問屋ならではの 存在価値高める

富士鋼材 代表取締役専務 富家 次朗さん

Interview

2016.06.02

丸亀市蓬莱町の倉庫で

丸亀市蓬莱町の倉庫で

富士鋼材は棒鋼、形鋼、鋼板といった鋼材を専門に扱う。鉄鋼メーカーから仕入れた鋼材を、建設・造船・製缶業などへ卸している。棒鋼いわゆる鉄筋の販売では西日本でトップシェアを誇る。

経営を担う専務の富家次朗さん(36)は、自社の役割を鋼材の問屋だと話す。「うちにしかできない機能を追求して、厳しい鉄の流通業界で生き残っていく」。販売力と存在価値を高めながら新たな挑戦も忘れない。

売上の約半分を鉄筋が占める。他の鋼材と違い、鉄筋の価格は経済情勢を反映して大きく変動する。「精いっぱいアンテナを高くして情報を集めます。先読みは難しいので、相場に遅れないようについていくしかありません」。相場に対しての会社の方向性は富家さんが決めるが、その場の判断は各営業担当に任せている。大手商社よりも小回りが利く。

鉄筋の安定供給を支えているのが倉庫でのストックだ。しかし、原材料メーカーと製造業の直接取引が増えてくると、その強みが発揮できない。顧客から「富士鋼材の倉庫がないと困る」と言われるためにどうすればよいか、常に考えている。

3年ほど前、大阪にある自社倉庫の一角に住宅基礎メーカーを誘致した。鉄筋を加工して住宅の土台を作る企業だ。「原材料メーカーからすると、富士鋼材の倉庫にはユーザーがいるんだとなる。そうなれば、うちの倉庫が魅力的に見えてくるんですよね」。コラボレーションできるパートナー企業を探し、両社が伸びる仕組みを作りたいと言う。
創業者は祖父で、現在社長は父が務めている。兄は関連会社である泉鋼業の社長だ。富家さんは2008年に富士鋼材へ入社した時、従業員にとって経営者が非常に遠い存在になっていると感じた。誰も不平不満を言うわけではないが、隔たりがあるように思った。そこで始めたのが全従業員との面談だ。

本社、本店、支店、営業所を合わせて90名、一人当たり20分~1時間程度話す。会社の嫌なところはないか、ダメ出しをしてもらう。同時に自分の思いも伝える。「従業員の悩みを直接吸い上げる環境を整え、風通しの良い会社を作りたい。富士鋼材の社員たるものこうあるべきというのはありません。人は違って当たり前なので、それぞれの持つ人間味や深みを大事にしてほしい」。年に1度の面談は恒例になった。
兄も自分もいずれは家業に携わるんだという思いが、幼い時から自分の中にも家族の中にもあった。だが、父から後継者教育のようなものを受けたことはない。自分で考えることを尊重してくれた。

大学卒業後にカナダ留学を経験し、帰国後は東京で鉄鋼の総合商社に就職。貿易の担当になり、カナダで身に付けた英会話が生きた。2年間のシンガポール駐在も経験。富士鋼材の経営を支えてきた従業員の高齢化やリタイアを受けて、香川に帰ってきた。

問屋ならではの存在価値を高めることに注力していくが、商売に必要なのは顧客にとっての便利さだけではないと感じている。「創業から60年以上、その間に培った信頼関係があります。だから今も商売できている。他社製品と機能や価格が同じなら、最後は人で選ばれるでしょう。その泥臭さを忘れちゃいけないなと思います」

副編集長 鎌田 佳子

富家 次朗 | とみいえ じろう

1979年 6月 高松市生まれ
2002年 3月 信州大学工学部 卒業
      カナダ留学
2004年 4月 株式会社メタルワン 入社
2008年 2月 富士鋼材株式会社 入社
2010年10月 同社 取締役専務 就任
2014年10月 同社 代表取締役専務 就任
写真
富家 次朗 | とみいえ じろう

富士鋼材株式会社

本社
高松市朝日町5丁目2番3号
TEL:087-821-1181(代表)
事業所
高松本店、泉北流通センター、福岡・岡山・広島支店、新居浜・丸亀・徳島・米子営業所
資本金
9,600万円
代表取締役社長
富家 靖輔
事業概要
鉄鋼専業商社
関連会社
泉鋼業株式会社、ニチエイスチール株式会社、株式会社富士鋼材スチールセンター
URL
http://www.fuji-steel.co.jp/
確認日
2018.01.04

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