生活を豊かにする地域の事業者を支えたい

日本政策金融公庫高松支店長 田所誠治さん

Interview

2020.11.05

休日も街歩き。石清尾八幡宮で

休日も街歩き。石清尾八幡宮で

香川出身で、今年8月の異動で故郷に赴任した。「帰省するたびに少しずつ街が変わっていて、高松駅も瓦町駅もきれいになったなと思っていました」。一方で、中心部の空洞化、人口減少といった課題も感じた。思い入れのある街で、地域の活力維持に尽力したいという。

入社は統合前の国民金融公庫だった。小規模事業者への融資が主な業務で、社長と直接会って経営についての考えを聞くのがおもしろかった。「すべての企業が事業を拡大して売り上げを伸ばし続けることを目指しているわけではない」。家族経営の小さなお店は、そこに集まるお客さんたちの生活を豊かにしてくれる。そんな事業者には、長く事業を続けられるようサポートすることで地域が元気になると考えている。

サポートする上で大切にしているのは現場。街の雰囲気、融資先の事業者の様子をできるだけ出かけて確かめる。「散歩が趣味で、赴任先でよく街を歩きました。現場を見ていると資料の理解が全く違う。百聞は一見に如かず、です」

資金だけではない支援を

コロナ禍の中、小規模事業者を支える政策金融機関としての役割がますます重要になっていると感じている。2018年度は、融資申し込み件数が全国で約31万件に対し、コロナ関連の融資は今年、9月末ですでに約73万件。香川でも、約3万社あるといわれる企業に対して約5000社から融資の申し込みがあった。「売上の落ち込みが大きい上、影響を受けている業種が広範囲にわたっている点がリーマンショックの時との違いです」

事業者は一時的な対応ではなく、新しい生活様式に合わせたビジネスを考える必要があるという。そこで、「これまでは迅速に融資することに重点をおいてきましたが、事業者の課題に合わせた情報提供にも力を入れていきたい」。現在、コロナ禍の中でも新たなビジネススタイルを確立した事例を全国の支店で集め、発信する取り組みを進めている。「全国組織で事例が多く集まるのも公庫の強み。融資だけではない価値を見出していただければ」

新たなビジネスの種

故郷で改めて観光地やうどん店へ

故郷で改めて観光地やうどん店へ

ビジネスのあり方が、大きく変わるといわれている。店舗を構え投資をして起業するのではなく、自分の好きな分野でネットを使って小さく始めるケースも増えている。ソーシャルビジネスへの支援も、最近の取り組みの一つ。ビジネスで地域の社会的課題を解決するのがソーシャルビジネスで、介護、育児などの分野で女性の創業者が多いのが特徴だ。

「先日も、障がいのあるお子さんをもつ女性の創業を支援しました。ソーシャルビジネスは、一般的な融資が受けづらい場合もあると思いますが、社会性の高い事業は地域に必要。それを支えるのも私たちの使命です」

地域の事業者を支えるという意味では、創業支援や事業承継といった事業もコロナ禍対応も目的は同じ。「事業者のニーズをじっくり聞いて、公庫のさまざまな支援策を活用して故郷の役に立ちたいですね」

石川恭子

田所 誠治 | たどころ せいじ

略歴
1967年 高松市生まれ
1986年 香川県立高松高校 卒業
1990年 広島大学経済学部 卒業
    国民金融公庫(現 日本政策金融公庫)入庫
    大阪南支店配属
2010年 新宿支店融資第一課長
2013年 東京地区業務検査室 室長
2015年 リスク管理部 検査企画グループリーダー
2017年 山口支店 支店長
2020年 高松支店 支店長

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