邦坊は1899年に琴平町で生まれ、時事漫画家、小説家、農事講習所の教員、讃岐民芸館館長、商業デザイナー、画家として活躍した。西谷さんは邦坊の作品に魅せられ、その足跡を一つずつ丁寧にたどってきた。
当時の栗林公園所長の勧めもあり、西谷さんは同年10月に展示会「さぬき画報~和田邦坊がいた栗林公園~」を開催。「紹介しきれないものがたくさんある。いつか報告書にまとめよう」と考えた。香川県や高松市などの文化施設で学芸員として働く傍ら、プライベートの時間を使って個人的に邦坊の足跡をたどり続けた。
昨年発行したのが、調査結果をまとめた『和田邦坊デザイン探訪記』だ。西谷さんはなぜここまで邦坊に惹かれるのか。「京都にいた時、自分の故郷について何も知らない、語れないという寂しさを感じていました。邦坊の作品には栗林公園など私が子どもの頃から見てきた風景が描かれていて、心にすっと入ってきたんです。自分のアイデンティティを再認識させられたというか」
琴平土産でおなじみの「灸まん」も邦坊のプロデュースで生まれた。灸まん美術館は、邦坊の業績を顕彰するために作られたものだ。西谷さんは今年2月から同館で働いている。「収蔵品の整理をしている時に『学芸員になって良かった』って思います。どんな展示ができるだろうって考えるだけで楽しい」
来年、和田邦坊生誕120周年を迎えるにあたって、企画を考えている。昨年好評だった邦坊ゆかりの地を巡るまち歩きを、今年10月に再び行う。来年は善通寺を飛び出しての展示会も行う予定。2冊目となる報告書も準備中だ。
「灸まん美術館ではパッケージデザイン展を考えています。香川県民にとって馴染み深いデザインの世界を、あれもこれも楽しんでもらえれば。物産品のPRとしての見方もできるはず。マルチクリエーターともいえる邦坊の研究は、分野が広く大変ですがやりがいを感じます。香川県の歴史を語る財産として、これからも調査を続けていきたいと思っています」
鎌田佳子
西谷 美紀 | にしたに みき
- 1983年 高松市生まれ
2002年 高松桜井高校 卒業
2006年 龍谷大学 卒業
香川県や高松市などの施設、四国村を経て
2018年 灸まん美術館 学芸員
灸まん美術館
- 住所
- 香川県善通寺市大麻町338
- 住所
- 善通寺市大麻町338
TEL:0877-75-3000 - 開館時間
- 9~17時
- 休館日
- 毎週水曜日
- 入館料
- 一般 300円、小・中・高・大学生は無料
- 地図
- URL
- https://kyuman.co.jp/museum/
- 確認日
- 2018.08.02
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