一番に頼られる存在に
梶正治市長(65)が目指すのは丸亀市のコンパクトシティ化だ。少し離れた場所にある教育・福祉関連施設を庁舎内に移転するなど、分散している行政機能を集約。市役所の開庁時間外でも利用できる交流拠点「市民交流活動センター」やコンビニを併設し、「用事がなくても気軽に市民が足を運び、市政のことを尋ねたり市政に参画したりする。そんな場所にしたいと思っています」
2013年、丸亀市長に初当選し現在2期目。就任当初から意識してきたのが「市民目線」だ。市民との距離を縮めようと、庁舎1階に市民と面談するスペースとして「1階市長室」を設けた。「誰もが市長に会い、話す権利がある。最初はパフォーマンスだと言われたが、市政の主人公は市民だという姿勢を示したかった」。厳しい苦情や文句も相次いだ。だが、「怒っていた人も直接向き合い話を聞けば、ある程度は納得してくれるものです」。道路にカーブミラーをつけてほしい。家のTVが壊れた。ボランティアでゴミ拾いをしている人が「こんなゴミが落ちていた」と持参し訴えてくることもあった。「本人にとっては全てが切実な問題です。行政として見えていないところもたくさん気づかされました」
5月に開催された恒例の丸亀お城まつり。浴衣姿でうちわを手にした梶さんに、次々と市民が声をかけてくる。「市役所は常に市民にとって一番身近で、一番に頼ってもらえる存在でなければなりません」。梶さんは、そう力を込める。
きっかけは東日本大震災
家庭が貧乏だったことが全ての始まりだと言う。父親は体が悪く定職に就けず、「家は借家や間借りで転々としました」。当時授業料が月額1000円だった国立大に進み、「学生時代は、学費を引き上げようとする当時の教育臨調・国の方針に反対し、学生運動にも参加した。大学に行きたくても、お金がないから行けないというのはおかしいと思った」
大学を卒業した1975年、地元に戻り香川県職員に。その後、公平や平等を謳う日本社会党(当時)に入党、国会議員の公設秘書などを務めた。「貧乏というのはもちろん個人の責任だが、そうでない部分も大きい。少しでも住みやすい世の中にならないといけない。そんな思いがずっとありました」
95年、周囲や党に推されて香川県議選に出馬したが落選。3年後の選挙でも再び落選し、99年、3度目の挑戦で県議になった。「2回落ちたら普通は『もうご迷惑はかけません』となるが、そんな思いはなかった。だって、社会は何も変わっていないんですから」
県議から市長へ。きっかけは2011年に起きた東日本大震災だった。災害ボランティアで1週間、被災地で寝泊まりし、愕然とした。発生から数カ月が経っているにも関わらず、避難所は混乱したまま。役場は機能不全、職員も状況の詳細まではつかめていなかった。「職員自身も被災しているので仕方がない部分はある。仕事が思うようにできないのは無理もありません」
不測の事態が起きた時、地域の人がどうやって助け合うか、外部からのサポートをどう受け入れるか・・・・・・「改めて、市役所というものが極めて大事だと痛感しました」。市長になり、行政と市民が一緒に支え合う仕組みをつくる。梶さんの新たな目標が定まった瞬間だった。
市民の力を結集して
梶さんが掲げる市政の目標は「豊かで暮らしやすいまち 丸亀」
「豊かさとは単に経済的なものだけではない。歴史や文化に触れられる丸亀城こそ豊かさのシンボル。様々な豊かさを全市民が公平に受け取るべきです」
市民が「どうだ!」と我がまちを自慢し、観光客も満足して帰っていく。そんな丸亀市の姿を思い描く。「貧困は貧困、裕福は裕福で連鎖し、格差が広がる。今はそんな社会になっている。誰もが豊かに暮らせるよう、市民の力をうまく結集できる市長でありたいと思っています」
篠原 正樹
梶 正治 | かじ まさはる
- 1953年 丸亀市生まれ
1971年 高松高校 卒業
1975年 神戸大学経済学部 卒業
香川県庁 入庁
1990年 香川県庁 退職
衆議院議員・加藤繁秋氏の公設秘書
行政書士などを経て
1999年 香川県議選で初当選(4期)
2013年 丸亀市長選で初当選
2017年 再選
丸亀市
- 住所
- 丸亀市大手町二丁目3番1号
TEL.0877・23・2111 - 市制施行
- 1899年4月1日
- 総人口
- 10万9621人
(男5万3126人/女5万6495人) - 世帯数
- 4万4848世帯
(総人口、世帯数とも2018年6月1日現在) - 地図
- URL
- https://www.city.marugame.lg.jp/
- 確認日
- 2018.07.19
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