邦坊が手掛けた鴨尽くしの銀波亭

灸まん美術館 西谷美紀

column

2019.04.04

時事漫画家、小説家、讃岐民芸館館長、デザイナーなど様々な顔をもつマルチクリエーター・和田邦坊(1899- 1992)。今回は、邦坊が讃岐民芸館時代にプロデュースを手掛けた鴨料理店についてご紹介します。

高松市花園町の「銀波亭」は、昭和51年に創業した鴨料理専門店です。初代店主と邦坊は「新しいさぬきの名物料理に」という意気込みをもって、鴨に特化したメニューやしつらえを考えました。店名は、鴨が水に浮いたまま寝ている「鴨の浮き寝」から着想を得て、鴨がウトウトするたびに水面の波がキラキラと銀色に光るという情景をイメージしています。

部屋の名前は、栗林公園の名所「南湖」からはじまり「銀風」「さざなみ」「雲」「あし」と続きます。鴨が飛び立つと「銀風」が吹き、水面に「さざなみ」が立つ。空に浮かぶ「雲」を目指して羽ばたいていく鴨たち。その姿を見送るように「あし(葦)」が揺れている。そんな美しい情景を想像することができるネーミングです。玄関の暖簾は、名前に込めた情景をシンプルに図案化したものでした。

また美しい情景をデザインに落とし込みつつ遊び心も忘れていません。2階の客室に飾っていた絵画は、巻物のように右から話が始まり、擬人化された鴨の漫画が9つのシーンで描かれています。「鴨になる 今日のデートえ 歩をはやめ」「鴨が来て ねぎがまた来て 顔揃う」「二次会の 部長の顔が 鴨にみえ」など、まさに鴨が「いいカモ」にされてしまう洒落のきいた漫画を描いています。店のために描き下ろした鴨漫画は、時事漫画家として一世を風靡した邦坊の実力を垣間みる作品であり、会食の場が盛り上がるユニークな仕掛けといえるでしょう。

「銀波亭」は今春、香川町で「銀波亭 鴨の里」としてリニューアルオープン予定です。

企画展「邦坊さんの縁起物<第2期>」
【とき】5月6日(月・振休)まで(水曜休館)
【ところ】灸まん美術館(善通寺市大麻町388)
【観覧料】一般500円、小中高大学生無料、65歳以上・身体障碍者手帳等をお持ちの方は300円

灸まん美術館学芸員 西谷 美紀

讃岐民芸館、四国村などを経て灸まん美術館学芸員。和田邦坊を研究。2019年4月に「和田邦坊デザイン探訪記・続編」を刊行。県内図書館などに献本し、灸まん美術館でも販売予定
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灸まん美術館学芸員 西谷 美紀

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