「物流」「建設」「倉庫」「流通」… 追い求める“唯一無二”

エフエーエス 社長 内浪 達也さん

Interview

2025.04.17

まんのう町のエフエーエス本社。 エフエーエスは「Factory Assistant System」の頭文字から

まんのう町のエフエーエス本社。
エフエーエスは「Factory Assistant System」の頭文字から

「ストック型」でピンチ脱出

内浪達也さん(39)が創業者の父・博文さんからバトンを受け、エフエーエスの2代目社長に就いたのは2020年10月。コロナ禍の真っ只中だった。「赤字こそ出していませんでしたが、売上は落ち込んでいました。このまま先代から受け継いだものだけだと危うい……。そんな不安を感じていました」

エフエーエスは、建設資材などの商品をメーカーから工事現場に届ける「物流」と、戸建住宅などをつくる「建設」の2本柱で業績を伸ばしてきた。だが、「仕事がある時はあるが、ない時はない。ともに『フロー型』のビジネスでした」

フロー型とは、商品を一度限りで売り切ることをゴールとするビジネススタイル。内浪さんが必要だと感じたのは『ストック型』。音楽や動画を配信する「サブスクリプション」のように商品やサービスを提供し続ける仕組みをつくり、継続的に収益が入るスタイルだ。
広大な敷地で倉庫業を手掛ける=三豊市の三野物流倉庫センター

広大な敷地で倉庫業を手掛ける=三豊市の三野物流倉庫センター

「取引先からの紹介など、本当にありがたいご縁があって……」。内浪さんは三豊市や本社があるまんのう町で広大な敷地を確保。荷物を預かって保管する“ストック型”の倉庫業に乗り出した。

さらに、これまでは物流業者として建設資材などを運んでいたが、資材を仕入れて販売する“流通”まで事業領域を拡大。こだわったのは「他社の動向に左右されないビジネス」だった。「流通まで広げれば自社の営業力で売上をコントロールできます。“自分たちの努力によるもの”がほしかったんです」と内浪さんは力を込める。「一つの会社が『物流』と『建設』を手掛けるのも珍しいんですが、『倉庫』と『流通』が加わり、さらに“異質”な会社になりましたね」と苦笑する。
“4本柱”でコロナショックを乗り越え、その後もそれぞれの事業の相乗効果もあり業績は好調だ。「でも、これからもどんどん変化していきます。『変わりゆく時代に変われる強さを』持った会社でありたいと思っています」

社内外でイメージアップ

全国のトッププレーヤーが集結するソフトテニス大会を開催

全国のトッププレーヤーが集結するソフトテニス大会を開催

全国のトッププレーヤーが出場するソフトテニス大会や、地域の子どもたちが参加するソフトテニス講習会の開催。災害時に広大な倉庫施設を開放し、発電機などを活用してもらう防災協定を三豊市と結ぶなど、内浪さんは地域貢献にも力を入れる。「大きなトラックが走ったり騒音を立てたり……物流業について回るあまり良くないイメージを払拭させたいんです」。道路などのインフラを使っている会社だからこそ「地域に恩返しもしなければ」と話し、こう続ける。

「いつか、地域の人たちと一緒に『エフエーエス祭り』を開きたいんです。駄菓子を大量に仕入れてキッチンカーなども呼んで……私たちがどんな会社なのか、ぜひとも知ってもらいたいですね」
イメージアップは社内向けにも行う。かつて一部の社員から「この会社はブラックだから……」と漏れ聞いた時は「こんなにつらいことはなかった」と打ち明ける。「両親や社員が一生懸命働いて会社を支え、私を育ててくれた家業なのに……」

トラックドライバーには長距離運転で過酷というイメージがある。だが、エフエーエスの配送先は四国内などの近距離に限定。ドライバーの希望に沿った配車計画を立て、基本的には日帰り運行だ。「女性スタッフも多く、育児や介護などとの両立も可能です」

また、社内に「にじいろ未来づくり推進課」を設け、障がいや性別に関わらず、誰もが自分らしく、やりがいを持って働ける環境づくりを目指している。「『事業は人なり』です。人を大事にできない会社に未来はない。少しずつでも労働環境を改善し、社員に躍動してもらいたいですね」

「なぜ香川に“あんな”会社が?」

父は「俺についてこい」的な親分肌でカリスマ性があり、トップダウンで会社を一から育てた。だが、内浪さんは“ボトムアップ”と“脱カリスマ”を 掲げる。

「父をリスペクトしているからこそです。私が父と同じやり方をしても、バックボーンも違うし、みんなに受け入れられないでしょう。会社をもっと強くするために、私は私のやり方で引っ張っていこうと思っています」
「変わりゆく時代に変われる強さを」持った会社でありたい

「変わりゆく時代に変われる強さを」持った会社でありたい

 4本柱を軸に、内浪さんはさらに挑戦を続ける。建設現場から出る廃材をリサイクルした「家具製作」や「空間・店舗プロデュース」、大勢のスタッフの作業着を「普通に買うより卸売にすれば安くできるのでは」という発想から始めた、スーツやワークウェアなどの「アパレル事業」。さらに今月からは「人材紹介業」にも着手する。「多角化というよりは“既存ビジネスの延長”です。我が社が手掛けている事業がきっかけとなり、『これがあれば喜ばれるのでは』『取引先や協力業者にもプラスになるのでは』というものを加えているイメージ。他社も同業者も一緒に成長していければと思っています」

目指すのは、オリジナリティ溢れる“唯一無二”な会社だ。「私たちは私たちの市場で戦うだけです。『なぜ香川にあんな会社があるの?』と言われるような、変化し続ける“変わった”会社にしていきたいですね」

篠原 正樹

内浪 達也 | うちなみ たつや

略歴
1985年 丸亀市出身
2008年 株式会社エフエーエス 入社
2020年 代表取締役社長 就任

株式会社エフエーエス

住所
香川県仲多度郡まんのう町宮田724-32
代表電話番号
0877-75-3780
設立
1996年1月24日
社員数
グループ全体 101人・単体 55人(2025年3月1日現在・非正社員含む)
事業内容
配送センター管理業務
貨物自動車運送事業
貨物軽自動車運送事業
土木一式工事請負業
建築ー式工事請負業
産業廃棄物収集運搬業
建設資材の販売
倉庫業及び荷役業
燃料油、潤滑油の販売
アパレル製品の販売
無人航空機使用事業
拠点
琴南営業所エコサポートセンター(まんのう町)
岡山営業所(岡山県瀬戸内市)
三野物流倉庫センター(三豊市)
グループ
エフエーエスホールディングス株式会社
株式会社戎急配
地図
URL
https://fas-logistic.com/
確認日
2025.04.17

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