打ち寄せる波、潮の満ち引き、磯の生き物たち…蘇る瀬戸の記憶
サンポート高松の再開発事業は、1991年に港湾、1996年に土地区画の各整備事業が開始され、1998年の埋立事業の完成後に地下駐車場、駅前広場の整備事業が始まりました。駅前広場は、当初計画では「噴水のある池を整備、池の中に花時計を設置」となっていたようです。
長尾克宏さん(現・香川県土木部下水道課長)は、入庁8年目の若手技術職員としてサンポート高松推進事務所で駅前広場を担当しました。
日々の業務の中で「工業化や埋立事業で瀬戸内に住む自分たちにも海は遠くなった」「サンポート高松の基本理念は海を活かすことだ」「人々がサンポートを訪れた時、真っ先に『海』を感じられる施設ができないか」と考えるようになったそうです。
そんな時、まだ荒地であった埋立地の端にできた小さな砂浜に目が留まりました。そこにはカニや貝、海藻など海の生き物が息づく姿がありました。「そうだ、駅前広場にも『小さな海』をつくれないか」という思いが一気に湧き起こったといいます。
1998年2月、県庁の本局から駅前広場整備に対するアイディア募集があり、長尾さんは満を持して、「小さな海」づくりを提案したのです。
長尾案は、花時計と池は分け、池には海水を引込む。寄せ返す波、潮の干満を再現する。砂浜と小磯を設け海の生態系を復元する。香川の原風景、瀬戸内海への想いを想起する駅前空間を整備するというものでした。
結果は「却下」。発想は良いが、造波や水質の維持、海の生態系の再現など技術的に具体化は困難であるという理由でした。
しかし時が味方したのか、サンポート高松への海水の温度差による地域熱供給システム導入に伴い、駅前広場も含め各施設での海水利用の検討が開始されたのです。
最後のチャンス、長尾さんは海水利用に伴う技術面の実証試験を申し出たのです。日本で唯一の海水利用の修景施設をつくるという技術屋魂が燃えていました。(次号につづく)
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