
2013年まで栗林公園の土産物店で使われていたショッピングバッグの図案
邦坊は、当時の県知事・金子正則からの招へいを受けて1954年から栗林公園内にある商工奨励館の嘱託職員として勤務しています。主な仕事は、讃岐民芸館設立準備とともにデザイン指導などでした。その仕事のなかで、栗林公園内にある広報物・印刷物のプロデュースも手掛けるようになりました。かつて商工奨励館・西館にあった香川県物産協会では、邦坊がデザインしたショッピングバッグを使っていました。いまは使われていませんが、この派手な色合いに見覚えのある人もいるのではないでしょうか。
邦坊の手書き文字で「栗林公園」「四国高松」と書かれた面には、柵越しに群立する松が描かれています。もう一方は、画面いっぱいに折り重なる鯉の姿で賑わっています。赤と黒の配色は、栗林公園にある黒松と赤松だけでなく黒鯉や赤鯉のイメージも込められています。
灸まん美術館は邦坊がデザインした「こい最中」というパッケージ資料を所蔵しています。栗林公園の鯉をモチーフにしており、由来を読むと「栗林公園の美しさは松、水、そして動く鯉。観光客の誰もが橋の上に立って、この古風な純日本的庭園に嘆声を発するのは、松、水、そして動く鯉なのである」という文章が綴られています。邦坊が思う栗林公園の美しさは、バッグの図案で表現されたとおり松と鯉であったようです。
ちなみに「こい最中(もなか)」の由来は、栗林公園の“鯉”から松平頼豊とお菊の“恋”の話へと続き、最後の一文は「恋最中(こいさいちゅう)とお読み下さいましても結構で……」というオチで終わります。栗林公園のセールスポイントを的確に見抜き、ユーモア小説家として一世風靡した邦坊らしい文章ですね。
灸まん美術館学芸員 西谷 美紀
- 讃岐民芸館、四国村などを経て灸まん美術館学芸員。和田邦坊を研究。2019年4月に「和田邦坊デザイン探訪記・続編」を刊行。県内図書館などに献本し、灸まん美術館でも販売予定
- 写真
おすすめ記事
-
2019.08.01
香川をギュッと詰め込んだ邦坊デザイン
灸まん美術館学芸員 西谷 美紀
-
2019.04.04
邦坊が手掛けた鴨尽くしの銀波亭
灸まん美術館 西谷美紀
-
2018.12.06
邦坊のデザインからみる故郷の風景
灸まん美術館 西谷美紀
-
2020.02.06
太田先生を偲んで
大谷早人
-
2019.05.02
リアリティーと存在とホワイボン
川島猛アートファクトリー理事 岡田佳代子
-
2019.01.03
第65回日本伝統工芸展
香川県立ミュージアム 一柳 友子
-
2018.11.15
たけぽぽ
桜製作所 社長 永見 宏介
-
2019.07.18
かがわ・山なみ芸術祭2019
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司
-
2019.05.16
塩江に現代サーカスの拠点
瀬戸内サーカスファクトリー
-
2017.06.15
守り続けたい宝と誇りと絆
四国こんぴら歌舞伎大芝居推進協議会 副会長 片岡 英樹さん
-
2016.09.15
アート県、そのDNAを紡ぐ
香川県教育委員会 教育長 工代 祐司