市十川東町2017-1
代表電話番号
087-814-6612
設立
1956年4月13日
事業内容
常温から冷凍までの食品輸送
四国内の配送・北海道沖縄を除く全国輸送
資本金
1560万円
地図
URL
http://yongyu.jp/
確認日
2021.03.18

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