災害や社会問題の渦中で磨いたキャリア
89年、四国に戻り高知・中村工事事務所で四万十エリアの道路・河川調査を担当。96年からの2年間は香川・国営讃岐まんのう公園第一期開園準備に奔走したが、開園直前に任期が終わり、担当者としてオープンを迎えられなかった苦笑いの思い出も残る。
その後のキャリアは、大災害や社会問題と隣り合わせでもあった。1998年、河川部事業対策官として吉野川第十堰の改築担当に。反対運動が過熱する可動堰化問題の渦中で本省・整備局の窓口を務めた。2004年からの本省河川局防災課時代は、7月の新潟・福島豪雨と福井豪雨に伴う大洪水、10月の台風23号と、頻発する災害の復旧計画に追われた。台風被害の爪痕も生々しい徳島・香川・岡山の緊急視察を終えた翌日に新潟県中越地震が発生し、あわてて東京へ戻ったという。大水害を受けて水防法改正にも係わった。
本省を離れた後も、中筋川総合開発工事事務所長として横瀬川ダム建設に携わったり、土木事業全体にかかわるマネジメントを経験したり、2011年のタイの大洪水では国際緊急援助隊・排水ポンプ車チームの初代チーム長として排水計画策定や排水活動に従事するなど、さらに経験を深めた。激動というほかないキャリアを、「苦労も血肉となって成長できたのだと今は思います」と振り返る。
経験を活かし公益事業に注力
今の肩書は副理事長兼専務理事。道の駅防災倉庫や災害時に無償補給拠点となるガソリンスタンドなどを各地に整備するかたわら、昔の言い伝えから先人の経験や教訓を学ぶ『四国防災八十八話』を通じた子どもたちへの啓発支援なども行い、実施主体である徳島大学を中心とした四国防災八十八話普及・啓発研究会が土木広報大賞2021の最優秀賞に輝いた。「災害なんて起きないと思っていても、きちんと学べばリスクが潜んでいるとわかり、助かる命がある。周囲のインフラが命を守っていることも伝えていきたい。教育は将来の防災のいしずえです」と語る。
戸塚 愛野
藤山 究 | ふじやま きわむ
- 略歴
- 1955年 愛媛県生まれ
1978年 建設省四国地方建設局(当時)入局
2006年 中筋川総合開発工事事務所 所長
2008年 国土交通省四国地方整備局
河川部 河川情報管理官
2012年 同企画部 技術調整管理官
2014年 本局 地方事業評価管理官
2015年 四国クリエイト協会 企画部長
2017年 同協会 専務理事
2020年 同協会 副理事長(兼務)
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