「作り方より売り方」新タイプの経営者

有限会社パイプライン 社長 安藤健介さん

Interview

2013.03.21

焼豚

すい星のように香川に新しいタイプの経営者が現れつつあります。焼豚で世間に知られるようになったパイプラインは、ものづくりより商品の売り方にこだわり、商品に物語性を付け加えながら、売り上げを伸ばしています。「仕事を通じて香川県を、四国を盛り上げたい」との明確な目的意識を持つ社長の安藤健介さん(38)に、その経営と哲学の一端を明かしてもらいました。
基本商品の「さぬきの豚ちゃん」。  「ピーちゃん」と呼ぶお客さんも

基本商品の「さぬきの豚ちゃん」。
 「ピーちゃん」と呼ぶお客さんも

香川を、四国を、日本を元気にすることが必要だと思ったきっかけは、宮崎県に東国原英夫知事(当時)が登場し、宮崎産の地鶏やマンゴーの全国展開をスタートさせたことだった。「よし、俺もやってみよう」と香川産の豚を焼豚に加工し始めた。

パイプラインは、現在は引退した父武司さんが興した水道工事などをする会社。会社の駐車場の一画を改造して、焼豚を試作した。これが今の工場だ。ここで1日に150㌔の豚肉を焼豚に加工する。販売は、インターネットによる通販と、大手百貨店・量販店やコンビニチェーンとコラボして企画商品にした焼豚を主体にした卸。
焼豚そのものは、どれも同じ。バラ肉の焼豚なら255㌘、モモ肉なら310㌘だ。味の基本タレの醤油ダレとゆずダレは、変えない。変えるのは、一緒に箱詰めする「もう一品」だ。

ラーメンのチャーシュー麺ならぬチャーシューうどんは、焼豚専用うどんをうどんメーカーに特別に開発してもらった。調理済みのハンバーグと組み合わせた焼豚・ハンバーグセットは、家族の夕食向けだ。瀬戸赤鶏のたたきと組み合わせた焼豚・瀬戸赤どりたたきセットはお父さんの晩酌、ビールのおつまみ用。毎年「父の日」の前によく売れる。
「商品はまったく同じなのに、物語性を付け加えた途端、売れだします」。「父の日」があるのなら「母の日」も、と「母の日」に向けた特別のストーリーがある「焼豚・○○セット」を考案中だとか。「今年の母の日には間に合わないけど、来年の母の日には発売します」と自信を持つ。
大学卒業後、すぐにキヤノンの営業マンになった。3カ月に及んだ研修中の〝師匠〟は、キヤノンの文字通りのトップを独走しているセールスマンだった。「人の心を動かしたときに、ものは売れる」「自分に負けるな」「立てた計画はやり遂げろ」……叩き込まれたことを実際に試したら、半年後にはキヤノンでトップの営業マンになっていたそうだ。師匠役の営業マンの服装から立ち居振る舞いまでまねた。この人は九州の人だった。言葉も九州弁にする徹底ぶりだった。
焼豚を始めた同時期の2007年に香川大大学院(ビジネススクール)地域マネジメント研究科に入学した。大手化粧品メーカーでマーケティングの責任者をしていた西山良明教授が指導教官だった。販路開拓、商品開発……マーケティング手法を学んだら、間髪を入れずに実行した。日々積み重ねた経営計画とその実行を論文にして10年に提出、卒業した。

明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科の非常勤講師に委嘱されている。年に1度、自らのビジネス体験をもとにした独自の経営哲学とノウハウを集中的に講義するため上京する。
香川で仕事をする以上、香川産にこだわる。売り方、消費者へのメッセージの伝え方にこだわりたい……購買意欲をそそるちょっとしたストーリーを添えて。

安藤 健介 | あんどう けんすけ

有限会社パイプライン

住所
香川県綾歌郡綾川町羽床下307-1
創業
1989(平成元)年に土木建設業として会社登記

    現在も土木建設業は続けている
確認日
2013.03.21

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