現代アートとしての書を追求
香川のアートシーンに新たな一歩を

書道家・現代アーティスト 郷 祥さん

Interview

2025.04.17

黒と白の濃淡が織りなす鮮やかな世界。郷祥さんの作品は、見る者によって表情を変える。「書道家として最初は文字ばかり書いていましたが、書を現代アートへと昇華することを目指した時、漢字文化圏の人はどうしても文字の意味を考えてしまうし、外国人には伝わりにくいことに表現の壁を感じました。そこで、書のエッセンス(余白・筆跡・墨跡)だけを抽出し、自分の美意識である『相反する二面性の共存』を表現した作品を制作したいと考えるようになりました」

そうした郷祥さんの思いが、白と黒、自然美と人工美、技法における「描く」と「削る」によって表現され、「現代アートとしての書」を生み出している。

サラリーマンから現代アーティストへ

幼い頃、書道家になる夢も描いたが、一度は断念し、総合大学に進学後、電力会社に就職。責任ある仕事を任され充実した日々を過ごしていたものの、「自分にしかできないことをしたい」という思いが募り、サラリーマン生活のかたわら書を再開。2015年には書道師範免許を取得した。

師範試験のために書の歴史を学び直して気づいたのは、近代における西洋化の流れのなかで書道が美術の枠組みから外されていることだった。国内の主要な芸術大学に書道を専攻できるコースはなく、書道は登録無形文化財に登録されている。「これは、書はあくまでも文化であり、芸術ではないと言われているに等しい。書を文化として守られるものではなく、芸術として日本を守る存在にすることへ強い使命感を持ちました」。こうして郷祥さんは、書道家でありつつ、現代アーティストとして歩み始めた。

一方、現代アートとしての書を確立していくには、西洋のアートシーンで評価される必要がある。そのためには、西洋美術史とのつながり(コンテクスト)・新しさ(オリジナリティ)・何を訴えるか(コンセプト)を学術的に説明できる作品でなくてはならない。「西洋美術史を学びながら、オリジナリティを追求するため、3年をかけて独自の墨を開発しました。また、書『道』たるゆえんを示すため、共通のコンセプトとして日本人の精神性を作品のなかで表現することを大切にしています」
制作風景

制作風景

国内外で高い評価

こうした明確な意識に裏打ちされた作品は、日本美術を紹介するパリの展覧会『サロン・ド・アール・ジャポネ』グランプリ受賞、ルイ14世の時代から続く世界最古の公募展『ル・サロン』入選をはじめ、国内外の美術界で高い評価を受けている。

現在の目標は、世界最大級のアートフェア『アート・バーゼル』への出展。世界有数のギャラリーの目に留まり出展が叶えば、現代トップレベルのアーティストである証となる。「長く険しい道のりですが、実績を積み、チャンスを掴みたい」と意欲的だ。

一方で香川への思いは深く、現在、高松空港で限定販売されている川鶴酒造とコラボした日本酒をはじめ、地元企業や商業施設などとのコラボレーションも数多い。「地元に貢献しながら、書の歴史を更新できたらうれしい」と語った。

郷 祥 | ごう しょう

略歴
1988年 香川県生まれ
2011年 同志社大学経済学部 卒
2022年 「Independent Tokyo 2022」審査員特別賞
    「サロン・ド・アール・ジャポネ 2022」グランプリ
    「100人10」野村證券AWARD
2023年 「ル・サロン」入選
    「ART SHODO TRIAL」優秀賞
    「Independent Tokyo 2023」審査員特別賞
    「UNNKOWN ASIA 2023」審査員賞
    高松市文化奨励賞
    「KYOTO SHODO SHOW」で清水穣の推薦
2024年 「ART SHODO PLUS」優秀賞

記事一覧

おすすめ記事

メールマガジン登録
メールマガジン登録
ビジネス香川Facebookページ