直感で決めた「水」の仕事
1985年に、当時の水資源開発公団に入った。建設中だった奈良俣ダム(群馬県)で現場を経験。関西支社を経て、試験研究所へ異動になった。研究所では、日吉ダム(京都府)と比奈知ダム(三重県)に使うコンクリートの配合を考えた。
コンクリートダムは、セメントにその場で採れた石や砂利を混ぜたコンクリートで造る。土地によって石などの特徴が違うため、セメント、石、砂利、水の配合は、ダムごとに変えなければならない。
研究所では徳山ダム(岐阜県)や滝沢ダム(埼玉県)の模型実験も行った。実物の50分の1の模型を作り、実物と同様に水が流れるよう水量を調節する。模型で洪水吐きからの放流実験などを行った。
2002年、徳山ダムの環境課長に。当時はダムの建設中で、周辺の動植物を守る取り組みを担当した。指標にしたのはクマタカ。クマタカはノウサギやリス、ヘビなど様々な動物を捕食する。クマタカが繁殖できるかどうかが、豊かな自然環境が保たれているかの目安になる。
水資源協会への出向と本社勤務を経て、11年には所長として徳山ダムに戻った。ダムの建設後も、クマタカが子育てを続けていることが確認された。「徳山ダムは土木学会の技術賞と環境賞を受賞しました。施設が完成した時や仕事が外部から評価された時は、やはり達成感や喜びを感じますね」
仕事で心掛けているのは、人に分かりやすく説明することだ。「まずは取り組みを地域の皆さんに理解していただくことから、我々の仕事は始まります。この場の『共通言語』は何だろうと考えながら、誰が聞いても分かるように話をしたいと思っています」
管理職になってからは、職場の雰囲気づくりにも注力している。「全員が何でも言い合えるようなミーティングを大切にしていますね。年齢や立場に関係なく、いろんな人から話を聞くようにしています」
早明浦ダムの機能向上へ
「吉野川本部の管轄は4つの事務所と5つのダム。技術的なことだけでなく、職員同士の風通しも良くしつつ、吉野川流域の水がうまく循環するように努めたい」(鎌田 佳子)
高橋 陽一 | たかはし よういち
- 1961年 愛知県生まれ
1980年 愛知県立中村高校 卒業
1985年 名古屋工業大学 卒業
水資源開発公団
(現 独立行政法人水資源機構)
奈良俣ダム建設所工事課 採用
1999年 浦山ダム管理所 管理課長
2001年 試験研究所水工管理研究室 主任研究員
2002年 徳山ダム建設所 環境課長
2004年 財団法人水資源協会 環境・調査部次長
2008年 環境室 自然環境課長
2011年 徳山ダム管理所長
2015年 長良川河口堰管理所長
2016年 埼玉大学で博士(工学)の学位取得
2018年 吉野川本部長
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