どんな時でも「笑顔」。コミュニケーション、接客の基本です。

JAF 事務局長 熊野 章敬さん

Interview

2010.03.04

「日本自動車連盟」と聞いて「JAF」をすぐ連想できる人は意外と少ないかもしれない。社団法人日本自動車連盟=JAFのサービスは1963年、東京オリンピックが開かれる前の年からスタートする。車の故障や脱輪した時に助けてもらうイメージが強いが、交通安全教室や子どもたちの安全を守る防犯活動、それに親子で参加できる環境教室まで地域に根ざした活動も行っている。この結果、車を持っていなくても加入する人もいるそうだ。四国本部事務局長の熊野章敬さんは、車の性能やタイプが変化する中で人とのつながりを大事にし、一つのコミュニティーを目指したいと話す。

赴任直後は香川の交通マナーの悪さに驚きました

黄色信号で止まらない。右折するために一番近い中央分離帯の切れ目を目指して逆行してくる。「正直、こんな運転でいいのかと思いましたね」。2007年4月に関西から四国本部に赴任した熊野さんは、香川県の運転の仕方を目の当たりにした当時の驚きをこう話す。

10年2月18日現在、香川県内での交通事故による死者は8人。人口10万人当たりでみると全国でワースト10位だ。しかも、亡くなった8人のうち、実に7人が65歳以上の高齢者だ。何をするにも車がなければ不便な車社会でありながら、高齢化が進んでいる。これが香川県の現状だ。

09年上半期、車のトラブルによるJAFの救援(ロードサービス)のための出動回数は四国で3万9612件、このうち香川県は前年比94.6%と減ってはいるものの1万3000件と最も多い。また、出動場所別でみると、高速道路が香川県で670件と前年比108.9%。四国全体では2051件と去年より162件も増えている。ETCの割引効果があらわれた形だ。

そして注目すべきは出動の理由。一般道路ではバッテリー上がりや、キーの閉じ込みが多いのに対し、高速道路ではタイヤのバーストなどタイヤに関するトラブルが605件、次いで燃料切れ355件となっている。出動のうち約半分を占めている。高速道路でのタイヤトラブルと燃料切れでの立ち往生が増えている訳で、ぞっとする結果になっている。

これについて熊野さんは、「最近の車はキーレスなど便利に、かつ性能が良くなったからです」と話す。確かに車の性能は良くなった。それによるドライバーの不用心と過信。これは決して車の故障だけではなく、香川県の死亡事故の背景に繋がっているような気もする。

会員サービスから社会貢献活動、地域に密着した活動

こうした中、JAFでは「シートベルトコンビンサー体験」や子どもたちの「交通安全ドレミぐるーぷ活動」を始め、深刻な問題になっている高齢者を対象にした「セーフティトレーニング」など、四国全域で実に300回近くの交通安全活動を行っている。

また、香川県で15万4000人、四国全体で52万人という会員を対象にした様々なサービスもある。各県のレジャー・観光施設と提携した会員優待割引などが人気だが、面白いのは高松市中央卸売市場の魚市場親子見学会や地魚の料理教室なども行っていて、こちらも定員を上回る応募があるそうだ。

そして地域の人々の生活に根ざした活動もある。出動中などに事故を発見した場合に警察に通報したり、二次的事故を防ぐための安全対策、それに高速道路での落下物の回収などを行う「生活安全パトロール」だ。中でも特筆すべきは、子どもたちを、不審者から守るためのパトロールだ。これは警察などからJAFに不審者情報が入ると、近くに出動している隊員が周辺をパトロールするものだ。香川県では09年の上半期だけで164件、四国全体では894件も行われている。

「さぬき」だからできるコミュニティーを目指したい

JAFの会員は全国で1700万人に上る。しかし、この数は最近になって減りつつある。四国でも横ばい状態だ。会員を増やすことはJAFにとって最重要課題となっている。「経済状態が右肩上がりの時代は全国同一のサービスでよかった。でも今はそれだけではいけない」と熊野さんは言う。確かに、交通安全活動や生活安全パトロールは全国に53ある支部で実施されている。ただ、それらはしっかりと地に足をつけた活動でなければならないというのだ。香川県の場合について熊野さんはこう話す。

「香川県は全国都道府県の中で一番狭い県ですが、その分、人と人のつながりが緊密で絆が強いと感じます。だからこそコミュニケーションを大事にした活動をしてきたいのです」

これは、会員の獲得、会員へのサービスという枠を超えて一つのコミュニティーを作るという目標になっている。その一環として行うのが、今年5月から6月にかけて開催される「船の祭典2010」への協力や、高松市塩江町での森に親しむエコ活動なのだ。

そして、こうした活動に一番大切なのは「接客」だと熊野さんは話す。接客とは何かを聞いた。「やはり『笑顔』ですね。車の故障で動揺している人に安心してもらうのも、イベントに訪れる人を迎えるのも、そして電話の対応も全て笑顔が基本です。これは四国に昔からあるお遍路さんへの『お接待』の心と同じだと思うんですよ」と熊野さんは笑った。

熊野 章敬

一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)四国本部

住所
香川県高松市松縄町1083-16
代表電話番号
087-867-8411
設立
1963年
沿革
1963年 日本自動車連盟(JAF)創立
1970年 香川支部設置
1992年 四国本部設置
地図
URL
http://www.jaf.or.jp/
確認日
2010.03.14

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