“オムニ化”で寄り添い 暮らしを豊かに

西村ジョイ 社長 西村 久さん

Interview

2020.11.05

西村ジョイ成合店の木材コーナー=高松市成合町

西村ジョイ成合店の木材コーナー=高松市成合町

大切なのは「人」の力

ガーデンコーナー

ガーデンコーナー

中四国で11店舗を展開するホームセンター「西村ジョイ」。社長の西村久さん(52)は今、新たな試みにチャレンジしている。「オムニチャネル化」だ。

実店舗やオンラインショップ、イベントやカタログなど、顧客との接点は多岐にわたる。「オムニチャネル」とは、これら各チャネル全て(オムニ)を一元的に管理し販売促進などにつなげる戦略のこと。西村さんは、一元管理するための「スマートフォンアプリ」を開発し、合わせて、システム部、販売促進部など複数の部署を「業務・オムニチャネル改革推進部」に統合した。今月22日、“オムニ化”は本格始動する。「必ずうまくいくと確信しています」

オムニ化するとどうなるのか。先日、業界では初めてとなる「フルセルフレジ」を導入した。お客さんはアプリをインストールしたスマホから商品を注文。レジ待ちすることなく、“ピックアップステーション”でスピーディーに商品を受け取れる。アプリではリアルタイムの在庫状況も確認でき、もし在庫が無ければ他の店舗から速やかに取り寄せて対応。また、従業員も商品情報をスマホで検索し、「この商品を購入するなら、こんな関連商品が必要になる」「この商品を購入したお客さんからは、こんな声があがっている」など商品について、より詳しく説明や提案ができるようになる。「これまではお客さんに対して、できていないことがたくさんあった。いいものをきちんと示すことができれば、お客さんの暮らしをもっと向上させられる」と西村さんは自信を見せる。だが一方で、「オムニ化は華々しいものでもなれけば、それほど簡単なものでもない」と強調する。「やはり大切なのはマネジメントや接客など“人の力”。デジタルの力を借りながら、これまで以上にお客さんに寄り添っていかなければなりません」

業界の常識を打破

ペットコーナー

ペットコーナー

ホームセンター大手の島忠(さいたま市)を巡る“買収争奪バトル”が注目を集めている。20年前、全国に約400社あったホームセンターは今200社ほどに減っているという。「業界再編の動きに人口の減少……10年後には20~30社くらいになるのではと思っています」

生き残りをかけ、西村ジョイでは10年ほど前に大改革に着手。暮らしに関するあらゆるものを網羅する一般的なホームセンターから、「木材」「ガーデン」「ペット」の3部門を軸とした商品構成へと舵を切った。「木や動植物など扱うのは主に“生きもの”なので手間ひまがかかる。でも、効率化を求める大手がこぞって縮小させている部門。あえて、そこを狙いました」。掲げたのは「独自性」。他には真似のできない店づくりを目指し、「業界の常識を打ち破りました」

中でも力を入れるのが「木材」だ。店舗を「プロショップ」と呼び、建築業者や職人に向けた“プロ仕様”の品揃えを充実させた。「ホームセンターは通常、職人さんが足りない材料を補充に訪れる程度のもの。でも今は“足らず買い”ではなく、”主要な仕入れ先”の一つとしてとらえてもらえるようになりました」

とは言え、軌道に乗せるのは簡単ではなかった。商品知識も経験も豊富なプロの職人さんに“お得意様”になってもらわなければならない。「最初は相手にもしてもらえませんでした」。従業員に求めたのは“365日攻めの営業”。「知識も必要、現場も知らなければならない。つらかったと思うが、みんな粘り強くやってくれました」。次第に話を聞いてもらえるようになり、プロ業者・職人さんとの取引も増えていった。やがて商品の回転率は2倍以上にアップ。「木材」は全店舗を牽引する高収益部門に育った。

「20年間、悩み続けた」

西村ジョイのルーツは、祖父・清勝さんが1935年に創業した西村木材。2代目の父・泰昌さんが75年に県内初のホームセンター「DIYジョイ」(現・西村ジョイ)を立ち上げた。

後を継ぐべく西村さんは28歳で入社したが、「自分には何ができるのか、会社はこのままでいいのか……実は20年くらい悩み続けていた」と打ち明ける。そんな時に出合ったのが、京セラ創業者・稲盛和夫さんが主宰する経営塾「盛和塾」だった。「最も大切な事業の目的・意義や経営に必要な哲学を学び、迷いが吹っ切れました」

幼い頃から暮らしと商売がいつも同じ空間にあった。土日もなければレジャーもない。真摯に必死に働く父と、支える母の姿に「子どもながらに事業経営の大変さを肌で感じていた」と思い返しながら、こう断言する。「そこまでしてでも、身を粉にしてでも守るべきものが『経営』にはあると思うんです」

混沌とするホームセンター業界。「だからこそ、やりがいを感じる」と楽しそうに話しながら、西村さんは続ける。「私の使命は従業員が夢や希望を持てて、幸福度が増す会社にすること。いつか、『共に西村ジョイで働けて良かった』と言ってもらえればうれしいですね」

篠原 正樹

西村 久|にしむら ひさし

略歴
1968年 高松市出身
1987年 高松第一高校 卒業
1993年 早稲田大学商学部 卒業
1996年 西村ジョイ株式会社 入社
2015年 代表取締役社長

西村ジョイ株式会社

住所
香川県高松市成合町891番地1
代表電話番号
087‐885‐8000
設立
1952年3月
社員数
660人
事業内容
木材事業、住生活関連用品の販売、カード事業、リフォーム事業 他
資本金
9000万円
グループ会社
西村木材、西村ホームズ、西村興産
地図
URL
https://www.nishimura-joy.co.jp/
確認日
2020.11.05

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