
そうした郷祥さんの思いが、白と黒、自然美と人工美、技法における「描く」と「削る」によって表現され、「現代アートとしての書」を生み出している。
サラリーマンから現代アーティストへ
師範試験のために書の歴史を学び直して気づいたのは、近代における西洋化の流れのなかで書道が美術の枠組みから外されていることだった。国内の主要な芸術大学に書道を専攻できるコースはなく、書道は登録無形文化財に登録されている。「これは、書はあくまでも文化であり、芸術ではないと言われているに等しい。書を文化として守られるものではなく、芸術として日本を守る存在にすることへ強い使命感を持ちました」。こうして郷祥さんは、書道家でありつつ、現代アーティストとして歩み始めた。
一方、現代アートとしての書を確立していくには、西洋のアートシーンで評価される必要がある。そのためには、西洋美術史とのつながり(コンテクスト)・新しさ(オリジナリティ)・何を訴えるか(コンセプト)を学術的に説明できる作品でなくてはならない。「西洋美術史を学びながら、オリジナリティを追求するため、3年をかけて独自の墨を開発しました。また、書『道』たるゆえんを示すため、共通のコンセプトとして日本人の精神性を作品のなかで表現することを大切にしています」

制作風景
国内外で高い評価
現在の目標は、世界最大級のアートフェア『アート・バーゼル』への出展。世界有数のギャラリーの目に留まり出展が叶えば、現代トップレベルのアーティストである証となる。「長く険しい道のりですが、実績を積み、チャンスを掴みたい」と意欲的だ。
一方で香川への思いは深く、現在、高松空港で限定販売されている川鶴酒造とコラボした日本酒をはじめ、地元企業や商業施設などとのコラボレーションも数多い。「地元に貢献しながら、書の歴史を更新できたらうれしい」と語った。
郷 祥 | ごう しょう
- 略歴
- 1988年 香川県生まれ
2011年 同志社大学経済学部 卒
2022年 「Independent Tokyo 2022」審査員特別賞
「サロン・ド・アール・ジャポネ 2022」グランプリ
「100人10」野村證券AWARD
2023年 「ル・サロン」入選
「ART SHODO TRIAL」優秀賞
「Independent Tokyo 2023」審査員特別賞
「UNNKOWN ASIA 2023」審査員賞
高松市文化奨励賞
「KYOTO SHODO SHOW」で清水穣の推薦
2024年 「ART SHODO PLUS」優秀賞
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