東京で香川の雰囲気を

灸まん美術館学芸員 西谷美紀

column

2019.11.07

香川を拠点に活躍したマルチクリエーターの和田邦坊(1899-~1992)。実は、香川だけでなく県外でのプロデュースも数多く手掛けています。

東京の目白にある「つづらそバ」もその一つ。外観は、日本最古の芝居小屋・金丸座(琴平町)がモチーフになっており正面の屋根上に櫓の意匠も再現されています。メニューを書いた看板も芝居小屋の雰囲気に似せて、役者看板風のデザインになっています。

2階(現在非公開)には、小さな舞台と升席で仕切られた客席があり、外観だけでなく内装も金丸座をオマージュした工夫が続きます。そして、何よりの自慢は圧巻の天井絵です。店内に入ると頭上には邦坊直筆の天井絵(大津絵や遍路などを描いた民芸調の作品)が広がっています。初めて来店したほとんどの客は、注文を聞きに来るまで天井の作品に釘付けになってしまうといいます。

店の名前は、全国津々浦々の蕎麦を提供する店ということで「つづらそバ」と名付けられています。メニューをみると、邦坊の好みも大きく反映されており「こんぴらうどん」「ざいごうどん」も登場しています。また、かつて金子正則(元県知事)も出張のたびに店に立ち寄っており「(東京価格だが)香川のうどんと同じくらいうまい!」と絶賛したといいます。

店主によると「和田先生から店の外に置くものは、イサム君(イサム・ノグチ)に頼もう、という話もあった。結局実現しなかったけれど、あったらどんな風になっていたんだろうねぇ」という自慢話も残っています。夢のコラボレーションは叶いませんでしたが、邦坊が手掛けた店舗はいまでも田舎の雰囲気にどっぷり浸れる場所としてドラマの撮影や雑誌の対談場所にも使われており、知る人ぞ知る業界の名所にもなっています。そして、香川県民にとっては東京に居ながらにして香川の匂いを、心地よい安心感を味わえる店です。東京にお出かけの際は、香川の風を求めて立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

西谷 美紀 | にしたに みき

1983年 高松市生まれ
2002年 高松桜井高校 卒業
2006年 龍谷大学 卒業
    香川県や高松市などの施設、四国村を経て
2018年 灸まん美術館 学芸員

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