モビリティと人の未来―自動運転は人を幸せにするか

「モビリティと人の未来」編集部 編/平凡社

column

2019.03.07

現在私たちが利用している自動車による交通事故で亡くなる人の数は、日本では大きく減少したとはいえ世界では年間約120万人にのぼります。仮に今の時代に自動車が発明されたとしたら、このようなリスクの多い乗り物は絶対普及することはないだろうと言われます。そんな中、自動運転という言葉を目や耳にするようになりました。それが普及した未来がどのようになるかを私たちが想像することはまだ難しいですし、それが人を幸せにするかどうかは定かではありません。

著者は「インターネットは情報のあり方を大きく変えた。出版やテレビ、新聞といった商品として情報を扱う業界だけでなく、情報をやり取りするすべての産業に劇的な変革をもたらした。自動運転は、インターネットが社会に起こした変革と同じか、それ以上の変化を私たちの生活にもたらすだろう」と言います。

自動運転は交通インフラはもちろんのこと、町並みや建築物、さらにはライフスタイルやコミュニティのあり方までも変えてしまう可能性を秘めています。自動車メーカーの中にはこの先を見据えて「製造業」から「モビリティサービス会社」へ転換するところも出てきています。しかしディープラーニングによって膨大なデータをもとに判断基準を自ら学習した自動運転システムは、エンジニアにとってもまだブラックボックスであるようです。

人と人が挨拶して会話することで成り立っていた社会の仕組みが、人の代わりに自動運転機械に委ねることによって、どのような社会になるのでしょうか。著者は「自動機械はそれを使う人の個性を標準化して均一化する。そこから外れると機械の側が不機嫌になって周りの人から舌打ちされるという、駅の改札口はそういう場所になってしまった」と言います。

大きな変化はやってくるでしょう。私たちはどんな未来を望むべきなのでしょうか。

宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

坂出市出身。約40年書籍の販売に携わってきた、
宮脇書店グループの中で誰よりも本を知るカリスマ店長が
珠玉の一冊をご紹介します。
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宮脇書店 総本店店長 山下 郁夫さん

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