誰もが豊かに暮らせる コンパクトシティへ

丸亀市長 梶 正治さん

Interview

2018.07.19

5月の丸亀お城まつりに参加した梶市長=丸亀市一番丁の丸亀城大手二の門

5月の丸亀お城まつりに参加した梶市長=丸亀市一番丁の丸亀城大手二の門

一番に頼られる存在に

丸亀市が大きく変わろうとしている。老朽化などに伴い建て替えられる新庁舎。2020年度に完成する予定だ。「丸亀城の真ん前なのでお城の景観と調和するようなデザインで、人と街と歴史を繋ぐ拠点にしたい」

梶正治市長(65)が目指すのは丸亀市のコンパクトシティ化だ。少し離れた場所にある教育・福祉関連施設を庁舎内に移転するなど、分散している行政機能を集約。市役所の開庁時間外でも利用できる交流拠点「市民交流活動センター」やコンビニを併設し、「用事がなくても気軽に市民が足を運び、市政のことを尋ねたり市政に参画したりする。そんな場所にしたいと思っています」
丸亀市新庁舎の完成イメージ

丸亀市新庁舎の完成イメージ

変わるのは庁舎だけではない。市役所から丸亀城へ向かう一部の道路は終日、車両が入れない歩行者天国にする。「歩いて楽しく快適に過ごせるというのがコンパクトシティの考え方。歩行者天国にはベンチもあって、お茶でも飲んで・・・・・・市民にはお城の周りで好きなように過ごしてほしいですね」。そして梶さんはこう加える。「将来的には市中心部の大手町界隈は雰囲気ががらりと変わると思います」

2013年、丸亀市長に初当選し現在2期目。就任当初から意識してきたのが「市民目線」だ。市民との距離を縮めようと、庁舎1階に市民と面談するスペースとして「1階市長室」を設けた。「誰もが市長に会い、話す権利がある。最初はパフォーマンスだと言われたが、市政の主人公は市民だという姿勢を示したかった」。厳しい苦情や文句も相次いだ。だが、「怒っていた人も直接向き合い話を聞けば、ある程度は納得してくれるものです」。道路にカーブミラーをつけてほしい。家のTVが壊れた。ボランティアでゴミ拾いをしている人が「こんなゴミが落ちていた」と持参し訴えてくることもあった。「本人にとっては全てが切実な問題です。行政として見えていないところもたくさん気づかされました」

5月に開催された恒例の丸亀お城まつり。浴衣姿でうちわを手にした梶さんに、次々と市民が声をかけてくる。「市役所は常に市民にとって一番身近で、一番に頼ってもらえる存在でなければなりません」。梶さんは、そう力を込める。

きっかけは東日本大震災

2020年度完成の新庁舎 人と街と歴史を繋ぐ拠点に

2020年度完成の新庁舎
人と街と歴史を繋ぐ拠点に

「力のある人よりも、力のない人に必要なのが政治なんです」

家庭が貧乏だったことが全ての始まりだと言う。父親は体が悪く定職に就けず、「家は借家や間借りで転々としました」。当時授業料が月額1000円だった国立大に進み、「学生時代は、学費を引き上げようとする当時の教育臨調・国の方針に反対し、学生運動にも参加した。大学に行きたくても、お金がないから行けないというのはおかしいと思った」

大学を卒業した1975年、地元に戻り香川県職員に。その後、公平や平等を謳う日本社会党(当時)に入党、国会議員の公設秘書などを務めた。「貧乏というのはもちろん個人の責任だが、そうでない部分も大きい。少しでも住みやすい世の中にならないといけない。そんな思いがずっとありました」

95年、周囲や党に推されて香川県議選に出馬したが落選。3年後の選挙でも再び落選し、99年、3度目の挑戦で県議になった。「2回落ちたら普通は『もうご迷惑はかけません』となるが、そんな思いはなかった。だって、社会は何も変わっていないんですから」

県議から市長へ。きっかけは2011年に起きた東日本大震災だった。災害ボランティアで1週間、被災地で寝泊まりし、愕然とした。発生から数カ月が経っているにも関わらず、避難所は混乱したまま。役場は機能不全、職員も状況の詳細まではつかめていなかった。「職員自身も被災しているので仕方がない部分はある。仕事が思うようにできないのは無理もありません」

不測の事態が起きた時、地域の人がどうやって助け合うか、外部からのサポートをどう受け入れるか・・・・・・「改めて、市役所というものが極めて大事だと痛感しました」。市長になり、行政と市民が一緒に支え合う仕組みをつくる。梶さんの新たな目標が定まった瞬間だった。

市民の力を結集して

まちなか活性化イベントでの梶市長(左から3番目)

まちなか活性化イベントでの梶市長(左から3番目)

木造天守が現存する全国12城の一つで、扇の勾配で知られる石垣が美しい丸亀城。昨年の入場者は12万人を超え、過去最多となった。「市長就任当初は年間5万人程だった入場者が増えるのはうれしいですね」と目を細める。「瀬戸大橋を渡って丸亀に戻る時にいつも思う。『なんてよく見えるお城だ』と。この素晴らしいランドマークは先人が残してくれた貴重な財産です」

梶さんが掲げる市政の目標は「豊かで暮らしやすいまち 丸亀」

「豊かさとは単に経済的なものだけではない。歴史や文化に触れられる丸亀城こそ豊かさのシンボル。様々な豊かさを全市民が公平に受け取るべきです」

市民が「どうだ!」と我がまちを自慢し、観光客も満足して帰っていく。そんな丸亀市の姿を思い描く。「貧困は貧困、裕福は裕福で連鎖し、格差が広がる。今はそんな社会になっている。誰もが豊かに暮らせるよう、市民の力をうまく結集できる市長でありたいと思っています」

篠原 正樹

梶 正治 | かじ まさはる

1953年 丸亀市生まれ
1971年 高松高校 卒業
1975年 神戸大学経済学部 卒業
    香川県庁 入庁
1990年 香川県庁 退職
    衆議院議員・加藤繁秋氏の公設秘書
    行政書士などを経て
1999年 香川県議選で初当選(4期)
2013年 丸亀市長選で初当選
2017年 再選

丸亀市

住所
丸亀市大手町二丁目3番1号
TEL.0877・23・2111
市制施行
1899年4月1日
総人口
10万9621人
(男5万3126人/女5万6495人)
世帯数
4万4848世帯
(総人口、世帯数とも2018年6月1日現在)
地図
URL
https://www.city.marugame.lg.jp/
確認日
2018.07.19

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