旅館ビジネスの需要を創る!

喜代美山荘 代表取締役社長 三矢 昌洋さん

Interview

2008.11.06

瀬戸内の多島美が一望できる峰山で旅館を再建したい・・・十数年思い続けた願い、1万3千坪の敷地にそびえ立つ「喜代美山荘・花樹海」の夢を見た。天然色だった。
30歳で妻の叔母から引継いだ(株)喜代美山荘 代表取締役社長 三矢昌洋さんは、旅館業界が衰退する逆境のなかで、30億円余を投資、夢に見た旅館をでっかく実現させた。

基礎工事に7億円

引継いだ旅館「喜代美山荘」は高級料亭として客筋も良かった。しかし施設は古びて、板前さんも仲居さんも高齢化していた。「裏の峰山を見上げては、眺めのいいあそこへ移転できたらと思っていました」。

1983年、山の斜面にあった喜代美山荘が急傾斜地改善地区に指定された。廃業するか建替えるか迫られて決断した。「急傾斜地ですから10mの杭を6百本も打ちこむ難工事で、道路も付け替えたので、敷地の基礎工事だけで7億円掛かりました」。資金は政策投資銀行(当時の開発銀行)と都市銀行、地元銀行の組み合わせで30億円余の融資が付いた。1990年、夢に見た9階建ての日本旅館 喜代美山荘・花樹海をオープンした。

しんどいけど、旅館!

「旅館はしんどいです。ホテルのようにキーを渡して、はいどうぞという訳にはいきません。でも手間ひま掛ける気配りやおもてなしが、システム化されたホテルでは味わえない魅力です」。
JR四国がホテル(全日空クレメントホテル高松)を開業する計画もあった。あえて旅館の道を選んだ。

地元需要を掘り起こす

かつて官官接待や団体旅行でにぎわった旅館業界は、時代に流されて衰退した。35年前、三矢さんが旅館を継いだとき、高松市に組合加入の旅館は58軒あった。
「いまJTBさんがクーポンを切れる旅館は2軒です。失った旅館の需要を地元営業で創ります。孫の名付けや古希の祝い、婚礼のお披露目、お食事会、法事などチラシ広告や戸別訪問で掘り起こしています」。

やり切る数字と経費の見える化

今期必要売り上げ15億円。年度の「会社発展計画書」を幹部も洗い場のおばちゃんにも持たせて毎日朝礼で確認する。「必要売上は、やりきる数字です。やれる数字は倒産。やりたい数字は願望。決意をもって達成するのがやりきる数字です」。
月次で収益が分かる仕組みが”経費の見える化“だ。「70項目ほどの経費の数字が私を呼ぶんです。料理の原価率を上げたらお客様は喜びますが赤字になります、下げれば儲かりますがお客様は来なくなります。でも無駄を減らして原価率を上げれば、お客さまも喜び会社も儲かります」。値決めは一点なり。値決めは経営なり。そのデータベースが経費の見える化だ。

よき先輩よき仲間に恵まれ商売繁盛

35年間、365日休みなしで1日14 時間勤務。労働集約性の低い業種なら楽になる方法もあるが旅館業はそれが出来ない。「僕が朝7時から夜中まで現場にいる。そして働く誇りと成果という目的を社員と共有している。だからみんな頑張るんです」。
高松青年会議所理事長だった三矢さんは、高松ホテル旅館料理(協)の理事長や盛和塾、来年開催の(仮)観光博覧会企画実行委員長など、組織や人の世話役を引き受ける。それに東京にある香川県の宿泊施設「東京さぬき倶楽部」運営も受託している。「お陰さまで、よき先輩よき仲間に恵まれ商売繁盛です」。

車も家も持たない。ゴルフもマージャンもしない。仕事が趣味、財産は社員という三矢さんは、ホテルでは味わえない日本旅館の四つの魅力を挙げる・・・「空間、しつらえ、料理、 おもてなし」・・・この四つを発信してこそ、旅館ビジネスの需要が創造できると信じている。


オープン当時は人手が無くて苦労した。「宴会が終わった大広間の畳をあげて絨毯を敷く。椅子テーブルを並べる。夜中に家内はお袋に預けていた子どもを、1人を背中に背負い、あと2人を両手に引いて坂道を登ってくる。従業員が帰宅した後も、子どもを背負った家内と徹夜で翌日のパーティの準備に追われました」。苦労話を盛和塾の全国大会で話をしたとき、つい涙がでて絶句した。塾長の稲盛和夫さんに「泣くな」と言われた。

※(盛和塾)
1983年に京セラ創業者の稲盛和夫の人生哲学や経営哲学を学ぶために集まった自主勉強会が発端となり結成された経営塾。

三矢 昌洋 | みつや まさひろ

1944年 1月8日生まれ
1965年 東京理科大学電気工学科 卒業
    日本電気株式会社 入社
1981年 株式会社喜代美山荘 代表取締役社長
1990年 観光旅館花樹海 開業
2009年 高松まちなかおもてなし推進協議会会長
2011年 香川県ホテル旅館生活衛生同業組合理事長
2014年 株式会社喜代美山荘 代表取締役会長
    香川県観光協会会長
写真
三矢 昌洋 | みつや まさひろ

政府登録国際観光旅館 喜代美山荘 花樹海

住所
香川県高松市西宝町3-5-10
代表電話番号
087-861-5580
設立
1990年
社員数
61人
事業内容
ホテル・旅館・宴会・婚礼・コンベンション
資本金
2000万円
地図
URL
http://www.hanajyukai.jp/
確認日
2018.01.04

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