水のプロ集団として

水資源機構 香川用水管理所長/南保 正俊さん

Interview

2021.08.05

今年4月、香川用水管理所長として着任。香川での勤務は2回目だ。1回目は1991~94年で、94年夏の大渇水を経験した。その年は降水量が少なく深刻な水不足となり、県内各市町で夜間断水や時間給水が実施された。

南保さんは「届けたいのに届けられる水がない。供給ができないので、農業用水の水路を閉めに行ったのですが、田畑を見るのがつらかった。はかりしれない自然を相手にしながらも、水の安全・安定供給を目指すのが自分の仕事なんだと、あらためて実感しました」と振り返る。

県内各地に水を運ぶ香川用水の水路は106㌔。そのうち47㌔を水資源機構が管理する。香川用水を流れる水は、高知県の早明浦ダムで貯えられ、吉野川や導水トンネルなどを経て届いている。

千葉では東日本大震災を経験

南保さんは高校の農業土木科を卒業後、当時の水資源開発公団に入った。心に刻まれているのは、香川の渇水と東日本大震災だ。2011年は千葉用水総合管理所に勤務していた。地震の発生後に停電し、停電のため水の供給もストップ。繰り返される余震の中、いつ水道が復旧できるのか検討。2日ほど経って、順次水道を復旧することができたという。

「管理職が『どうしよう』では、みんな不安になります。起きてしまったことは変えられないので、どうにかできないか一生懸命考える。日頃のリスク予見も大事です」。水資源機構では、給水ポンプ車や施設に使うパイプの材料などを全国の拠点で分散して所有しているという。

2度目の香川では

香川用水管理所の皆さん

香川用水管理所の皆さん

2週間に1度、所内でミーティングをしており、所員には「地域の人の声を聞くことを大事にしてほしい」と話している。「香川用水管理所のある琴平町の小中学生は、元気よく挨拶してくれるので気持ちがいい。仕事においても挨拶や礼儀が基本だと思います」。平日の早朝や休日は町内をウォーキングし、「歩いていない路地はない」というほど。歩くたびに新しい発見があり、地元の人たちとの交流も生まれる。

今年10月から来年2月まで、香川用水の高瀬支線水路4㌔の更新工事を実施する。「水のプロ集団として施設を適切に更新し、水の安全・安定供給に努めたい」。まずは工事の無事完成を目指す。

「香川の皆さんは小学生の時から水について学び、ありがたみを実感されているのでは。他県ではあまり見たことがありません。地域の多くの人の期待に応えたり、喜んでもらえたりするような仕事ができれば。新鮮な水を新鮮なままお届けする。それを『当たり前のこと』として実現し続けたいですね」

鎌田 佳子

南保 正俊|なんぽ まさとし

略歴
1963年 富山県生まれ
1982年 富山県立福野高校 卒業
     水資源開発公団(現・水資源機構) 入社
     霞ヶ浦建設所
1986年 愛知用水総合事業部
1991年 香川用水管理所
1994年 豊川用水総合事業所
1999年 中部支社
2001年 愛知用水総合事業部
2005年 三重用水管理所
2008年 豊川用水総合事業部
2010年 千葉用水総合管理所 東総合管理所長
2013年 木曽川用水総合管理所 管理課長
2016年 本社 水路事業本部事業課 課長補佐
2020年 豊川用水総合事業部 新城支社長
2021年 香川用水管理所長

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