人とのつながりが人生を豊かに

特定非営利活動法人 子育てネットひまわり/代表理事 有澤 陽子さん

Interview

2021.08.05

「わいわいガヤガヤ」をコンセプトに、子育てを中心に支援する「子育てネットひまわり」。代表理事の有澤陽子さん(48)は「息子と自分のために始めた活動がこんなに大きくなるなんて」と話す。夫の転勤に伴って、知り合いのいない愛媛県で出産し、産後、埼玉県へ。転勤族の家族として地域にどう馴染むかに苦心したという。

広島生まれ、香川育ちの有澤さんは、子どもに関わる仕事がしたいと、香川県で小学校教諭として働いた。2002年に結婚し、退職。夫の仕事の都合で、1~2年ごとに引っ越していた。埼玉では、不安で泣いたことも。友人をつくるために、子育てサークルややコミュニティセンターへ積極的に出かけた。1年後にはすっかりなじんだが、再び香川へ戻ることになった。

子どもを連れて公園に行っても、子育て中の人と知り合いになる機会はそうなかった。それなら自分でつくってしまおうと始めたのが、コミュニティセンターでの「子育てサロン」。実施していた高松市の太田地区は転勤族が多く、周囲に頼れる人がおらず、つながりを求めている人もたくさんいた。子育てサロンは開始から半年でいっぱいになったという。
ひまわりはうすとことこ

ひまわりはうすとことこ

子どもと一緒にいつでも来られる場所にしたいと、コミュニティセンターの間借りではなく、常設にすることを決めた。子育てに関する講座やイベントなどでコツコツと資金を貯め、2007年に常設の「ひまわりはうすとことこ」を設置。「ゆるやかな人間関係でつながり、『わいわいガヤガヤ』言えることが大事。情報はインターネットにもあふれていますが、生身の人間同士、実際のやり取りからしか分からないことがたくさんあります」

「とことこ」は、高松市の地域子育て支援拠点事業にもなっており、3歳までの未就園児とその保護者が利用できる。現在、利用者は300組、スタッフは14人いる。以前、体調不良や家族の介護でスタッフの休職が重なり、組織としてピンチを迎えた時、残った仲間に「一人一人が1.5倍頑張れば何とかなる」と声を掛けてしまった。「大失敗だったと、後悔しています。その反省をもとに、それぞれの役割と働き方を考え直しました」。決定事項は、スタッフと議論を重ねて判断するようにしている。
コロナ禍の今、親子の何気ない日常を守りたいという有澤さん。「とことこ」以外にも、コミュニティセンターでの講座や、妊産婦のための交流会、ひとり親家庭に物資の配布なども行っている。今年は、子ども食堂のネットワークも立ち上げた。「とことこ」には、企業や個人からたくさんの子ども服や食材が集まる。

2カ月に1度実施しているのが「ダブルケアカフェ」。ダブルケアとは、育児が自分の病気や家族の介護などと重なってしまうこと。有澤さん自身も家族の体調不良と子どもの思春期が重なり、どうしていいか悩んだ経験がある。「相談機関や経験者と話をするのはとても大切。『わかるよ』の一言で救われ、前を向くことができますから。それに、どんな状況にあっても、自分の生き方を諦める必要はありません。私は人と語り合い、支えられてきました。家とも職場とも違う『居場所』が、地域の中にあることで、人生が豊かになると考えています」

鎌田 佳子

有澤 陽子|ありさわ ようこ

略歴
1973年 広島県生まれ
1992年 大手前高松高校 卒業
1996年 香川大学 卒業
小学校教諭を経て
2005年 子育てネットひまわり 発足
2009年 「特定非営利活動法人子育てネットひまわり」として法人化
2017年 介護と育児を考える「ダブルケアカフェ」開始
2020年 妊産婦支援「ひまわりマタニティ部」開始
     ひとり親家庭の支援「ひとり親パートナーズ」開始
2021年 たかまつ子ども食堂ネットワーク 設立(代表世話人・事務局)

特定非営利活動法人子育てネットひまわり

住所
香川県高松市出作町382‐1 酒井ハイツ110&108
代表電話番号
087・816・7700
地図
URL
http://himawarinet.c.ooco.jp/
確認日
2021.08.05

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